マンションのモデルルームでは、最新機器の活用も
新築マンションの供給戸数は減っていますが、相変わらず大規模マンションの供給は活発です。気候が安定しているGWの大型連休や連休が続く秋口、年明けなどは、数多くのモデルルームが新規にオープンします。特に大規模マンションのモデルルームは、工夫を凝らしているものが多く、最近では最新機器を活用した演出をする事例も見られるようになりました。例えば、3D対応のゴーグルを覗いて仮想の映像を見る「VR」を活用するなどです。
「パークタワー晴海」の360°イマジネーションシアター(写真提供:三井不動産)
最新機器を使った新しい演出には目が行きがちですが、良いマンションを見極めるためには、本質を見抜く見方をする必要があります。どうしたらいいか、考えてみましょう。
モデルルームでは、マンションの一番のウリを読み解く
特に大規模マンションでは、広範囲から数多くの見学客を集めるために、興味をひいたり、憧れを持たせたりと需要喚起をする必要があります。モデルルームは、角住戸など条件の良い住戸プランも取り入れて、魅力的に見えるように設計変更をしたり、オプション仕様にしたりということが多く見られます。したがって、見学するモデルルームが実際に購入する間取りと違ったり、標準仕様とは違ったりするケースが一般的なので、実際にその空間に住めると勘違してはいけません。
「モデルルームは物件のコンセプトを最大限に表している」のが鉄則です。
見学した物件の一番の「ウリ」はどこか、を読み取るようにしましょう。
例えば、パークタワー晴海では4タイプのモデルルームが用意されています。海を意識した演出や緑を意識した演出が目立ちました。その理由は、次の2点を強調したいからです。
・東京湾の海に面した晴海という場所のタワーであること
・中央区のタワーマンションの中でも、敷地が広くて植栽の緑が豊富なこと
「パークタワー晴海」のモデルルーム78Asタイプは、海と開けた眺望を伝える作りになっている。
「パークタワー晴海」のモデルルーム67Anタイプは、アウトドア総合メーカーの「スノーピーク」が提案するオプションセットで装飾されている。
広い敷地のランドスケープは、コンセプトデザインを依頼したオリエンタルランドが描く「バックグラウンドストーリー」に基づいて設計されています。このストーリー性を重視して、モデルルーム全体の設えからシアターの映像内容までが作りこまれています。「コンセプトをどこまで徹底しているか」も重要なポイントでしょう。
標準仕様と実際の広さをきちんと把握する
次に、住戸のプランですが、標準仕様はどこまでかをモデルルームでしっかり確認する必要があります。フローリングや壁紙などは面積も大きい部分なので、部屋の印象が大きく変わります。キッチンや浴室などの水まわりも、使い勝手に影響するので、標準仕様や無償の設備はどこまでかを把握しておきましょう。70Esタイプのキッチンと78Asタイプの浴室が標準仕様となっている。
居室の広さについても、希望する住戸の間取りとモデルルームをよく見比べて、天井の高さや窓の位置と大きさなども頭に入れて、広さや解放感をイメージするようにしましょう。
販売スタッフは、誤解のないように丁寧に説明してくれるはずですから、しつこいくらいに確認するのがお勧めです。
周辺の建物との位置関係やマンション内の位置を模型で確認する
平面の図面だけではわかりにくいものとして挙げられるのが、まず、周辺の道路や建物との位置関係です。マンションの模型や地図をよく見て、建物がどう建っているのかを把握しましょう。さらに、マンションの模型で、希望する住戸がどこに位置しているのか、エントランスや共用施設とはどの程度の距離感かなど、目で見て体感しておくことが大切です。「パークタワー晴海」のマンション模型とランドスケープ模型
住戸の窓の外に別の建物があると、視界がふさがれて解放感が得られません。タワーマンションの場合は、窓から何が見えるかが重要なので、各階や住戸からの眺望がわかるように画像を用意していることも多いので、そうした画像を見ることも大切です。
実は意外なものでも、眺めの良し悪しが分かります。それは価格表です。上下左右の住戸と「価格差」が大きい場合、そこまでは前に建物があったり、ウリとなる海や森が見えないといった理由があったりします。遠慮せずに販売スタッフに、価格差がある理由を聞いてみるといいでしょう。
コンセプトを徹底しているか、売る側の真剣度が伝わるか
別のマンションの事例も挙げてみましょう。同じ大規模マンションでも、上に伸びるタワーマンションもありますが、横に広がる複数棟で構成されるマンションもあります。「ザ・パークハウス国分寺四季の森」(7棟・全494戸)は後者の事例ですが、モデルルームは、高木の緑を意識したものになっています。その理由は、日立製作所中央研究所の広大な緑に隣接しているからです。
「ザ・パークハウス国分寺四季の森」のモデルルームIA-97A タイプは、隣接する森の木々の眺めを伝える作りになっている。
加えて、森の動植物の生息を育成するように、植栽計画なども工夫しています。例えば、外来種ではなく地元の樹木を植えること、低灌木などを密集させて土の露出を減らして雑草を生えにくくすること、それによって薬剤散布を抑制することなどの工夫です。
さらに植える樹木なども、地元に生息する鳥や昆虫が好むものをバランスよく配置するなどで、「いきもの共生事業所認証(ABINC認証)」集合住宅版の認証も受けています。
打ち出しているコンセプトをどこまで徹底しているか、売主側の真剣度が伝わるかどうかも、良いマンションを見極めるポイントだと思います。
「ザ・パークハウス国分寺四季の森」のマンション模型
ただし、大規模マンションではなく、一般のマンションの場合は、ランドスケープや共用施設などに工夫を凝らすことが難しく、モデルルームにかけられる宣伝費も限られるので、大規模マンションのようにはいかない面があります。
それでも同じように、マンションにどんなアピールポイントがあるか読み取り、標準仕様や広さを把握し、周辺の道路や建物との位置関係を確認し、住みよいマンションだと思えるか、納得のいく価格かどうかを判断することが、良いマンションを見極める方法でしょう。