Tさんは6年前の東日本大震災のこともあって、この地に戦後からずっと暮らしてきた老朽化した自宅を全面的に建て替えるため、娘婿にあたる建築家の渡辺ガクさんに設計を依頼しました
中庭のある小さな家
明るいグレーの外壁は窯業系サイディング。斜線制限でセットバックさせた3階には屋上テラスがある。 |
錆を浮かせた鉄板の窓枠と米マツの格子戸が街の雰囲気に馴染んでいる。。 |
格子戸によってプライバシーを守りながら外の様子を垣間みることが出来る。 |
奥にシマトネリコが植えられた約2坪の中庭。奥のガラス戸は間口が2mもある特注の木製建具。 |
室内のガラス戸を玄関の方にスライドさせて開け放つと、中庭と一体になる。スチールのイスは建築家のオリジナルデザイン。 |
この家の設計に当って渡辺ガクさんがまず考えたのは「プライバシーを保ちながら室内は開放的にする」ということでした。そのために「家の中に隙間を設ける」というアイデアを提案しました。そこで生まれたのが建坪の4分の1を占める約2.4坪の中庭でした。
明るいグレーの外壁には四角い窓と格子戸があり、そこを開けると木が植えられた中庭が待っています。ここが光と風の通り道となって、室内に居ながら季節を感じることができるのです。
中庭に面したワンルームのLDK
小さな玄関の先はワンルームのLDKです。広さは約13帖。南側が中庭に面しているので、常に明るい光が室内に入り込み、窓際は縁側のような感じになります。
部屋の真ん中には長さ3.5mの大テーブルが横たわっています。このテーブルは食事はもとより、日常の家事をこなしたり家族やご近所さんと語らったりと、多目的に使われています。
テラスのある明るい寝室
桐のフローリングの変形五角形の主寝室。南の窓から明るい日射しが入り込む。 |
中庭の壁の開口から隣家が見える。 |
米スギ張りの約2.4帖のテラス。物干として使われている。壁は窯業系サイディング。窓の開口は1m角。手摺は細くても丈夫なスチール製。 |
テラスから中庭を見下ろす。中庭は光と風の通り道になっている。 |
2階は約5.2帖の寝室になっています。北側はご主人の仏壇を組み込んだ壁収納、南側は2つの引違いのガラス戸になっています。
黒いサッシュを開けると米スギ材のデッキを張ったテラスが現れます。正面側には1m角の正方形の窓があり、ここから街の様子を伺うことができます。
小さな部屋ですが、夏は風通しが良いので涼しく、冬は窓からの日射しで暖かいという快適な部屋になっています。
眺めの良い屋上テラス
3階の予備室はクリのフローリング。 |
RP防水の床の屋上テラス。近隣のビル越しに広い空を眺めることができる。 |
2階の北側にある洗面室とトイレ。収納を兼ねた大きな鏡が造り付けになっている。 |
バスルームは木目の壁のユニットバス。 |
3階はこの家で最も広い約12帖の予備室です。将来お孫さんが入居する予定になっています。正面を斜線制限によって道路からセットバックさせることで、部屋の隣に眺めの良い屋上テラスが生まれました。
都心に建つ小さなこの家は、「歳をとっても慣れ親しんだ街で暮らし続けたい」という元気な祖母の願いを叶えた、娘夫婦からの大きなプレゼントになりました。
[白山の家]
渡辺ガク[g-FACTORY]プロフィール
住宅の設計にあたっては「流行や一過性のデザインにとらわれず、そこに生活する人、その場所の空気感にも耳を澄まし、コミュニケーションを図りながら間取りだけではないサスティナブルな“暮らし方”を提案していきたい。」と考える中堅建築家です。g_FACTORY建築設計事務所
渡辺ガク [Watanabe Gaku]