人手不足問題に対応できる人材関連5社
労働市場では人手不足感が強まっています。有効求人倍率は今年4月時点で1.48倍となり、いわゆるバブル期だった1990年7月の1.46倍を超え、1974年2月以来、実に43年ぶりの水準に達しています。有効求人倍率は仕事を探す人1人あたりの求人数を指します。働きたい人にとっては選ぶ機会の増加ですが、企業サイドに立てば、人材の確保が歴史的にも難しくなっているということです。高齢化で退職する人が増える一方、新規の若い労働者が減少傾向。景気の回復傾向で仕事も増えています。
人手不足問題で注目の銘柄は?
「労働の2018年問題」とも
これまで「雇い止め」などと批判されていた有期雇用者の継続的な勤務を目指して、政府では、改正労働者派遣法、改正労働契約法などで対応しようとしています。
例えば、13年4月に施行された改正労働契約法では、有期労働契約が反復更新された場合、通算5年を超えると労働者の申し込みにより無期雇用契約に転換されるルールが導入されました。施行から5年を迎える18年以降はこの無期転換の本格的な発生が見込まれるのです。これを「労働の2018年問題」という向きもあります。企業は景気の悪化に備えるなどから、正社員の登用を抑え、契約社員を仕事量に合わせて採用する傾向があります。18年以降は、使用者にとっては本来意図していない期間労働者の長期雇用リスクが顕在化することになります。
こうした人材不足や、法改正をビジネスチャンスにしている、人材関連企業5社をご紹介します。
ライク <2462>
総合人材サービス事業、子育て支援サービス、介護関連サービスが3本柱。政府が推進する1億層活躍、育児、介護といずれも国策に沿う事業で、中期的な成長が期待されます。2015年9月に「改正労働者派遣法」に施行されました。人材派遣は、それまでは「業務ごとに3年」で、期限が来ると派遣の中断を余儀なくされましたが、改正で「人ごとに3年」になり中断がなくなりました。モバイル業界のほか、ネット通販の拡大でコールセンター、物流業界向けにも引き合いが増加しています。子育て支援事業では、保育所不足を背景に、昨年4月に企業内保育所の普及のため補助金が認可保育所並みに引き上げられ、基準も緩和されました。企業にとっては人材確保のため、企業内に保育所を開設するメリットが高まっています。
アウトソーシング <2427>
工場製造ラインへの人材派遣・請負が主力です。短期的な業績の好調に加え、中期的にも法改正や海外展開の充実など、同社のビジネスモデルの優位性が発揮される可能性が高いと思います。改正労働契約法が事業機会として期待されます。同社ではメーカーで有期雇用契約期間が満了になった社員を同社の正社員として雇用し、他のメーカーに派遣する仕組み(PEOスキーム)を展開します。これにより、雇用の安定と、派遣先の期間工ニーズをマッチさせることができます。一方、海外展開にも積極的です。前期末現在で海外子会社は58社。英で住民税の滞納者、駐車違反の違反金滞納者から債権を回収する企業、オーストラリアでは政府から運営委託された刑務所や空港に対して看守や警備員、食堂などのスタッフを派遣する企業など多岐にわたります。
UTグループ <2146>
製造業派遣・請負の大手です。工場の生産ラインを丸ごと引き受けるビジネスモデル。半導体・液晶業界が主力ですが、自動車など裾野は広がりつつあります。技術者の派遣も。正社員で登用し、育成し派遣する点に強みがあります。人手不足や改正労働者派遣法、改正労働契約法の影響を背景に、製造業向け人材派遣の引き合いが活発化しています。こうした中、同社では配属時期と人数を確約する「コミット受注」により、高単価受注と好条件求人を実現、他社のとの差別化を図っているのです。スマホ生産ライン、自動車関連のニーズが高い。また、エンジニア不足でもあることで、エンジニア派遣企業も順調に伸びています。
テクノプロ・ホールディングス <6028>
国内最大級の技術系人材サービスグループの持ち株会社です。エンジニアを正社員として採用し、幅広い領域に派遣し、また請け負う事業を展開しています。グループで約1万4000人の技術者、研究職を擁しています。派遣先は大学や研究機関のほか、機械、IT・通信、バイオ、医薬、建設など多岐にわたります。技術者不足は幅広い業種にわたっていることで、ひとり当たり単価が上昇傾向で、稼働率も高水準です。エンジニアは高度な知識を有しており企業や公的機関の専門分野の人材不足をカバーすることができます。
クイック <4318>
人材採用支援事業を中核に、関連ビジネスを幅広く手がけています。具体的にはリクルーティング事業(求人広告の企画・取り扱い・HR<人材支援>コンサル)、人材サービス事業(人材紹介、派遣)、情報出版(地域情報誌出版など)、ネット関連事業(人事・労務の情報サイト「日本の人事部」の運営)、海外事業を展開しています。各事業を有機的に結びつけることにより、求職者と企業を的確に、迅速にマッチングできるそうです。