年々増加する、家庭介護を巡る死亡事件

車椅子の後姿

介護者の悩みは尽きません。大切なのは支え合いです

介護を受けている60歳以上が被害者、その家族が加害者となった殺人(承諾・嘱託殺人を含む)や心中、傷害致死などの事件は、2013年1月から2016年8月の間、全国で少なくとも179件発生していることが明らかになっています(読売新聞調査より)。

加害者の年齢は、70歳代が最も多く、次に僅かな差で80歳代。以降、60歳代、50歳代、40歳代と続きます。性別で見ると、男性(夫もしくは息子など)が加害者となる事件が多い傾向が見られますが、決して男性だけが加害者になりやすいとは言いきれません。家庭介護の現場では、依然として女性(妻や娘、息子の嫁など)が大きな役割を担っているのが現状。平均寿命の延伸、一人っ子世帯が増加する最中、「どの家庭にも少なからずリスクがある」と認識する必要があるのです。

介護者を追い詰める要因…介護殺人・心中に至る背景とは

家庭介護

誰にも相談することなく、親の介護が始まってしまうのが最も危険です

介護保険制度が導入され、公的なサポートを受けながら家庭介護ができるようになった今も、介護殺人・心中などの事件数が減少する傾向は殆ど見られません。何が介護者を追い詰めてしまったのでしょうか。家庭介護を巡り発生した殺人・心中事件、あるいは虐待事件が起きる主な背景には、以下のような要因があると言われています。

  1. 日々の介護による「精神的疲労」「肉体的疲労」
  2. 介護の長期化による「経済的困窮」「将来への悲観」
  3. 同時に2人以上の家族(配偶者と実両親、祖父母、義理の両親など)の介護をする「多重介護」
  4. 「老老介護」における介護者自身の体調不良、健康状態の悪化
  5. 介護者の孤立、近所・医療・地域行政などによる「サポート・ケアの不十分」

もちろん、この他にも様々な要因が考えられます。事件の中には、公的な介護サービスを受けるための「要介護認定」の申請を受けておらず、自治体が実態を把握しきれていない場合も……。もしも、家庭介護が始まる段階で、信頼のおける兄弟や親戚、地域の保健師やケアマネージャーに相談を持ちかけることができていたら、家庭介護をサポートするネットワークに見守られながら、安心して家庭介護を継続できていたかもしれません。

さらに、介護者がどのような経緯で家庭介護を引き受けたかについても注目しなければなりません。単に、「(介護者の家と)実家が近い」「同居しているから当然」「長男の嫁だから」「長女だから」といった理由で、いとも簡単に介護を引き受けてしまうのが最も危険です。献身的な介護をしながらも、自分自身の暮らしやライフプランがないがしろにしてしまったと気付いた時、ふと良心を見失ってしまう恐れがあります。

自分らしい暮らしを全うする「介護の心構え」

家庭介護

「うちはまだ大丈夫」と思っていませんか? 何事も早めの行動が大切です

高齢者が最も「要介護状態」になりやすいとされる年齢は75歳前後。この年代になると、要介護認定を受ける人の割合(要介護認定率)がぐんと上昇します。

両親が75歳というと、子の年齢は40代~50代といったところでしょうか。働き盛り、子育て真っ最中の世代にとって、親の介護は本当に身近な課題。「親の介護だなんてまだまだ先」と考えているうちに、ご両親の身体では、じわじわと老化が進み、外出や友人との交流、趣味を楽しむ時間に支障を来たし始めているかもしれません。

家庭介護を巡る痛ましい事件の引き金を引かない、引かせないのはもちろんのこと、親の介護が始まっても、自分らしい暮らしを全うできるよう、以下の2点を心に留めておいてください。

1:自分らしく、納得できる形で親の介護を引き受ける

例えば、親が入院先の病院から自宅へ戻る場合。介護サービスの利用計画を立てるために、ケアマネージャーや介護事業所の職員さんと、「介護サービス利用計画」の立案に向けた話し合いを行います。複数の専門職を前に、いろいろな質問をされるわけですが……ここが、家庭介護を円満に進めて行くための最重要ポイント。「サービス利用者(本人)の希望」とあわせ、「ご家族の意向確認」を尋ねられると、
  • 「一人でトイレに行けるようになって欲しいです」
  • 「病気や怪我なく過ごして欲しいです」
などと、「表面的」な思いを伝えるのみとなってしまうケースがしばしば見られます。しかし、これでは介護者となる家族がどんな暮らしを送っていきたいのかが全く見えません。子供の面倒を見なくちゃならない、仕事もある、家事もあるという状況で決断を迫られると、ついつい専門家に言われるがままに進んでしまうことも。
  • 「子供が小学校に入ったら仕事に出たい」
  • 「介護が始まっても、仕事は辞めずキャリアを積みたい」
専門職に思いを伝える際は、はじめから上手い言葉でまとめている必要はありません。専門職との会話を通じ、自分の思いが明らかになっていくことも多いにあり得ます。あとになって、こんなはずじゃなかったとならないように、数年先の暮らしを見据えた上で思いを具体的に伝えるようにしましょう。


2:介護や老後の生活について、親の考えや希望を把握しておく

親が意欲的な暮らしを送ることが、仕事や育児、介護に追われ、破綻しそうになる介護者の心を前向きにしてくれます。自分で食事がとれるようになったり、デイサービスに出かけるためにお化粧をするようになったり。ちょっとしたプラスの変化が、介護者の気持ちを奮い立たせます。

介護保険制度は「当事者主体」が原則ですから、ケアマネージャーに言われるがままにサービスを使うのではなく、親の考えや目標、希望を反映させられるよう応援しましょう。そのためにも、健康で元気なうちから、「理想的な老後の暮らし」「介護が必要になっても続けていたいこと」などについて、少しずつ、ご両親の思いに触れておく必要があります。なかなか言葉にしないご両親もいるかもしれませんが、幼い頃の写真を整理しながら、子育て時代の苦労話を聞いてみたり、自分がどんな子供だったか訪ねてみたりすると、ご両親がどんな思いで人生を送ってきたか、また、今後の人生に対する思いを語ってくれるかもしれません。

仕事と介護を両立できる制度やサービスの利用を!

介護保険制度の改正により、自治体によっては、地域の実情に応じた新しい介護サービスの提供も始まっています。両親と離れて住んでいる人などは、年末年始やお盆休みなどに、どんな介護サービスがあるかご近所を歩いてみると良いでしょう。どんなサービスを使えるのか知っていく過程で、家庭介護に対するイメージを膨らませることもできます。仕事と介護の両立を希望する人は、職場にある「介護休業規定」の内容を確認しておきましょう。

介護保険制度が普及しても後を絶たない介護殺人・心中。悲しい事件を起こさないためにも、両親が望む暮らし・余生、自分自身のライフプランについて、ご家族、ご兄弟などと話し合ってみてはいかがでしょうか。

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