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無断熱の家が39%?急速に進む住まいの省エネ化

近ごろ住宅展示場や住まいのセミナー案内などで「ZEH(ゼッチ)」という言葉を目にすることが増えてきました。2020年の省エネ基準適合義務化によって、今後ZEHの存在はますますあたり前のものになっていくと考えられます。日本における住宅性能の事情なども踏まえ、急速に進む住まいの省エネ化の背景を解説します。

佐川 旭

執筆者:佐川 旭

家を建てるガイド

ZEH(ゼッチ)という言葉をよく見かけるようになった理由

住宅展示場や住まいのセミナー案内で「ZEH(ゼッチ)」という言葉を目にしたことはありませんか?

ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」のことで、年間に消費する正味(ネット)のエネルギー量が概ねゼロになるだけの性能や設備を備えた住宅のことを指しています。

吹付硬質ウレタンフォーム

これからは室内の熱環境を上手くコントロールして、有効的なエネルギーの使い方をすることが求められています


具体的には、建物の断熱性を高めると同時に効率の高い設備機器(冷暖房などの空調や給湯器など)をとり入れ、建物そのものの省エネルギー化を図ることが第一歩です。

次に、その住宅で生活をするのに必要なだけの量のエネルギーを太陽光発電などで創り、そのエネルギーでまかなうのがZEHの基本的な考え方です。もちろん全てを設備に頼るのではなく通風や日射といった自然エネルギーの力も活用していきます。

ZEHという言葉をよく見かけるようになった理由のひとつに、省エネ基準の適合義務化が挙げられます。2020年には、一般的な戸建住宅は国の定めた省エネルギー基準に合うだけの性能を持っていないと建てられなくなるのです。しかし、現在日本の住宅において2020年の基準を満たしているのはわずか5%。今後ZEHの存在はますます重要に、そしてあたり前のものになっていくと考えられます。

急速に進む省エネ化の背景

では、なぜ国が住まいの省エネ化を推し進めているのかを考えてみましょう。

1997年に京都議定書が採択され、それから18年を経て2015年の12月にパリ協定が採択されました。長期的には産業革命からの気温上昇を2度より低く抑え、1.5度未満を努力目標とすることが掲げられています。日本はCO2の排出量が世界5位の主要排出国ですから、2030年までに2013年度比で-26%の削減目標をめざしています。

この数字を実現するためには家庭部門からの排出量を40%削減しなければなりません。かなり高いハードルなので、国としてこれまで以上に新築建築物の省エネ基準適合の推進や既存建築物の改修など、建築物の省エネ対策を進めていくことが求められているのです。

ZEHと呼ばれるネット・ゼロ・エネルギーハウスは、その切り札として期待されています。

ヒートショックに関連する死亡者数は1万7000人

データによると1年間に約1万7000人もの人が、ヒートショックに関連する入浴中の急死をしたと推計されています(参考:東京都健康長寿医療センター研究所2011年)。これは、交通事故による死亡者数の約4倍となる数字です。

住まいの本来の姿は、人の健康的な暮らしを守るシェルターであるということ。しかし、低断熱で暖房も部分的にしかされていない住まいでは、室内に大きな温度差が生じ、住まい手の血圧を上下に大きく変動させることとなります。これがヒートショックの原因となるのです。

まったく断熱をしていない住宅は39%

ヒートショックに関連する死亡者数の多さに加え、無断熱の家が39%もあるということも知っておいていただきたい事実です。

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  【表1】日本の住宅の断熱性能の割合(参考:国土交通省、平成24年)


表1にある「平成11年基準」は、まったく断熱をしていない住宅に比べ約60%も省エネ化が実現出来るということになります。いずれにしても日本の住宅はまだまだ不健康な住まいが多いということです。

これからは室内の熱環境を上手くコントロールし、有効的なエネルギーの使い方をすることが求められています。したがって新築はもちろん、リフォームにおいても壁や窓のあり方を含めて検討していくことが重要なのです。

前述したZEHが求めている基準の仕様と性能は次の数値です。

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主に首都圏地域の基準値。専門用語や数字がありますから、ぜひ設計者に説明を受けると良いでしょう。


断熱材は誰が選ぶ?

家を建てる人は一般に内装やインテリアには興味がありますが、断熱材となるとやや専門的になるので、ほとんどの人は関心がありません。また設計者にまかせておけば大丈夫だろうという安心感もあると思います。

ただ、設計者にとっても断熱材の選択は悩ましいもの。性能の良い断熱材を選択するとコストが高くなったり、燃えにくいものや施工性の良いものなど検討していくと選ぶものが限られてしまうのです。

吹付硬質ウレタンフォーム

吹付硬質ウレタンフォームを使用した例


私の現場では若干コストは高くなりますが、吹付硬質ウレタンフォームを採用しています。スプレー施工で簡単なうえ確実に隙間のない断熱工事ができ、高い断熱性能に期待できるからです。これからは多少なりとも断熱材に感心をよせて、どのようなものが使われているのか設計者に質問してみると良いでしょう。

省エネ化でフレキシブルな空間を手に入れる

なぜか「省エネ住宅」というとエネルギーや数値だけが独り歩きしてしまう感じがします。それでは、家は単にエネルギーをつくる器になってしまいます。大切なことは“健康で快適な暮らしを実現するため”に省エネ住宅をつくるのだという認識をもつことです。

私達が一般的に快適と感じるのは、暑くも寒くもない状態のことです。まずはこの状態をつくることです。冬であっても、室内どこでも10度以上をクリアすることを目標にして下さい。実現できれば各部屋を細かく区切らなくてもややオープンなスペースを作ることができ、フレキシブルな空間が生まれてきます。つまり、住まいの省エネ化を進めるということは、ふところの深い家づくりを行うということなのです。


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