尿潜血陽性と言われたら……
健診や人間ドックで受ける尿検査。肉眼ではわからない尿潜血などが見つかることも……
「尿潜血陽性=血尿」と同じものだと思われている方もいるかもしれませんが、「尿潜血」は、試験紙法といって、尿にリトマス紙のような検査用のテープを一定時間ひたし、潜血反応が陽性に出たものを言います。それに対し、「血尿」は、尿を一定時間遠心分離にかける「尿沈渣」を行い、底に沈んだ細胞成分を顕微鏡で見て、顕微鏡の視野である丸の中ひとつあたりに赤血球が5個以上出ている場合をいいます。これを「顕微鏡的血尿」といいます。顕微鏡的血尿に対し、肉眼で見てコーヒー色の尿や、血液の塊が見られるような真っ赤な尿は「肉眼的血尿」と言います。また、尿が赤く見えても実際は尿が濃いだけだったり、ビリルビンなど他の色素で色がついているだけだったりする場合もあります。
一般的には「血尿」とまとめて考えられがちですが、一言で血尿と言ってもこのように種類があります。いずれの場合も、検査結果で異常がわかった場合は、受診して適切な診察を受けるようにしましょう。
尿検査の仕方・採尿方法の注意点
尿検査を受ける際は、検尿コップには出始めと最後の尿は入れず、「中間尿」を取るようにします。これは常在菌や分泌物などがなるべく混入していない尿を取るためです。女性の場合は、採尿時は外陰部を清潔にし、また、月経中であれば尿検査は日をずらすなどして受けないようにする方がよいでしょう。経血も潜血反応を陽性にしてしまうため、陽性反応が出ても、本当に血尿かどうかの判断ができなくなってしまいます。
男性も特に検査時に指示がない場合は、中間尿を採取されるとよいでしょう。
尿に血が混じる原因となる臓器……多くは腎臓・膀胱
尿の通り道は、腎臓、尿管、膀胱、尿道の順番です。血尿の原因のほとんどは腎臓と膀胱が占めますが、まれに尿管や尿道が原因のこともあります。血尿・尿潜血で病院受診する場合は泌尿器科へ
同じ血尿の症状でも、年齢や性別、症状の有無によっても疑われる病気は異なります。肉眼的血尿の場合は、症状があってもなくても、医療機関、できれば泌尿器科を受診するようにしましょう。「2013年血尿診断ガイドライン」(PDF)によれば、海外の事例ですが血尿で精密検査を受けたうちの1.4~6%に尿路の悪性腫瘍が見つかったとの報告があります。
検診結果などで尿潜血、顕微鏡的血尿が見つかった場合も、一度は医療機関、できれば泌尿器科を受診してください。腎臓、膀胱に原因となる病気がないことをしっかり確認することが大切です。
血尿が出る代表的な病気と主な症状
■急性膀胱炎排尿の最後の方に痛みを感じたり、残尿感、頻尿とともに肉眼的血尿が出たりすることがあります。まれに、痛みや頻尿はそれほどないのに、血尿が派手に出るタイプの急性膀胱炎もあります。医療機関で尿検査の結果を確認してもらい、尿の中に血液(赤血球)以外に白血球(膿)があれば急性膀胱炎と判断してもよいでしょう。詳しくは「膀胱炎の原因・治し方……頻尿・痛み・血尿症状など」で解説しています。抗生物質の内服で症状が取れ、検査で尿の状況がよくなっているのを確認してもらってください。
■尿路結石症
大きく分けて腎臓に結石ができる腎臓結石症、あるいは腎臓でできた結石が尿管に落ちてくる尿管結石症の2つがあります。
右か左の背中の激しい痛みと血尿が見られることが多いです。顕微鏡的血尿、肉眼的血尿いずれもありえます。超音波検査やCT検査、レントゲン検査で腎臓、尿管の結石が確認されたら、結石の位置やサイズ、症状にあわせた治療を行います。
■膀胱がん
中年以降の喫煙者の場合、強く疑います。肉眼的血尿があっても症状がない場合や、膀胱炎かもしれないと言われて抗生物質を飲んでも症状を繰り返すような場合は、超音波検査や膀胱鏡という膀胱の中を直接観察する内視鏡検査をおすすめします。特に、女性の膀胱がんは男性よりも見つかりづらいため、疑ってきちんと検査をすることが大事です。検査そのものは10分程度で、尿の出口から内視鏡をそっと入れて膀胱の中を観察します。「尿道に内視鏡」と聞くと不安に思われるかもしれませんが、あらかじめ麻酔のゼリーを尿道から入れて検査をするので、それほどつらい検査ではありません。
また、尿細胞診といって、尿の中に悪性細胞がないかを調べる検査も行うことがあります。結果が出るまでに1週間程度かかります。
■腎盂がん・尿管がん
腎臓から膀胱に尿を運ぶ部分の粘膜からできるがんです。初期に見つけるのは難しいのですが、この病気を疑って造影剤を使ったCT検査を行うことで、見つけられることがあります。肉眼的血尿が続いているのに、膀胱に病気がない場合は、造影剤を使ったCT検査を受けることを主治医の先生と相談してみてもよいかもしれません。
■再発性・持続性血尿
尿潜血、顕微鏡的血尿で見つかる方で最も多いタイプです。喫煙しない中高年の女性で、特に症状がなく、尿蛋白が出ていない場合、第一に考えます。しかし、さきほどの膀胱がんなどを除外するため、腹部超音波検査、尿細胞診をおすすめすることがあります。また、定期的な検査をして、新たに尿蛋白が出てきたり、腎機能の低下が見られた場合はさらに検査が必要になることもあります(『エキスパートのための腎臓内科学』より)。
■特発性腎出血
若い方の肉眼的血尿の場合に疑います。泌尿器科で行う普通の検査(超音波検査、膀胱鏡、CT検査など)を行なっても血尿の原因がつかめない場合の総称です。
ほかにも血尿の原因はさまざまです。続いている場合は放置せずに泌尿器科を受診されることをおすすめします。