男のコンプレックスと、それを見つめる女性との温度差
女性たちが「コンプレックスのない男がいい」と言うのは過去の経験によるものだった。
「次はコンプレックスのない男とつきあいたい」
サキコさん(37歳)がそう言うと、エリカさん(39歳)も頷いた。
ちなみに、ここではコンプレックスという言葉を、一般的な「劣等感」や「引け目」という意味で使う。
自分の劣等感とどうつきあうのか
コンプレックスは、妬みに結び付きやすい
「30代前半に2年くらいつきあっていた同い年の彼は、自分が背が低いことをコンプレックスに思っていた。私が小柄なので、165センチの彼とは釣り合いがとれていたと思うんですが、彼はなにかというと『オレの背が小さいのがイヤなんだろう』と……。仕事でチームを組んでいる男性が180センチあって、たまたまふたりで歩いているときにばったり彼に会ってしまったんです。それ以来、彼は私にねちねちと嫌みを言うようになって……」
サキコさんは、彼の妬みと、いい年をしてコンプレックスにとらわれている「せこさ」がイヤになって別れた。
「自分で努力してもどうにもならないことに劣等感を持っても意味がない。身長なんてわかりやすいものだし、それがイヤなら最初からつきあいません」
とはいえ、おそらく人は努力して改善できるものには劣等感をもたないのかもしれない。解決のしようがないから、そこに引け目や負い目を感じるのだ。
ねじ曲がった卑屈さに、女性の気持ちは冷める
「私、その昔、高卒の男性とつきあっていたんです」エリカさんは大卒だったが、まったく気にならなかった。むしろ、彼の仕事への姿勢や人脈の多さに敬意を抱いていた。
「あるとき、彼の友だちを紹介されたんですが、その人が偶然、私と同じ大学だったんですよ。それで話が弾んじゃった。そうしたら、あとから『オレは大学に行ってないからさ』って、急にイヤな感じの言われ方をされて。今まで全然気にしてないように見えていたけど、実は彼、大学へ行っていないことを気にしていたんだ、って初めて気づきました」
彼女は、「そんなのどうでもいいじゃない」と彼に言った。だが、彼は「あなたはあいつと話しているとき、オレには見せない笑顔を見せていたよ。やっぱり同じ大卒同士だと話が合うんでしょ?」といやみに言った。
「正直、『あぁ、めんどくさい』って思っちゃって、つい押し黙ってしまったら、『何か言い返せるなら言ってよ』と。思わず、あなたがそんなつまらないことでコンプレックスを抱えているとは思わなかったと言い返してしまいました。ふいにコンプレックスが垣間見えるのはしかたがない。だけど、今まで私が彼に抱いていた敬意をまったくわかってくれていなかった。それが悔しかったんです」
女だって、いろいろなコンプレックスを抱いている。だが、男のそれは、どこかねじくれていて表現の仕方も卑屈だと女性たちは感じる。
「もっとストレートに言ってくれればよかったのに。『自分でも気づいていなかったけど、学歴に劣等感をもっていたから、彼に嫉妬してしまった』と言われれば、『あなたは立派に自分の道を切り開いてきたじゃない、私はそんなあなたを尊敬しているのよ。だから、そんなことに劣等感を持つ必要はない』と言えたんですよね。だけど、まるで私が大卒の男のほうがいいと思っているかのように決めつけられたら、こっちだって反発したくなる!」
自分のコンプレックスを明らかにせず、あたかも彼女が彼にコンプレックスを抱くように仕向けた感じが、彼女にとっては耐えられなかったのだろう。
性的なコンプレックスにも女性はうんざり
性的なコンプレックスにもうんざり
「性的なコンプレックスを抱いている男も、私はごめんです」
これはサキコさんの意見。
「1年以上つきあってきているのに、セックスのあとに毎回、『本当は感じてないんじゃないの? 俺は下手だから……』って言ってくるんですよね。あぁ、また始まった、めんどくさい! と思っちゃう(笑)」
すると、「あるある! セックスで威張る男は論外だけど、卑屈になる男も困りものですよね」とエリカさん。
「若いならともかく、大人なんだからコンプレックスくらい自分で整理してほしい。コンプレックスを女に押しつけるようなことはしないで。知ってほしいなら素直にストレートに言うべき。女は男の卑屈なコンプレックスにはつきあえない」
ふたりは口を揃えてそう言った。
そもそも、「コンプレックスのない人間」なんていないのではないか。どこに、どういう劣等感を抱くかは人によって違うのだろうが、女性たちはコンプレックスそのものよりも、男性の「卑屈さ」を見てしまうことに耐えられないのかもしれない。
自分の劣等感とどうつきあうのか、どう消化し、それをどう表現するのか。女性に好感をもたれるかどうかはそのあたりが鍵になりそうだ。