重曹歯磨きにはホワイトニング効果もある?
重曹と水のペーストで歯を磨くだけでホワイトニングができる!?
重曹を歯磨きに使うの?と驚く人もいるかもしれませんが、重曹は昔から医薬品や食品添加物として利用されており、口の中に入れても安全性は問題ありません。歯を溶かす原因の多くは酸性ですが、重曹はアルカリ性のため歯を溶かすこともないのです。しかし安全とは言え、やはり歯磨きに使う時にはいくつかの注意が必要です。歯磨きに使う際の重曹の選び方や使い方のポイント、期待できる効果と注意点について、詳しく解説します。
歯磨きに利用できる重曹の選び方…購入方法と特徴
重曹の味は濃度にもよりますが、少ししょっぱいです。重曹には、純度によって大きく3つのタイプがあります。ここでは、一般に購入可能な重曹を3つご紹介します。※○:歯磨きに使ってよいもの ×:歯磨きに使ってはいけないもの
■薬局方の重曹…○
薬局で購入可能な重曹。精製度が高いため純度が高く、医薬品などに使用可能なものです。弱アルカリ性のため、胃もたれや胃酸過多などの中和するための薬としても利用されます。
■食用の重曹…○
スーパーなどで購入することができます。重曹はベーキングソーダという名前で販売されていることもあります。パンやお菓子を作るときに使用する食品添加物として、食用に使用できる純度があります。名前が似ていますが、ベーキングパウダーではありません。
■工業用の重曹…×
ホームセンターなどで、主に掃除や洗濯用として販売されています。純度によりますが、口の中に入れることを考えていないため、この中では最も安価です。
上記の薬局方、食用の2種類が、重曹歯磨きで利用できるものです。重曹自体はとても安価なので、最も純度の高い薬局方でも、500グラムが400~700円程度で購入できます。
重曹歯磨きの方法・ホワイトニング効果は?
重曹歯磨きのやり方は、粉末の重曹に水を加えて、水と重曹で歯磨き粉のようなペースト状態にして使用するのが一般的です。重曹歯磨きにはホワイトニング効果を期待する方も多いようですが、歯そのものを白く漂白できるわけではありません。歯の表面についている着色部分を削り落とすことによって、歯の本来の色を取り戻す効果ならあるでしょう。実は、水と重曹パウダーは、歯科医院などでも空気で吹き付けて着色汚れを落とす機械などで利用されているのです。
重曹歯磨きのメリットは、とにかく着色がよく落ちるということだと思います。市販されている着色汚れ落とし専用の歯磨き粉に比べても数倍のレベルで汚れが落ちます。
重曹歯磨きの使用上の注意点
重曹のホワイトニング効果を解説しましたが、注意すべきポイントも忘れてはいけません。アメリカ歯科医師会、ADA (American Dental Association)によると、重曹の粒子はアメリカで市販されている歯磨き粉のどの研磨成分よりも粒子が荒く、大きいとされています。重曹のみでは歯へのダメージが大きく、日常的に連日使用すると知覚過敏などの症状が出やすくなるということで、歯磨き粉として推奨はされていません。「重曹歯磨きはまるでクレンザーで歯を磨く様なもの」とまで言われているのです。ただし、重曹のみではなく、重曹成分配合の歯磨き粉などは推奨されているものがあります。
一般的に市販されている強めの着色汚れ落としの歯磨きでも、連日の使用は推奨されていません。もし重曹歯磨きを試したい場合、市販の歯磨き粉では落ちない重度の着色部分限定で使用し、一度完全に落とした後は数週間利用しないなど、工夫する必要があります。あくまで重度の着色を落とすための利用に留めるようにし、多くても週1回程度の利用にするのが良いかもしれません。
歯科医としては、重曹歯磨きより「重曹口ゆすぎ」がおすすめ
実は、重曹は歯磨きに使うよりも洗口に使う方が、安心して使うことができるのです。口の中は酸性状態が多いため、弱アルカリの重曹で中和するのです。やり方は簡単。カップ1杯(200~220cc)の水か、ぬるま湯にティースプーン1杯(5g)の重曹をしっかり溶かして1分ほど口をゆすぎます。
重曹口ゆすぎのメリットには、以下のようなものが挙げられます。
■口内炎などの粘膜の痛みを和らげる
口内炎は、酸性の刺激に対して強い痛みを発することが多く、弱アルカリ性の重曹で中和すると痛みが和らぐことになります。綿棒で少量の重曹を塗りつけても効果があります。
■口臭を和らげる
口臭は、口の中の細菌が出す酸性の生成物などが原因のことがあります。細菌を殺菌するのではなく、臭いの元を中和することで口臭を和らげることができます。
■プラークが落ちやすくなる
プラークと歯がしっかりと密着している隙間に重曹成分が入り込むと、大掃除で利用する効果のように、プラークが剥がれやすくなるという研究結果があります。
■子どもの歯の虫歯リスクの低減
酸の影響をすぐに受けやすい子どもの歯の中でも、さらに弱くて脆い歯の場合には、弱アルカリの重曹洗口による中和効果が期待できます。
重曹を使ったからといって、ブラッシングなしで虫歯や歯周病を殺菌したり、歯を溶かす酸を瞬時に中和できるということありません。虫歯予防の基本は、ブラッシングによる機械的プラーク除去です。さらに、歯の表面の酸を中和するだけでは、再石灰化は起こりません。歯から溶けたミネラル分の補給のために、唾液やフッ素が必要になります。虫歯予防について、さらに詳しく知りたい方は「歯科医が解説!虫歯にならない歯磨き回数とタイミング」をあわせてご覧ください。
口の中の酸性状態が気になる人や、ドライマウスなどの乾燥で口内炎や虫歯が頻発している人は、一度試してみると良いでしょう。