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快適性と機能性が進化!? イマドキのLDK事情

家族の団らんの場であるLDK。近年、快適性や機能性の面で大変進化しています。この記事では、どのような工夫が行われているか、そしてその理由について解説します。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

住まいの中心といえばLDK(リビング・ダイニング・キッチン)です。家族が集まる団らんの場となるため、従来から住まいづくりではそのあり方が重視されてきました。ただ、近年は従来に比べ、快適性、機能性の向上について様々な工夫が盛り込まれるようになりました。そこで、今回の記事ではLDK、中でもリビングを主とした近年のトレンドについて快適性と機能性の側面から紹介しながら、さらにはなぜより重要性が高まっているかについて解説します。

リビングの快適性を高める工夫とは?

先日、大和ハウスによる「天井高ひろがり体感ブース」の発表会を取材してきました。これは一般的な住宅の天井高2.4mと、同社の鉄骨系住宅「ジーヴォシグマ」の最大天井高2.8m(2017年4月から対応)を、同じ広さの空間で比較検討できるというものでした。

大和ハウス

大和ハウスの東京ビル(東京都千代田区)1階に設けられた「天井高ひろがり体感ブース」のオープニングイベントの様子(クリックすると拡大します)

天井高が40cmも高いと、大変開放感が感じられました。窓が大きくなることで室内の明るさが確実に増していたからです。開放感の高さは室内の快適性を左右する要素の一つ。だから大和ハウスはリビングの天井高を高めアピールしていたわけです。

もっとも、母親役の女性と子どものタレントによる、「天井高の高い部屋でやりたいこと」(高い高いができる、ボール遊びができる)という実演は、もっと他にやりようがあったのではないかと思われましたが…。

ちなみに、このようなことができるのはジーヴォシグマの高い断熱性能ゆえ。一般的な住宅ではあまりお勧めしません。空間が大きくなり開口部(窓など)の面積が広がると、断熱効果が薄れやすくなるからです。

一般的に天井高を高くする手法として吹き抜けもありますが、その場合も同様です。いずれにせよ、快適性・開放感をLDKにもたらすためには、高い断熱性の確保という前提が必要となります。

さて、開口部自体を広げることもLDKの快適性を高めるために大切な要素です。最近は構造躯体の強度とサッシの断熱性の高まりにより、壁が少ない開口部のある空間とすることもトレンドになっています。例えば、フルオープンサッシや、二方向に開けたサッシなどによるものです。
テラス

リビングとテラスにより外部とのつながりを生み、より快適性を高めている事例。テラスは第二のリビングのような活用をできるようにしている(クリックすると拡大します)

こうすることで、庭やテラス、ベランダ(2階リビングの場合)など外部空間とのつながりができ、LDKからの視線が広がることで開放感が生まれます。気候や天気が良い日には、窓を開け放ってテラスやベランダを第二のリビングのように活用できるわけです。

省エネ&経済的な生活にも貢献する快適なLDK

また、庭の植樹やベランダの緑化を組み合わせれば、より快適性が高まります。植物を身近に感じられる環境は、私たちに癒やしを提供してくれるからです。そういえば、最近は屋上緑化もよく行われるようになりました。

要は、庭のスペースを取りづらいケース、2階にリビングを配置せざるを得ない都市型住宅や、3階建て以上の建物(二世帯住宅や賃貸併用住宅)でも、緑を感じられるようにする設計で快適性を高められるわけです。

ところで、住まいと暮らしに関する重要なポイントの一つに省エネがあります。皆さんは快適で居心地の良いLDKはこの点についても貢献する、ということをご存じでしょうか。旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)くらしノベーション研究所による「家族の場を重ねる暮らしとエネルギー消費の関係」に関する調査報告書にそのことが表れています。
5階建て

ある都市型住宅(5階建て)のモデルハウス最上階に設けられたLDKの事例。光がさんさんと降り注ぎ、これなら天気の良い昼間は照明なしで過ごせそうだ(クリックすると拡大します)

それによると、リビング・ダイニングに集まって過ごす「集中在宅」型の家族は、各部屋に家族が散在する家族に比べ、エネルギー消費量が少ないという結果が出ています。快適性が高く家族が集まるLDKのある住まいは、より省エネであり経済性も高いということです。

また、開口部が大きくなることでLDKの中はより明るくなりますから照明にかかるエネルギーも削減できますし、庭などの植樹はLDKに日照を適度に遮り、風をLDKに導くなどの効果が期待されます。それらももちろん省エネに貢献します。

