アドバイス1 確実に教育資金を用意することが最優先
ご相談内容の主旨は、ビギナーが貯蓄から投資に資金をシフトした場合のアドバイス、ということになるかと思います。最初に結論を申し上げますと、現時点での優先順位は、投資より貯蓄となります。リスクを取らず、確実に教育資金を確保することが大切だからです。
お子さん2人とも、それぞれ学資保険に加入されています。長男の方は、22歳満期で、満期金額は途中の祝金との合算で260万円。次男の方は、18歳満期で満期金額がやはり、祝金込みで60万円。しかし、すでに受け取り済みの祝金が計65万円ありますから、今後受けとれる満期金は計255万円ということになります。
一方、かかる教育費ですが、私立文系であれば大学4年間の学費は平均390万円、理系なら520万円。ともに理系なら、学資保険だけでは概ね800万円ほど不足になります。これを貯蓄から捻出するとなると、今ある貯蓄が110万円ですが、これは金額的にも「もしものお金」として手元に置きたいところ。したがって、実質、ゼロから800万円を貯めていくことになるわけです。
貯める期間ですが、できれば次男の方が高校卒業する、今後6年間で準備したいところ。しかし、ギリギリまで延ばして9年後(次男の方が大学4年になるまで)とします。必要な貯蓄ペースは年間90万円。現在、月2万5000円、ボーナスからはゼロですから、年間60万円不足しています。また、2人とも私立文系に進学したとしても、年間30万円が不足する計算になります。
この不足分を家計の見直しでどう捻出するか。ここが、igigさんの家計にとって最優先にクリアすべき問題です。
アドバイス2 保障の基本は「必要にして最小限」
家計の見直しでまず着手すべきは保険となります。残す保険から言いますと、igigさん加入の【1】と【3】、それとお子さんが加入する学資保険【7】と【8】。あと、【2】は保障がないと不安であれば、継続されてもいいでしょう。そして、現状を考えれば、残りはすべて不要だと考えます。これで月額1万円ほど、保険料コストが下がります。
なぜ不要かと言えば、奥様加入の【4】は、すでに【1】で必要最小限の医療保障が確保されていることが、その理由です。確かに、入院給付は日額5000円より1万円、1万円より2万円の方が安心でしょう。しかし、安心を求めるほど、保険料は高額になります。しかも、いくらコストを費やしても、万能な保険はありません。保険料をできるだけ抑え、その分を貯蓄に回す。そして、医療費は貯蓄から捻出する。そう考える方が合理的です。
ましてや、医療費はいつどれだけ発生するかは誰にもわかりませんが、教育費はかかる時期も金額もほぼわかっています。優先すべきは貯蓄だということです。したがって、加入を検討されているという【6】も不要ということになります。
【5】については、自営業者であれば加入してもいいかもしれません。しかし、igigさんは会社員です。勤務先の規約はわかりませんが、病気やケガで休んでも給与が出るケースは当然ありますし、仮に支給がなくとも健康保険から傷病手当金が出ます。会社員はそれだけ守られているのです。
アドバイス3 夫からの支給額のアップがより現実的
保険の見直し以外にどう家計支出を減らすことができるか。現時点では、ご主人からの生活費10万円をさらに上積みすることが、もっとも現実的で即効性があります。具体的には、少なくとも2万円は上積みしたいところです。
しかし、現在の10万円が精一杯であれば、無理な話ということになります。したがって、実際にご主人の生活費にはいくらが必要なのか。家賃や食費、水道光熱費を、igigさん自身が細かく見ていくべき。収入についても、同様に確認されていいと思います。
もちろん、ご主人にも言い分があるでしょう。しかし、教育資金づくりや老後資金づくりは、家族が協力し合わなければ、思うようには進みません。言い換えれば、お子さんも含めた家族それぞれが、我慢すべきところは我慢しなくてはならないということ。一人が頑張っても空回りするだけです。
igigさんにとっては、ご主人との話し合いはストレスのたまる話でしょう。しかし、この部分(10万円の生活費が妥当かどうか)を不明瞭のままにしておくことは、家族としてやはりおかしな話だと、私は思います。
保険の見直しで月1万円、ご主人の生活費の上積み(生活費として使うのではなく教育費の積立)分の2万円とすると、計3万円。これを貯蓄に回せば、先の試算でも述べましたが、私立文系の大学費用であれば何とか捻出できることになります。自動車ローンの完済後は貯蓄ペースもアップできますので、さらに教育資金をアップさせることが可能となります。
アドバイス4 老後資金づくりはその一部を投資で
教育資金の目処が立てば、老後資金づくりということになります。igigさんにとってメリットとなるのは、下のお子さんが大学を卒業しても、まだ定年まで12年あるということ。老後資金を貯める期間がある程度確保できます。
お子さんが手から離れれば、教育費や学資保険の積立、さらには食費費や水道光熱費も下がります。月10万~12万円程度の貯蓄も無理ではありません。とすれば、12年間で1500万~1700万円。退職金の支給額によっては2000万円超の老後資金が用意できるかもしれません。
そして、この老後資金づくりの積立に関しては、部分的に投資をしてもいいと思います。「初心者でも安心して買える銘柄やお勧め銘柄」はアドバイスできませんが、個人型(iDeCo)の確定拠出年金はひとつの選択肢となります。掛け金が全額、所得控除になりますので、所得税と住民税が確実に節税になるからです。
また、始めるには、専用口座を金融機関を開設する必要がありますが、それぞれにかかるコスト(口座管理手数料や投資信託の信託報酬など)が異なります。よりコストが抑えられる金融機関や運用商品を選ぶことが大切です。
しかし、十分な老後資金を用意するには、ご主人からの生活費を継続して受け取り、確実に貯蓄(あるいは一部を投資)していくことが大前提です。逆に、それができなければ、老後資金は一気に危うくなるでしょう。それでなくとも、定年後は家賃補助もなくなり、住宅コストが今よりはるかに重い負担になります。
そう考えれば、やはり「夫婦の財布が別」という部分が、老後資金づくりのネックになりかねません。時間をかけても解消することが望ましいのです。
それと、ご主人はまだ30代。ぜひ、正社員を目指してほしいと思います。正社員となれば厚生年金加入により年金がアップし、退職金も期待できます。老後資金づくりが大きく前進するわけです。そして、夫婦ともに65歳まで働くことも重要な老後対策ということも、認識しておいてください。
相談者「igig」さんより寄せられた感想
適切なアドバイス、ありがとうございました。実は入りすぎかな~と思っていた保険や、少ない資金でも増やしたいという気持ちがあった投資の件も、少ないかも知れないけれど、足りない教育資金は奨学金でいいのではないかという夫に「貯めないといけないと思う」と言ってたけれども説得しきれていなかったので、お答えいただいて本当に助かりました。2つに分かれているお財布の件はこの相談結果を夫に見せて話していこうと思います。やはり貯めたほうがいいと思っていましたので、いい機会になると思います。投資はまだ早い、というのは全く気づかず、本当に相談してよかったです。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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