3年に一度、現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2017」とは
横浜で3年に一度開催されている現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス」が8月4日(金)に開幕。6回目となる今回は「接続」と「孤立」をテーマに、相反する価値観が複雑に絡み合う世界の状況をふまえて、約40組のアーティストのさまざまな作品が展示されます。
「ヨコハマトリエンナーレ2017」の会場は? 期間は?
主会場は、横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下の3ヵ所。会期は2017年8月4日(金)~11月5日(日)。横浜の歴史や横浜らしさも意識したという同展の見どころを紹介します。※展覧会コンセプト等についてはAll About NEWS⇒横浜らしさを意識─現代美術の国際展「ヨコトリ2017」出展作家を発表(2017年4月)
※画像はすべて2017年8月3日に開催された内覧会にて撮影
誰でも見られる! 横浜美術館前の大型インスタレーション
アイ・ウェイウェイ《安全な通行》2016、《Reframe》2016……メイン会場となる横浜美術館の外壁と柱に中東からヨーロッパに渡った際に難民が使用した救命ボートと救命胴衣約800着を貼り付け、難民問題に関するメッセージを伝える大型インスタレーション。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
公共スペースに展示され、誰でも見ることができる大型インスタレーション。毎回楽しみにしている方もいらっしゃるのでは。今回は、横浜美術館前の美術の広場にはアイ・ウェイウェイ、シュシ・スライマン、アレックス・ハートリー、横浜美術館内グランドギャラリーにはジョコ・アヴィアントの大型作品が展示されています。
シュシ・スライマン《金香木の島、シリウスの星、赤道軸の上で》2017……ピラミッド型のオブジェの上には、カメの彫刻や東南アジアで聖なる木とされる金香木(きんこうぼく)と同じモクレン科である日本の深山含笑(みやまがんしょう)を交配した木が。マレーと日本文化の融合を表現。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
アレックス・ハートリー《どこでもない大使館》2017……アレックス・ハートリーによって存在が確認された土地「Nowhereisland」の移動大使館。会期中の土日祝日に開館(11:00~12:00/13:00~15:00 ※雨天中止)し、中に入ることができます。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
ジョコ・アヴィアント《善と悪の境界はひどく縮れている》2017……グランドギャラリーに登場した、約2000本の竹を独自の手法で編み上げた“巨大なしめ縄”のような作品。分断や対立を表現。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
さまざまな作家の個展が連なっているような横浜美術館
横浜美術館内には28作家・組の作品が展示されています。ひとり(ひと組)の作家が複数の作品を展示しており、個展が連なっているような展示方法となっています。今回の展覧会テーマ「島と星座とガラパゴス」に沿って、独立しながらも繋がり合っている、という空間を演出しています。ピックアップして紹介。
マップオフィス(中央)《Mare Liberum(自由の海)》2017、(手前左)《慣らされた島(日本)―愛の島》2017、(右)《慣らされた島(日本)―ファンタジーの島》2017……学生とともに島や領海、領域に関する日本の文学や映画をリサーチし、グランドギャラリーの一角に群島のように配置されたインスタレーション。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
ミスター《「ごめんなさい」展示風景》……アニメやゲームキャラクター風のタッチで描かれる少女像など、日本独自の進化を遂げた「ガラパゴス」的なオタクカルチャーや萌え絵の無垢さを、アートとして奇想に変容した作品が並びます。フィギュアやこれまで公開したことのないドローイングなども展示。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
ケイティ・パターソン《化石ネックレス》2013……世界のあらゆる場所から採取された170個の化石を、発掘後の過程で球体のビーズ玉に加工し、数珠つなぎにした作品。ルーペで見ることができます。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
アン・サマット《曾長シリーズ》2015-2016……マレーシアの伝統的な織物に由来するシリーズ。よく見ると、スプーンやネジ、パソコンの基盤などの工業製品や日用品が編み込まれています。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
畠山直哉《陸前高田市高田町 2012年6月23日 #2》2012……「人の手」が介在した風景を独自の審美眼で切り取った写真作品。東日本大震災以降、頻繁に取材を重ねる故郷・陸前高田市の風景を軸に構成されています。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
瀬尾夏美《風景から歌|海のあるまち》2017……ボランティアで東日本大震災の被災地である陸前高田市に訪れたことをきっかけに、歴史に書き残されないような当事者の記憶と、媒介者として絵と言葉で記録し、伝える作品。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
横浜赤レンガ倉庫3階の通路に展示されている広島・三原市の女性たちの語りづらい戦争体験をつづったテキスト作品もお見逃しなく。瀬尾夏美《語れなさを歩く》2017 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
風間サチコ《僕らは鼻歌で待機する》展示風景……木版画で浮世絵からマンガまでを横断する制作スタイルの作品。3ヵ月半ひきこもり、新作を完成させたとのこと。「展覧会テーマである“孤立”を実感しました」(本人談)。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
木下 晋(左から)《掌握》2011、《合掌図・懺悔》2015、《視る人》2011、《光の孤独》2009……孤独を受け入れながらも尊厳を失わない人々を題材とした、鉛筆画作品。10Hから10Bの鉛筆を駆使し、光と闇が鮮明に描かれています。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
サム・デュラント(左)《ルビコン川を渡る、大統領親書の進呈、恭しく》2015、《提督の夢》2017、(右)《アメリカ人の上陸とアメリカ側からの贈物の贈呈》2015、《日本を訪れるペリー提督と画家ヴィルヘルム・ハイネ》2015、(中央)《ある時点、遥かかなたの別時点》2017……横浜開港期の同館等の収蔵作品と歴史的事象を再解釈して描き出したイメージ群を提示した作品。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
パオラ・ピヴィ《I and I (芸術のために立ち上がらねば)》2014などCourtesy the artist and Perrotin……作家の現在の拠点である北米・アラスカで古来神聖とされてきたクマをモチーフとした作品。色鮮やかな羽で覆われています。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
ザオ・ザオ《プロジェクト・タクラマカン》2016……作家の出身地である中国の新疆ウイグル自治区にあり、たびたび民族問題の舞台となるタクラマカン砂漠に冷蔵庫を運んで配線し、冷えたビールを飲むという行為を映像にした作品。もうひとつの《スーツ》では世代間の思想や価値観の違いを浮き彫りに。ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(2017年8月3日撮影)
ヨコハマトリエンナーレ2017の主会場は、横浜赤レンガ倉庫1号館(2、3階)と横浜市開港記念会館(地下)にも。チケットは同日でも別の日でも、会期中に1回ずつ入場できます。
すでに話題沸騰の宇治野宗輝《プライウッド新地》2017や、昨年「BankART Studio NYK」で開催された個展で反響を呼んだ柳幸典の作品などは次ページで紹介します。