家族団らんの場としての集いやすさ以外にも、このような省エネという背景もあり、LDKの快適性の追求が進んだという側面があるのです。では、次にLDKの機能性を高める工夫と、その背景について解説します。それらには私たちのライフスタイルの変化が大きく関わっているように思われます。

LDKの機能性向上に影響した共働き家族の増加

特に共働きによる暮らしが一般化したことが指摘できそうです。厚生労働省の「厚生労働白書」によると、共働き世帯は2015年に1114万戸となり、専業主婦の世帯687万戸を大きく上回っています。中でも共働きは子育て世帯を中心に増えていますが、そうなると暮らしにおける主婦の負担増につながります。

仕事を持ちながら家事と子育てもこなさなければならなく、それぞれの負担も増えるからです。ですから住まい、中でもLDKは共働きと子育ての負担を軽減する機能が、以前と比べより強く求められるようになりました。

例えば、住まいのキーワードとして「主婦の使い勝手の良さ」「子育てがしやすい」「動線が短い」「収納に優れモノが散らかりにくい」などといった要素がありますが、それらは現在のLDKの提案に強く反映されています。以下で具体的に見ていきましょう。

リビング階段

リビングに階段を設けたLDKのゾーニング事例。奥にはタタミスペースも見られるが、ここは子どもの居場所など多様な活用ができる(クリックすると拡大します)

最初は「リビング階段」というゾーニング。これは玄関→LDK→階段→子ども部屋という動線になります。子どもが自室に至るまでに必ずLDKを経由することから、親など家族と顔を合わせる機会が増え、コミュニケーションがしやすいという利点が生まれます。

比較対象となるのは、かつて主流だった玄関→階段→子ども部屋という動線。これにより家族コミュニケーションを損なわれ、子どもの引きこもり増加などの社会問題の原因になったともいわれています。階段をリビングに設けるプランニングにすることは、その解決策という側面があるのです。

以前と比べカウンターキッチンの採用も顕著に増えてきました。これは、キッチン越しにリビング・ダイニングが見渡せるというメリットがあります。幼い子どもがいる世帯であれば、料理をしながらでもリビングで遊ぶ子どもの様子をうかがい知れるため、親にとっては安心です。

よりコミュニケーションや教育を重視する方なら、ダイニングテーブルのほかに、子ども用のテーブルを設けるプランも提案されています。ここでは親に宿題の分からないところをすぐに聞けますので、子どもが学習の習慣を身につけやすくなると言われています。

LDKに隣接してタタミスペースを設けたプランも増えています。このスペースは、床がタタミであることから転倒してもケガをしにくいことから、幼い子どもにとって格好の居場所になります。もちろん、親の目も届きやすいから安心です。

家事のほぼ全てを行えるLDKのゾーニング

次は共働き世帯の負担を軽減する動線の工夫について。これはキッチン→脱衣所→浴室がコンパクトなプランがそれにあたります。これに、玄関と収納を含めた回遊性があれば、共働き世帯にとってはよりベターです。キッチンでの食事の用意などに加え、浴室の掃除や衣類の洗濯などの動作が短い動線となり、家事時間の短縮効果が高くなるからです。

また、脱衣所に洗濯機、衣類をたたむテーブル、室内干しスペースがあるケースであれば、洗濯→干す→たたむ→収納という行為が1ヵ所ですむことから、家事時間の短縮をより期待できます。このようにすると、LDKだけで家事のほとんどをこなせそうですね。
収納

充実した収納を設けたLDKの事例。キッチン回りはもちろん、奥の浴室に続く動線に洗濯スペースなどが設けられ、家事動線を短くするゾーニングの工夫も見られる(クリックすると拡大します)


ところで、収納はどのような世代にとっても住まいの悩みとして上位にランクする項目であり、もちろん子育て世代にとっても同様です。特にLDKは家族が集まる場所だけに散らかりやすいため、収納の充実は暮らしの負担を軽減する大きな効果が見込まれます。

このため、収納についてもLDKにおける家族の動線に配慮を行うことが重視されるようになりました。LDKに使いやすい収納があることで、家族全員に片付ける習慣が身につきやすくなり、共働きの主婦の家事にかかる時間の短縮が効果が期待できるためです。

このほか、近年はシステムキッチンの背面に収納を設けた商品が発売されるなど、多種多様なアイテムが見られるようになっています。また、前述したタタミスペースは、急な来客の際にLDKの散らかりものを応急的に隠すことができる場所になります。

今回ご紹介したようなLDKの工夫は、住宅展示場のモデルハウスだけでなく、ハウスメーカーの分譲住宅などで見られます。数多く訪れてみて住まいづくりの参考にしてみてはいかがでしょうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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