新型カムリがプリウスを超えた点とは?
いまや「ミニバンネイティブ」、「SUVネイティブ」という世代が増えていて、物心ついた頃からミニバンやSUVに親が乗っていたというのが当たり前になっている。
しかし、現在の40代、いや50代以上にとってセダンは「帰る場所」としてのニーズはあるだろう。子育てを終えればミニバンやSUV、ステーションワゴンなどの必要性は低下。
かといって、今更コンパクトカーや軽自動車までダウンサイジングはできない。そこでセダンやハッチバックに目を向けるという構図だ。ただ、そこに欲しいような国産セダンはなく、輸入車に目が向くという流れになっているように思える。
セダンならメルセデス・ベンツCクラス、BMW3シリーズ、アウディA4、ハッチバックならフォルクスワーゲン・ゴルフなど、都市部を中心に輸入車が根強い人気を誇るのは、ブランド力はもちろんのこと、スポーティな走りやデザインなど所有欲を満たしてくれる何かがあるからだろう。
セダン復権を目指すカムリの武器とは?
セダン復権を目指す新型カムリは、かなり大胆に攻めたフロントマスクをはじめ、ダイナミックなフォルムが特徴だ。好きか嫌いは人それぞれにして、目立つことは間違いなく、とくに訴求カラーの「エモーショナルレッド」のインパクトは大きい。
カムリは見た目だけでなく、技術面でもトヨタの最新ノウハウが凝縮されている。JC08モード燃費33.4km/L(~28.4km/L)に貢献する「ダイナミックフォースエンジン」こと、「A25A-FXS」型の2.5L直列4気筒エンジンは、178ps/221Nmという出力を確保しながら熱効率41%を達成。
この熱効率は、プリウスの1.8Lエンジンの40%をわずか1%だが超えることで、トヨタでは最高効率となっている。
モーターは88kW(120ps)/202Nmで、プリウスのフロントモーターの53kW(72ps)/163Nmよりも強化。新型カムリのエンジンとモーターのシステム出力は155Kw(211ps)で、90kW(122ps)のシステム出力のプリウスと大きな差を付けている。
燃費ではプリウスの37.2km/L~40.8km/Lに及ばないものの、カムリの33.4km/Lで十分で、走りも楽しみたいというニーズに十分に応えてくれるスペックが与えられている。
日本では先代同様に、ハイブリッド専用モデルとなっているが、ハイブリッドシステムの「THS2」も第4世代といえる最新世代が採用されている。
速さと乗り心地の良さが印象的
インパネの厚みを抑え、ボンネットフードやベルトラインなどを下げることで大きさの割に良好な視界を確保している。ナビは「G レザーパッケージ」に「T-Connect SD ナビゲーション」を標準化し、「G」はメーカーオプション
新型カムリを街中で走らせると、低速域では乗り心地の良さが印象的で、試乗した17、18インチ装着車も大きくは変わらない。セダンならではの剛性感の高さにより振動が抑制され、ハンドリングもプリウスよりもさらにしっかり感がある。試乗したコースは、大型ダンプがひっきりなしに走り、一見キレイな路面でも凹凸が目立つ地域だったが、こうした条件下でも「悪くない」という印象だ。
速さも十分に確保されている。EVモードでスタートし、バッテリー残量やアクセルの踏み方次第でエンジンがかかるが、エンジンが始動しても車内は静かだし、ドライブモードをスポーツに入れずにノーマルでもほとんどパワー不足は抱かせない。
エコモードにするとかなり出力が絞られる感じがするが渋滞時などはエコモードで十分だろうし、スポーツモードにすれば加速レスポンスが高まり、パワステの操作感も手応えが増す。高速道路や山道で積極的に走りを楽しみたい際に使う程度だろうが、退屈なだけのハイブリッドではない。
優等生だが物足りなさも
一方で物足りなさも感じた。トヨタらしい乗り心地の良さ、静粛性の高さ、そこそこ速いという三拍子揃ったセダンだが、とくにハンドリングの面で、クルマを積極的に操っている楽しさが見た目の派手さの割には希薄なのだ。
もっと個性や主張があった方がよりスポーティに感じるだろうし、FR系セダンを長く乗ってきた層には少しアピール不足に映るかもしれない。
それでも先述したように、トヨタらしい長所はしっかり磨かれているし、輸入セダンと比べても、こうした乗り心地の良さや高い静粛性はアドバンテージといえるレベルにある。久しぶりにセダンに乗ってみるか、と試乗車で試してみればこうしたトヨタらしさを存分に感じられるはずだ。