婦人病・女性の病気

下肢静脈瘤の原因・治療法…弾性ストッキング・手術等

女性に多いとされる下肢静脈瘤は、脚の血管が浮き出たり、ボコボコとコブのようになったりします。自覚できる初期症状があまりなく、皮膚の変色や足のむくみが表れてから気づく人も。治療法は弾性ストッキングの着用、血管内レーザー手術など。重症化することもあるので、注意が必要です。

清水 なほみ

執筆者:清水 なほみ

産婦人科医 / 女性の病気ガイド

下肢静脈瘤の初期症状・経過……脚の血管にボコボコ?

足をマッサージする女性

下肢静脈瘤は女性、特に妊娠を機に発見される場合が多いです

「下肢静脈瘤」は、ふくらはぎやすねなどの血管が浮き出て、それがボコボコとコブのようになってしまう疾患です。初期には自覚症状があまりないことから、見た目に違和感が現れるようになってから、家族に指摘されたり、鏡を見てはじめて気づいたりすることが多いといわれます。

下肢静脈瘤になると、脚がむくんだり、つるような症状が出現し、時には皮膚変色が起こるようなことがあります。静脈の循環障害が症状の主体となって静脈炎を併発することもあります。

こうなると、足の皮膚にうっ血性の皮膚炎が起きて色素沈着や下腿潰瘍が現れたり、静脈の循環障害により細菌感染を起こして,蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こすこともあります。これらの症状は、下肢静脈瘤を治療しないかぎり治ることはありません。重症化すると、命に関わることもあるのです。

下肢静脈瘤の原因……静脈の血液が逆流して溜まるため

静脈を流れる血液は、組織から心臓に戻る方向に進むため、動脈とは異なって圧力が低い血管系です。上半身の静脈は血液を心臓に戻すのにそれほど強い抵抗がありませんが、足の静脈は、血液を重力に逆らって心臓に戻すために逆流防止弁が必要となります。この弁に機能障害が生じると静脈に血液がうっ滞して、コブが生じてしまいます。これが下肢静脈瘤の正体です。

下肢静脈瘤はその瘤ができる静脈の部位によって2つの種類に分類されます。伏在静脈にできる静脈瘤とその伏在静脈の枝分かれした側枝静脈にできる静脈瘤にわかれ、前者を「伏在静脈瘤」、後者を「側枝静脈瘤」と呼びます

血管が網目状に見えるタイプは、皮膚表面のごく浅い部分に起こります。非常に細い静脈が腫れることで皮膚が赤紫色になる「クモの巣状静脈瘤」と、皮膚の直下にある静脈が腫れて鮮やかな青色となり網の目状に広がる「網目状静脈瘤」があります。基本的に重症化はせず、見た目だけの問題であることが多く、また伏在静脈瘤に移行することもありません。

下肢静脈瘤の治療法・対策法……弾性ストッキングも有効

下肢静脈瘤の治療は、皮膚炎や静脈の炎症を起こさない軽い程度を対象に医療用弾性ストッキングを使用します。このストッキングは、静脈瘤のできた静脈よりも皮膚から深い位置の静脈に血液を迂回させて、静脈のうっ血を予防するために使用します

軽度の下肢静脈瘤の治療として有効とされるのが、「硬化療法」です。血管を固める薬を静脈に入れて血管をつぶし、その後は弾性包帯などで2~3週間圧迫するという方法です。この治療の最大のメリットは、1回の治療が10~15分ほどで済み、入院の必要がないこと。傷跡も残らず、その日のうちに歩くこともできます。一方で色素沈着の可能性や、しこりが残る、2~3割の確率で再発が見られるなどのデメリットがあります。

根本的な治療法として、古くから行われているのが「ストリッピング手術」で、コブ状の静脈瘤を皮膚切開を加えて引っ張り取ってしまう手術です。再発率が低く、いちばん確実な治療法とされています。ただし、手術で静脈を抜去する際に、まわりの知覚神経にダメージを与えることがあり、手術後にしばらくの間しびれが出ることがあります。また痛みや皮下出血などが起こることもあります。

ほかに、弁不全のある静脈と深部静脈の合流する部位を縛って逆流を防ぐ「高位結紮術」という方法があります。ただし、単独の手術では再発率が高いため、硬化療法やストリッピング術と併用することが多いようです。

2011年より保険適応になった新しい治療法として、「血管内レーザー治療」があります。静脈瘤内にレーザー光を照射して,血管を閉塞させてしまう治療です。この手術は短期間で行えて、手術跡が目立ちません。一方で、一時的な痛みやつっぱり感、皮下出血が起こることや、日本での長期成績がまだ出ていないことがデメリットとされています。

下肢静脈瘤は、女性によくみられ、妊娠を契機に発症・増悪することが多い疾患として知られています。また、長時間立ったままの仕事をしている人、家族に静脈瘤のある人、肥満や高血圧、糖尿病のある人もリスクが高いといわれます。下肢静脈瘤のある方は、日頃から皮膚の色や脚のむくみを観察して、長時間の立ち作業をできるだけ避け、少しでも変化があった時には医療機関を受診し適切なアドバイスを受けることをお勧めいたします。
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