ネーミング作法はシンプルに覚えやすく

ランボルギーニアヴェンタドールS

V12NA(自然吸気)エンジンを搭載したランボルギーニのフラッグシップ。アルミフレーム付きカーボンモノコックボディを採用、乾燥重量を1575kgとした

ランボルギーニの新型フラッグシップモデルの正式名称は、アヴェンタドールSクーペである。お気づきになっただろうか? これまでのネーミング作法に則れば、LP740-4とならなければいけないところだが、呼び名がずっとシンプルになった。ステファノ・ドメニカリCEO曰く、「煩雑になることを避けたかった。特に若い世代にも名前をしっかり覚えてもらうために」。

たしかに、エンジンレイアウトのLP+エンジン最高出力の数字+駆動方式というネーミング法は、理解していれば簡単だが、知らなければ解読不能である。また、安易なパワー競争にも終止符を打ちたかったのかも知れないし、近い将来、ハイブリッドカーが登場したときのシステム馬力の表示など煩雑さも考慮に入れたのかもしれない。

アヴェンタドールだけじゃない。同時にウラカンの名前もシンプルになった。従来のウラカンLP610-4系は、シンプルにウラカンクーペとウラカンスパイダーとなり、2WDモデルにはウラカンRWDクーペ、ウラカンRWDスパイダーという名を与えた。ランボルギーニのデフォルトは4WDであるという言外のアピールである。
ランボルギーニアヴェンタドールS

ボディサイズは全長4797mm×全幅2030mm×全高1136mm、ホイールベース2700mm。前後重量配分は前43:後57とされた

アヴェンタドールSクーペの進化ポイントは3つ。空力を大幅にリフレッシュしたエクステリアデザインと、高回転域でのパワーとトルクを向上させた740馬力のV12エンジンとよりスムースかつより素早い変速を可能にするISRミッション(シングルクラッチ)というパワートレーン、そしてSVゆずりの可変ギアレシオステアリングと磁性流体ダンパーと新たに4WS(四輪操舵)を組み合わせた統合4WD制御システム、だ。
ランボルギーニアヴェンタドールS

従来型より最高出力を40ps向上させ740psとした6.5LのV12エンジン。VVT(可変バルブタイミング)やVIS(可変インテークシステム)を改良、より豊かなトルクカーブを実現した。0-100kmh加速は2.9秒


驚きの実力。ウェットでフルスロットルが楽しめる

ランボルギーニアヴェンタドールS

エクステリアの改良により空力性能が向上。従来型からフロントのダウンフォースが130%増加している

その実力のほどはというと、これが途方もないレベルに達していた。スペインはバレンシアのサーキット(F1テストで有名)で試乗会は開催されたのだが、路面はあいにくのウェットコンディション。にも関わらず、濡れた路面の上を740馬力のスーパーカーでハナからフルスロットルを楽しめたのだから驚く他ない。とにかくクルマを信じ切って操作すればいい。ステアリングホイールを切ればいい。カーボンコンポジットディスクを標準で使うため、ブレーキングのみ慎重さが必要だったが、それ以外では、クルマを信じることが楽しむコツ。これは、制御プログラムに優れる、最新スーパーカーの全てに言えることでもある。
ランボルギーニアヴェンタドールS

TFTモニターを用いたメーターは好みに応じて表示を変更できる。ドライブモードでもそれぞれ表示情報や大きさを変えてくれる

ランボルギーニアヴェンタドールS

ドライブモードはストラーダ/スポルト/コルサ/エゴの4モードを用意。新たに加わったエゴモードは好みに応じてトラクション、ステアリング、サスペンションをカスタマイズできる

アヴェンタドールSには、従来通り、ドライブモード選択があって、コルサ(サーキット)では前輪20:後輪80で駆動配分され、できるだけニュートラルステアを保つようクルマを制御する。アシ回りのセットも硬い。最初のうちは全輪で滑っていきそうな感覚がまずありきで怖い思いをするが、慣れれば、実はウェットコンディションではことのほか頼りになる設定であり、4輪の状況が文字どおり、ステアリングホイールを通じて手に取るように理解できるから、安心して踏んでいけた。

