ホンダの本気が垣間見えるCBR250RR
ここ数年、エントリーユーザーを狙った安価で扱いやすく、スポーティーなデザインのバイクが流行っている傾向にあります。カワサキのニンジャ250、ヤマハYZF-R25、スズキGSX250R、これらの三車種は二気筒エンジンを搭載したフルカウルスポーツです。お値段は50万円台と安めで、しかもこれは定価なので実勢価格はさらに安いです。これからバイクを買いたいというエントリーユーザーにはまさにピッタリです。
ホンダはすでにCBR250Rという、単気筒エンジンを搭載したフルカウルスポーツモデルをカタログにラインナップさせており、価格は50万円を切っているので、エントリー向けモデルとしては充分な車両をすでにリリースしています。
しかし、ここにきてホンダがリリースを発表したCBR250RRは、あらゆる意味で度肝を抜かれるバイクでした。
まず価格は75万6000円。ニンジャ250やYZF-R25は55万円前後ですし、教習車としても使われるホンダNC750Sは大型なのに69万120円だし、ヤマハのMT-07だって71万640円であることを考えると、かなり強気の価格設定です。
つぎに装備。CBR250RRは、このクラスで初となる電子制御スロットルとパワーモードの変更ができる機構を装備しています。
大型排気量のスポーツモデルで装備されることが多いこのふたつの機構ですが、裏を返せばハイパワー車両でこそ装備する価値がある装備、という印象がありました。
高すぎると感じさせる価格設定と、250ccのバイクには不要と思えてしまうような装備を備えたCBR250RR。試乗前は「さすがに250ccのバイクにこの価格の価値を見出すのは難しいんじゃないか?」と正直思っていましたが、果たしてほんとのところはどうなのか?
今回も、CBR250RRを都内の通勤で試乗してインプッションします。
CBR250RRの装備はクラスを超えた高級感があるか?
CBR250RRのデザインの中で特徴的なのが、前から見たときに目を引かれる二眼のLEDヘッドライトです。コンパクトでシャープな造形は、レーシーでスパルタンなイメージを彷彿させます。
ヘッドライト上のライトはポジション球となっていますが、海外モデルのCBR250RRはこの部分がウインカーとして使われています。日本国内では法令の関係でNGなのでポジションに変更されたようです。
ウインカーもLEDを採用しており、テールランプやストップランプもLEDなので、すべての灯火類でLEDを採用していることになります。
フロントフォークは倒立式を採用しており、フォークキャップ部分にはSHOWAのロゴとブルーのアルマイト処理が施されています。
スイングアームは直線形状ではなく「への字」形状のアルミ製のガルアーム形状を採用。さらに右側に配置されたマフラーを外側に張り出させないように左右非対称のスイングアームとなっています。
ブレーキはフロントにフローティングディスクブレーキを採用し、もちろんリアもディスクブレーキですが、前後ともに放熱効果の高いウェーブ形状を採用しています。
極めつけは前述した電子制御スロットルの採用と、ドライブモードの変更機構まで備わっています。
CBR250RRの細かい装備を見ていけば、鍵は質感が高く盗難防止効果もあるウェーブキーを採用しているし、メーターはシフトポジションインジケーターやラップタイムまで記録できる高機能タイプ。
これらの装備は大型排気量のスポーツモデルに採用されることは珍しくありませんが、250ccクラスに採用されるのは異例中の異例。400ccクラスはもちろんですが、一部の大型車両よりも販売価格が高いだけのことはあります。
最後にCBR250RRの足つき性ですが、カタログのシート高の数値は790mm。スポーツモデルとしては低めの数値ですが、実際に跨ってみると数値以上に低く感じます。シートに跨って足をおろした時にステップなどに当たらないのでまっすぐにおろすことができるのが低く感じる要因です。
装備だけ見れば大型スポーツバイク顔負けのCBR250RR。その走りも、大型バイクに負けない魅力はあるのでしょうか?
