社員にスマホを支給する会社には注意が必要?!
フランスではこのたび「オフラインになる権利」を守る法律が出来た。目的はまず、人間の健康に与える悪影響を避けるためだが、もう1つ重要なのは、労働者の権利と自由の保護である。この法律により、勤務時間外に業務メールをチェックしなくてもよくなるからだ。きっかけは労働者の健康と権利の保護
きっかけの1つは、インターネットが人に及ぼす悪影響を避けるためだ。常にネットに繋がっていることで、人の精神や健康に悪影響を与えることが欧州の研究者の間でささやかれており、まずはその防止に努めることが1つ。
もう1つが労働者の権利保護だ。
電子メールは受け手の時と場所を気にせず送ることができるが、その結果、受け手である労働者の権利を侵害しかねない。
メールは「形を変えたタダ働き」を生みやすい
受信した電子メールをいつ読むか、あるいはいつ返事するかは受信者の自由であるが、上下関係がある場合は別である。とりわけ雇用関係がある場合は無視するわけにはいかず、プライベートな時間であっても対応せざるを得ないのが実情である。
メールは「形を変えたタダ働き」を招きやすい
たとえすぐに対応しなくてもよい内容でも、ひとたび読んでしまえば気になり、少なくとも頭脳労働が生じ、場合によっては資料作りなど具体的な作業も発生する。
労働者の権利を重んじるフランスならでは
メールが一本送られてくることで、労働者が形を変えたタダ働きを強いられるとしたら大変危険なことである。なぜなら、労働時間の短縮あるいは労働者の休日という、長い歴史を経て獲得されてきた重要な権利が、たった1本のメールでなし崩し的に奪われてしまうことを意味しているからだ。
それを保護する動きが法制化まで至ったのは、労働者の権利を重んじるフランスならではといえる。
労働者保護の意識が薄い日本
一方の日本は、今でこそ労働者の保護がうたわれ始め、「ブラック企業」という呼び名まで出来たように、不当なサービス残業などが批判されているが、90年代までは社会の意識として労働者保護の意識が薄かった。大手企業の中にも、始業前の30分と終業後1時間は、業務に必要な準備の時間とみなされ、残業代がつかない会社もあった。しかも社員自身が、そうしたサービス残業をあたかもサラリーマンの美徳として受け入れていたほどだ。
会社からスマホを支給されたら要注意?!
では現在の日本はどうかだが、残業がスマホに形を変えたといってピンと来る人もいるはずだ。近年、社員にスマホを支給する会社が増えているが、タダでスマホを持たせてくれたといって喜んでいる人がいるとしたらお人好しかもしれない。
なぜなら、会社がスマホを持たせるのは社員にいつでもどこでもスタンバイさせる目的があるからだ。
メールの送信時刻指定が当たり前になる可能性
フランスに比べて労働者保護が希薄な日本では、フランスのようなオフラインになる権利が認められる可能性は低いだろうが、今後、意識が高まれば、業務時間外にメールを送ることへの批判も生まれてくるかもしれない。そんな場合、時間外に命令する意図があったかなかったかという問題も起きると考えられるが、送信者が罪に問われないよう、メールソフトそのものが改良される可能性もある。
たとえば、「相手がメールを開封出来る時間を設定」したり、「相手に届く時間を指定」したりできるような機能だ。
電話しかなかった時代であれば、時間帯や相手の都合を考えて連絡したが、メールではそうした使われ方が行われない以上、仕組みによって問題を避けることが必要になるかもしれない。