お金が寄ってくる人の考え方と行動パターン
なぜかお金が寄ってくる人、逆にいつまでたっても貯まらない人……。その違いはお金に対する心の持ち方や向き合い方が大きく影響しているから!お金に対する考え方や、時間の使い方、コミュニケーションから日常の習慣まで、お金持ちに共通するパターンとは何か?そこから私たちが学べることは?ビジネス心理研究家の神岡真司さんが解説します!
仕事上、これまで経営者の方など、お金持ちの方たちとお付き合いする機会が沢山ありました。その中で、お金持ちになる人はどこが違うのか?
私なりに気が付いたことがあります。このシリーズでは、心理学的な視点を中心に、お金持ちの特徴を、1.考え方と行動パターン、2.時間の使い方、3.コミュニケーション術、4.情報収集術、5.習慣力の5つについて順を追ってお話ししていきたいと思います。
第1回目はお金持ちの考え方と行動パターンについて。お金をたくさん稼ぎ、増やすことができるかどうかは、小手先のノウハウやテクニックではなく、根本的な生き方や考え方、行動の違いが大きい。これまでのお金持ちの方との付き合いの中で気がついた彼らの特徴を、以下で紹介しましょう。
「自分はできる」。根拠のない思い込みがパワーの源!?
お金持ちの思考の特徴は何か? それはなんと言っても「自己効力感」が強いこと。「自己効力感」とはカナダ人の心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された概念です。自己に対する信頼感や有能感のことで、簡単に言うと「自分はきっとうまくできる」とか「自分には能力がある」というセルフイメージを持っているということです。たとえば、上司から結構難しい仕事を頼まれた場合、ビジネスパーソンの反応は大きく二つに分かれます。一つは「大丈夫かな? 俺にはできないかもしれない」と弱気になるタイプ。もう一つは「大変そうだけど、きっとできる」と考えるタイプ。
皆さんはどちらでしょう?
自己効力感の高い人は「大変だな」とは思っても、心のどこかで、それをやり遂げてしまう自分をイメージしています。お金持ちの人のほとんどは、何か大きな仕事や困難が立ちはだかったとき、それに臆するのではなく「自分ならきっとうまく乗り切ることができる」と、心のどこかで思っているのです。
ただし、自分や周りが見えていないナルシストとは違います。客観性が乏しく思い込んでいるだけの人は、準備不足や油断などで失敗してしまいますが、「自己効力感」の高い人は自信と共に、客観的な視点も持ち合わせています。ですから、しっかりと準備をし、計画を立て、課題に向かうことができる。それゆえ成功する確率が高いのです。その成功体験がさらに自己効力感を高めるという正のスパイラルになるのです。
彼らは自信があり、余裕があります。その様子から、周りも「きっと○○さんならうまくやるに違いない」とか、「○○さんなら大丈夫」と感じます。頼りになる存在だと目され、自然に人が寄ってくる。そんな外部の評価が自己効力感をさらに補強することになるのです。
日常生活の中で「自己効力感」を高める方法とは?
自分には自信なんてない?先ほどのアルバート・バンデューラによれば、自己効力感は日常生活の中で高めることができると言います。具体的には次の5つの方法があると言います。
(1) 達成体験……過去にうまくいった達成体験を思い出すこと
(2) 代理体験……他の人の成功体験や成功談を聞いて学ぶこと
(3) 言語的説得……自分や他人の成功体験の理由や過程を論理的に検証し認識すること
(4) 生理的情緒的高揚……成功者の伝記やエピソードに感動し感化されること
(5) 想像体験……自分の想像の中で成功するイメージ、ストーリーを描くこと
面白いのは(2) や(4)のように、他人の体験も自分の体験と同じように自信や自己効力感につながるということ。達成体験は人によって差があると思いますが、代理体験や生理的情緒的高揚は誰でも同じように体感することができるはずです。他人の成功談を聞き、素直な気持ちで学ぶこと。その話を聞きながら、まるで我がことのように感動したり興奮したりするピュアさを持つことが、成功、ひいてはお金持ちへの道となるわけです。
実際、私の知り合いのお金持ちの多くは、他人の成功談が大好きです。その話の中に自分の成功に関するヒントがたくさんある。そのことを良く知っているからでしょう。お金持ちになれない人ほど、他人の成功をやっかみ、素直な気持ちでその話を聞くことができません。それによってますます成功から遠のいていくのです。
「内向的」な人ほどお金持ちになりやすい!?
人には「内向型」と「外向型」の2つのタイプがあります。お金持ちに多いのはどちらのタイプでしょうか? 意外ですが、お金持ちの多くは「内向型」なのです。2つのタイプに分けたのはスイスの心理学者カール・グスタフ・ユングが最初です。「内向型」と言うと内気で、「外向型」は陽気な人だと一般に思われているのですが、本来のユングの分類は少し違っています。「外向型」とは人生の価値基準を自分の外の世界、社会的な基準に合わせる人のこと。「内向型」とは自分の内面の価値基準を優先する人のこと。外向型の人は多くの人と一緒に活動することでエネルギーを得るのに対し、内向型は一人で内面の世界と向き合うことでエネルギーを得ることが多いのです。
モチベーション理論によると、人のモチベーションには報酬や賞罰など、外からの価値基準によって喚起する「外発的動機」と、やりがいや楽しさ、面白さや興味などと言った自分の内面からくる「内発的動機」の2つがあるとされています。
さまざまな実験から、「外発的動機」よりも「内発的動機」のほうがより継続的に目標達成に向かって力を集中することができ、成果を上げやすいということがわかっています。つまり自分の内面の基準に従う「内向型」の人が成功しやすいのです。
お金持ちになれる人の仕事・会社の選び方
お金持ちの人はことさらにお金を儲けようとか、大金持ちになりたいから事業を始めたのではありません。その仕事が好きで夢中でやっているうちに結果としてお金が付いてきたと言う人が圧倒的に多いのです。実際、お金持ちになった人に「会社選び」や「転職基準」について聞いてみたことがあります。すると多くの人の答えから次の3つの共通点が浮かび上がりました。
(1)出世のために働くのではなく、自分の好きなことを優先している
(2)給与が多少少なくても、自分の采配で動ける自由な会社を選んで就職している
(3)サービス残業を強いるような労働条件の悪い企業からはすぐに離職する
お金持ちの多くは自分の心に正直に、自由に楽しく行動できる環境を選んでいるのです。
逆説のようですが、お金持ちになりたいのであれば、お金のことを考えることはやめましょう。それよりも、自分が何をしたいのか? 何が好きなのか? 何をやっているときが一番輝いているのか? 自分に今一度問い直してみてください。お金持ちの人たちを見ていると、見事なほどに自分がやっている仕事が大好きで、天職だと考えています。つらそうな顔をして仕事をしている人で、お金に恵まれているという人はまずいないのです。
教えてくれたのは……
神岡真司さん
1954年4月8日生。ビジネス心理研究家。日本心理パワー研究所主宰。最新の心理学とビジネススキル向上理論に定評がある。法人対象でのモチベーショントレーニング、組織活性化コンサルティング、心のパワーアップセミナ ーなどで活躍中。著書に『お金が集まる心理学』『コワいほどお金が集まる心理学』(以上、青春出版社)、『相手にNOといわせない「空気」のつくり方』(宝島社)、『効きすぎて中毒になる 最強の心理学』(すばる舎)、『ヤバい心理学』(文芸社)、『頭のいい人が使うモノの言い方・話し方』(日文新書)など多数。 ★第2回『お金持ちは時間を普通の人の2倍、3倍にして使う』に続きます
取材・文/ビルドゥングス