全てが高次元の走り、黙っていれば250ccとは思えない
エンジンオンしてみると二気筒エンジンらしいサウンドが鳴り響きます。個人的に、2気筒の250ccクラスの排気音はバタバタというあまり格好良くはない音というイメージがありますが、CBR250RRもアイドリングはほかの二気筒モデルと変わらない印象です。
エンジンをかけるとドライブモードはスポーツモードになっています。さらにスパルタンなスポーツ+モードと、穏やかなコンフォートモードには左ハンドルスイッチの後ろ側のモードスイッチで切り替えることができます。
私が抱いていたひとつ目の懸念である、250ccの限られたパワーでパワーモードは必要ないのではないか? という点をまずは確認してみます。
早速アクセルを開け始めると、かなり高回転型のエンジンにも関わらず走り出しのトルク不足をあまり感じません。4000rpmぐらいからパワーバンドに入りはじめますが、加速感に盛り上がりがあり250ccクラスとは思えないぐらいスパルタンに加速します。
そして9000rpmぐらいから、さらにシャープに加速し始めました。このあたりの回転数は高速道路でもあまり使えないと思いますが、サーキットだったら最高に気持ちがよい加速を体感することができるでしょう。
スポーツモードでも250ccクラスとは思えないパワー感を感じることができますが、スポーツ+モードにすると回転の上がりがさらに早くなり加速性能がアップします。
CBR250RRの魅力のひとつはエンジン音です。アイドリングの音と違い、加速時のエンジンオンが「もっと回せ!」といわんばかりに凶暴で官能的な音がします。公道ではスピードを出し過ぎないように注意してください。
コンフォートモードは、ほかのふたつのモードと比べてとても加速が穏やか。ほかのモードだと感じる4000rpm付近や9000rpm付近から感じることができる加速の谷をあまり感じません。
のんびりと走りたい場合にはコンフォートモードも良いかもしれませんが、スポーツモードでも街中で扱いにくい印象はありませんでした。
まさか250ccバイクのモードチェンジだけでここまで走りが激変するとは思ってもいませんでした。私と同じ懸念を持つ人は多いと思いますが、乗ればすぐに払拭されるでしょう。
これだけ素晴らしい加速をするスポーツバイクですが、前後サスペンションは硬すぎず、沈んだ後の減衰がよく効いているので、しっかりと路面にタイヤがグリップしている印象です。
リアのサスペンションは出荷時にはあらかじめスプリングを縮めて硬めにセッティングする「プリロード」がかかっています。そのままでも街中、山道どちらも快適に走れてしまいますが、街中に限って言えばもう少し柔らかくセッティングするとさらに走りやすいでしょう。
足回りで言えばサスペンションも素晴らしいですが、タイヤも前後ともにラジアルタイヤを採用しています。すぐれた減衰力とグリップ力の高いタイヤの組み合わせはコーナリング時も不安がありません。
ハンドリングは多少シャープな印象があります。ただ2、3個コーナーを回れば慣れてしまうレベルです。
ブレーキ性能は感動するというほどではありませんが、CBR250RRの車両重量は250ccスポーツモデルでは最軽量な165kgということもあり、とてもコントロールしやすく、今回は雨天時も走行しましたが変わらない制動能力を発揮しました。
また私の通勤ルートには東京ゲートブリッジという海の上にかかっている橋を走行するシチュエーションがあり、横風に煽られるところなのですが、直進安定性にも極めてすぐれており、これなら高速道路のツーリングでも快適にこなせるでしょう。
CBR250RRはスペック高め 価格以上の感動は味わえる
ここ数年、軽量でパワフルな大型バイクが次々にリリースされました。ヤマハのMT-09やスズキのGSX-S1000シリーズは車両重量が軽くとてもパワフル。しかもエンジンはスパルタンなセッティングなので、アクセルを開ける楽しみがありました。
ですが、ホンダのバイクはハイパワー車両でも比較的セッティングで加速はフラットになっている印象があります。
それに対してCBR250RRは、アクセルを開けた瞬間に怒涛のように加速するパワフルなバイクです。
個人的には「スパルタンなセッティングが良いならいつでもできるぜ?」というホンダのメッセージのような気がします。
とても250ccとは思えない走行性能を楽しむことができるCBR250RRですが、個人的にはバーハンドルを採用したバリエーションモデルが登場してくることを期待しています。
乗ればクラスを超えた所有感と走行性能を感じさせてくれるCBR250RR。
1990年に登場した初代CBR250RRは最高出力45PSをなんと15000rpmで出力する4気筒エンジンを搭載し、車重も157kgと超軽量でした。
このイメージが強い私より少し年上の先輩方は、CBR250RRは四発じゃないと駄目だろ! とおっしゃる方も多いのですが、そういう方にこそぜひとも乗ってほしい1台です。
何故って? 間違いなく現代の技術に感動するからです。
エンジン音はやっぱり4気筒の方が格好いいですけどね。
CBR250RR関連リンク
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