腎臓・膀胱・尿管・尿道の病気

尿が臭う・泡立つ・出ない…尿の異常と考えられる病気

【泌尿器科医が解説】普段と違う尿が出ると、何かの病気の初期症状ではないかと不安になる方もいるかもしれません。いつもより臭う、泡立つ、量が少ない・出ない、色が違う等の尿の変化の原因と、心配ないケースと考えられる病気、病院受診を検討する目安、自分でできる簡単な対処法について解説します。

小内 友紀子

執筆者:小内 友紀子

泌尿器科医 / 泌尿器科の病気ガイド

臭う・泡立つ・濃い・少ない……尿の異常の原因は?

トイレで悩む女性イメージ

臭いや泡の量など、いつもと違う状態の尿が出て、気になることはあるものです

尿の状態がいつもと違って気になったことはありませんか? いつもと違う臭いがする、いつもより泡が多い気がする、尿の量が少ないなど、普段と違った尿が出たときはどうすればよいのでしょうか。
 

尿の色や臭いの変化があっても、ほとんどは「異常なし」

泌尿器科の外来をしていると、尿の臭いや泡を気にして来院される患者さんが時々いらっしゃいます。クリニックなどの場合は医師自身が尿検査を行い、直接患者さんの尿を目にすることもありますが、ほとんどの施設では検査専門のスタッフである検査技師が尿検査を行います。そのため私たち医師が、検体となる尿を直接見たり臭いを確認したりすることはほぼありません。

というのも、医師は尿の臭いや泡について患者さんのように気にすることがほとんどないからです。尿の色や臭いの変化が病気の症状であることは実は少なく、患者さんから臭いや泡の量が違うという訴えがあっても、尿検査では異常がない場合が多いです。「尿」「臭い」といった項目で英語の論文検索を行っても、それに関するような報告はほとんど出てきません。
 

尿の異常で心配がないもの・病院受診を検討すべきもの

しかし尿がいつもと違うと感じた場合、特に他に体調不良があるときなどは心配になるものでしょう。病院に行くべきか迷う方もいると思います。どんな状態の尿が心配しなくてよいもので、どんな状態のときに医療機関の受診を検討すべきか、以下で具体的に解説していきます。

■尿の臭いの異常……病気のサインであることは少ない
一例として、尿の臭いが大便のような臭いになったとき、尿の中に大腸菌が増えて急性膀胱炎になっている可能性があります。尿の回数がいつもより多い、尿の最後に痛みが出るなどの症状も一緒に見られる場合は、よりその確率が高いでしょう。急性膀胱炎の場合でも、軽ければ1~2日で自然に治ることもあります。症状がつらければ医療機関の受診をご検討ください。詳しくは「膀胱炎の原因・治し方」で解説しています。

それ以外の尿の臭いは、食べたもの、飲んだもの、薬やサプリメントの影響で変化することがあります。自分の尿が正常なのか心配な方は、職場の健診の尿検査や人間ドックなどを上手に利用してください。

個人的な経験なので、医学的には最もレベルの低い情報となりますが、私が気づいた範囲での尿の臭いの変化を一例として挙げます。例えば、缶コーヒーを飲んだ時、お酒を飲んだ翌日には特有の尿の臭いがそれぞれあると感じます。ビタミン剤を飲んだ後は、臭いも色も独特になります。理由を考えれば当たり前で、尿は身体にとって不要なものを捨てるためのもの。コーヒーもお酒もビタミンも、摂ったものの中で身体が必要ないものは捨ててしまいますし、その臭いが色々と変化するのは自然なことといえるでしょう。

尿の臭いの変化は病気のサインと捉えるのではなく、身体がいらないものを捨てる尿からは、捨てるものの種類に応じて色々な臭いがするものだという考え方でよいのではないかと思います。

尿の泡立ちの変化……ほとんどが異常なし
尿にたくさんの泡立ちがあったり、細かい泡が立ったり、全く泡がなかったり……。尿の泡については、『腎・泌尿器疾患ビジュアルブック第二版』では「表面張力が大きくなるタンパク尿で出現する」とされています。

しかしこれは私の個人的な意見ですが、尿の泡は、例えばトイレに行くのを我慢していて勢いよくたくさん排尿したときなど、その成分にかかわらず一定量の泡が立つものだと思います。たしかに濃いタンパク尿などではより泡が立つのかもしれませんが、尿の泡の有無で病気の有無を診断するのはやや極端だと思います。毎年職場の健診などで尿検査を受けていて、結果がいつも異常なしという方の場合は、一時的に尿の泡に変化があったとしても気にする必要はないでしょう。

尿の量の異常……出ない場合や極端に少ない場合は医療機関へ
尿の量についてはある程度基準があります。1日の尿量をしっかり測ったことがある人は少ないと思いますが、泌尿器科医の教科書では「1日の尿量が100mL以下のことを無尿といい、膀胱に尿が運ばれていない状態(※)」とされています。

尿には、身体の余った水分や捨てるべき毒素を体外に出す役目があります。血液透析を受けているなどの特殊な状態の人を除いて、無尿の場合は必ず病院受診が必要です。同様に「1日の尿量が500mL以下の場合を乏尿」といいます。こちらも元気な普通に生活している人では起きにくい状態です。普段通りに水分をとっていて、異常な発汗や下痢・嘔吐などがないにも関わらず、極端に尿量が少なくなったときは医療機関にご相談ください。

逆に尿量が多い場合ですが、「1日に2800mL(または体重1kgあたり40mL)を超える場合を多尿」といいます。原因は多飲が最も多いです。これは文字通りたくさん水分を取っていることです。しかしまれに尿崩症や糖尿病などの病気が原因で起こることもあります。

適切な尿量はよく質問されるのですが、「1日尿量は1000~1500mLである」とこれも教科書で示されています。特にこれといって病気のない方で体調に変わりがなければ、飲んだ水分は腎臓がきちんと排出してくれるので、細かく量を気にする必要はありません。人間の身体はよくできていますね。

尿の色の変化……赤い・茶色っぽい場合は血尿の可能性も
では尿の色はどうでしょう。尿が赤い、紅茶やコーヒーのような茶色っぽい色の場合は血尿の可能性があります。こちらは「血尿・尿潜血の原因……尿に血の混じる病気」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

他に「褐色の尿がでる血色素尿(血液の病気でみられる)、ミオグロブリン尿(大ケガや激しい運動の後にみられる)」がありますが、こちらも通常の生活をしている方が普通の体調のときには起きないことです。
 

尿の異常に対して自分でできる対処法

シンプルな方法ですが、尿の変化が気になった時にはまずは水分をよく取り、忙しい方は一度しっかりと休んでみてください。翌日までに通常の状態の色・量になるようなら、それほど心配する必要はありません。


■参考文献
※ ベッドサイド泌尿器科学(改訂第4版)南江堂より
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます