TOYOTA(トヨタ)/トヨタの車種情報・試乗レビュー

新型トヨタ・カムリの美点と課題とは?

トヨタの北米での稼ぎ頭である新型カムリが登場した。日本だけでなく北米でも原油安を背景に大型SUV、ピックアップトラック回帰という傾向があるようだが、デザインと走りと燃費を新技術により確立した自信作。トヨタの狙いどおりセダン復権なるだろうか。

塚田 勝弘

執筆者:塚田 勝弘

車ガイド

新型カムリがプリウスを超えた点とは?

トヨタ・カムリ

新型トヨタ・カムリのボディサイズは全長4885×全幅1840×全高1445mm。ミドルサイズセダンだが、日本では全幅はややワイドで、最小回転半径もFFなので5.7m~5.9mと大きめ


いまや「ミニバンネイティブ」、「SUVネイティブ」という世代が増えていて、物心ついた頃からミニバンやSUVに親が乗っていたというのが当たり前になっている。

しかし、現在の40代、いや50代以上にとってセダンは「帰る場所」としてのニーズはあるだろう。子育てを終えればミニバンやSUV、ステーションワゴンなどの必要性は低下。

トヨタ・カムリ

6:4分割可倒式後席により拡大可能なトランクスペース。通常時でも524Lという大容量を誇る


かといって、今更コンパクトカーや軽自動車までダウンサイジングはできない。そこでセダンやハッチバックに目を向けるという構図だ。ただ、そこに欲しいような国産セダンはなく、輸入車に目が向くという流れになっているように思える。

セダンならメルセデス・ベンツCクラス、BMW3シリーズ、アウディA4、ハッチバックならフォルクスワーゲン・ゴルフなど、都市部を中心に輸入車が根強い人気を誇るのは、ブランド力はもちろんのこと、スポーティな走りやデザインなど所有欲を満たしてくれる何かがあるからだろう。

セダン復権を目指すカムリの武器とは?

トヨタ・カムリ

新型カムリの価格帯は329万4000円~419万5800円。安全装備の「Toyota Safety Sense P」を全車に標準装備する


セダン復権を目指す新型カムリは、かなり大胆に攻めたフロントマスクをはじめ、ダイナミックなフォルムが特徴だ。好きか嫌いは人それぞれにして、目立つことは間違いなく、とくに訴求カラーの「エモーショナルレッド」のインパクトは大きい。

カムリは見た目だけでなく、技術面でもトヨタの最新ノウハウが凝縮されている。JC08モード燃費33.4km/L(~28.4km/L)に貢献する「ダイナミックフォースエンジン」こと、「A25A-FXS」型の2.5L直列4気筒エンジンは、178ps/221Nmという出力を確保しながら熱効率41%を達成。

トヨタ・カムリ

2.5Lエンジン+モーターのハイブリッドのみで、トランスミッションは電気式無段変速機を組み合わせる。駆動方式はFF


この熱効率は、プリウスの1.8Lエンジンの40%をわずか1%だが超えることで、トヨタでは最高効率となっている。

モーターは88kW(120ps)/202Nmで、プリウスのフロントモーターの53kW(72ps)/163Nmよりも強化。新型カムリのエンジンとモーターのシステム出力は155Kw(211ps)で、90kW(122ps)のシステム出力のプリウスと大きな差を付けている。

燃費ではプリウスの37.2km/L~40.8km/Lに及ばないものの、カムリの33.4km/Lで十分で、走りも楽しみたいというニーズに十分に応えてくれるスペックが与えられている。

日本では先代同様に、ハイブリッド専用モデルとなっているが、ハイブリッドシステムの「THS2」も第4世代といえる最新世代が採用されている。

速さと乗り心地の良さが印象的

トヨタ・カムリ

インパネの厚みを抑え、ボンネットフードやベルトラインなどを下げることで大きさの割に良好な視界を確保している。ナビは「G レザーパッケージ」に「T-Connect SD ナビゲーション」を標準化し、「G」はメーカーオプション


新型カムリを街中で走らせると、低速域では乗り心地の良さが印象的で、試乗した17、18インチ装着車も大きくは変わらない。セダンならではの剛性感の高さにより振動が抑制され、ハンドリングもプリウスよりもさらにしっかり感がある。試乗したコースは、大型ダンプがひっきりなしに走り、一見キレイな路面でも凹凸が目立つ地域だったが、こうした条件下でも「悪くない」という印象だ。

トヨタ・カムリ

前席のシートサイズは、北米市場をメインターゲットに据えるだけあって大きく、横方向の広がりも十分


速さも十分に確保されている。EVモードでスタートし、バッテリー残量やアクセルの踏み方次第でエンジンがかかるが、エンジンが始動しても車内は静かだし、ドライブモードをスポーツに入れずにノーマルでもほとんどパワー不足は抱かせない。

エコモードにするとかなり出力が絞られる感じがするが渋滞時などはエコモードで十分だろうし、スポーツモードにすれば加速レスポンスが高まり、パワステの操作感も手応えが増す。高速道路や山道で積極的に走りを楽しみたい際に使う程度だろうが、退屈なだけのハイブリッドではない。

優等生だが物足りなさも

トヨタ・カムリ

後席のシートサイズも大きく、足元も驚くほど広々している。身長190cmの人でもフットスペースは十分だろう。頭上も身長171cmの私には閉塞感はなく、窮屈感はほとんど抱かせなかった


一方で物足りなさも感じた。トヨタらしい乗り心地の良さ、静粛性の高さ、そこそこ速いという三拍子揃ったセダンだが、とくにハンドリングの面で、クルマを積極的に操っている楽しさが見た目の派手さの割には希薄なのだ。

もっと個性や主張があった方がよりスポーティに感じるだろうし、FR系セダンを長く乗ってきた層には少しアピール不足に映るかもしれない。

それでも先述したように、トヨタらしい長所はしっかり磨かれているし、輸入セダンと比べても、こうした乗り心地の良さや高い静粛性はアドバンテージといえるレベルにある。久しぶりにセダンに乗ってみるか、と試乗車で試してみればこうしたトヨタらしさを存分に感じられるはずだ。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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