スポーツモードに変えると、様相は激変する。駆動力配分はもはや10:90であり、ほとんど後輪駆動だ。アクセル操作に対する反応もシャープで、リアスライド、つまりオーバーステアになる機会が増える。とはいえ、そこで怖がって急激に緩めたりせずアクセルペダルを微妙にコントロールすればキレイなドリフト旋回も可能である。さらにいうと、スピンモードに入りそうになれば、クルマが助けてくれる。ただし、ESPをオフにしなければ、の話だが。

これがノーマルモードの40:60だと、基本的にずっとアンダーステアを保つから、面白くもなんともない代わりに安全このうえない。アシの前後の動きがよく分かるこの設定でまずはコースを把握してから、ドライビングを楽しむならスポーツ、速さを競うならコルサ、を選ぶことになる。

さらに、新型アヴェンタドールSでは、エゴモード、つまり好みのドライブモード選択が可能となった。これは既にアウディなどが以前から採りいれる手法で、アヴェンタドールSの場合、パワートレーンとステアリング、サスペンションの3つのパラメーターに分け、それぞれにコルサ・スポーツ・ストラーダ(ノーマル)を用意。好みの組み合わせを選べるようにした。

この日のウェットコンディションのサーキットにおける筆者の好みは、パワートレーン:スポーツ(つまり前後重量配分10:90)、ステアリング:スポーツ(重め)、サスペンション:ストラーダ。ドライであれば、サスをコルサにする代わりに、ステアリングを軽めのストラーダにするだろう。せっかくだから、無駄に激しい操作を楽しみたいからだ。

ちなみに、ニュルブルクリンクのノルドシュライフでタイムアタックを行なったらしい。ラップタイムは今のところ未公表だが、そのときのセットアップは、パワートレーン:コルサ、ステアリング:コルサ、サスペンション:ストラーダ、だったという。ニュルの道はそれだけ荒れている、というわけだ。
ランボルギーニアヴェンタドールS

可動式アクティブリアウイングを装着。速度やドライブモードに応じて、3つの位置に移動する。ブレーキ冷却を補助するボーテックス・ジェネレーターと連動する

ランボルギーニアヴェンタドールS

スペインのバレンシアで行われた国際試乗会の様子。サーキットでの試乗はあいにくのウェットコンディション


公道での乗り心地も悪くない

ランボルギーニアヴェンタドールS

従来型より20%軽量化された、単排気管3本出しの新排気システムを採用。エンジン音や音響効果がさらに進化しているという。燃費向上のため、アイドリングストップ機構や、シリンダー休止機能が備わっている

サーキット以外ではどうだったか。ストラーダモードでの乗り心地は悪くない。この手のスポーツカーとしては良好なほうである。少なくとも、筆者が乗っていた初期のアヴェンタドールに比べると、雲泥の差。とはいえ、ウラカンほど洗練された乗り心地を期待してはいけない。限定車のSV(スーパーヴェローチェ)よりは心地よかったけれども、前期最終生産個体からの進化幅は思ったほど大きくなかった。逆にいうと、前期型アヴェンタドールは6000台を生産するなかで、漸次、ブラッシュアップに務めていた。固定サスで可能な限界まで乗り心地性能は進化していたということだ。

ちなみに、新しいエグゾーストシステムのサウンドも素晴らしいものだった。スポーツモードで聞く劇的なエグゾーストノートは、抑制の効いた、けれども刺激的なもので、特に高回転域でドライバーを痺れさせてくれる。十分なトルクフィールを右足裏にキープしたまま聞く高回転域のサウンドが、最高だ。もっとも、それを楽しむためには、やはり、クルマをサーキットに持ち込まなければならないけれど。
ランボルギーニアヴェンタドールS

新四輪ステアリングシステムを採用。低速時には前後車輪が逆方向を向き回転半径を小さく、高速時は同方向を向くことで車体をより安定させる

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