為替相場が企業にあたえる影響って?
半年で5000万円稼いだFXトレーダーM氏。その取引手法の秘けつは?
まず、円高が進んだ状況でモノを輸出した場合、そのモノの価格自体が上昇してしまい、売れにくくなることが考えられる。さらに、決算時期などに合わせて、取引で得た外貨を円転(外貨を売って円を買う取引)する際、円換算すると目減りしてしまうため、利益も減少してしまうのだ。
逆に、円安が進行すると、輸出企業にはプラスに働くものの、仕入れコストの上昇が輸入企業の利益を圧迫し、業績悪化の要因になりかねない。
その為替リスクを軽減するため、多くの企業では「為替予約取引」などの対策を駆使している。
為替予約取引って、いったいどんな取引なの?
為替予約取引は、特定の通貨を、一定の時期に一定の価格で受け渡すことを、前倒しして約定する取引だ。「為替先物予約」とも呼ばれているこの取引は、金融機関と顧客企業が相対で価格を決定し、決めた期日に決めた価格で受渡しが行われる。取消や変更はできない。輸出企業は、ドルで受け取った利益を円に換えるための「ドル売り・円買い」取引を行う一方、輸入企業は、仕入れのための「ドル買い・円売り」取引を日常的に行っている。
長期の相場分析をベースに、短期の値動きにも対応
難しいのは、為替相場が予想通りに動いてくれないということだ。M氏も「一年先が今より円高なのか、円安なのかを考えて為替予約をしている。しかし、予想に反した状況になれば、臨機応変に動かなくてはならない」と話す。
実際、「2020年くらいまでの長い期間で考えれば、円高になる可能性はまだあるだろう。これまで中長期の予想が大きく外れたことはない。しかし、超長期的には円高だと思っていても、ブレグジット(英国のEU離脱)を問う国民投票の時や、米国の大統領選挙の時のように行き過ぎた短期的な円高局面では、円売りに動いた」という。
この長期のトレンドを基本にしながらも、臨機応変に短期の値動きも組み合わせられるトレードが、M氏の強さなのだろう。
一年先の相場を予想する方法とは?
では、どうやったら「一年先」の相場が分析できるのだろうか。M氏は、「10年債の利回りは必ず見るようにしている。2016年相場でも顕著だったが、日米の金利差が拡大すると、円安ドル高が加速する。また、株価の動きも重要だ。今はまだ、NY株高が続いているが、ダウ工業株30種の上昇はいいところまできていると思う。崩れるタイミングは全くわからないし、あえて予想もしないが、もし、下落が続くようなことがあれば円高ドル安が進行する可能性が高いだろう」と分析する。
長期の分析というと、難しいと思ってしまいがちだが、「債券利回りと株価を継続して見続けると、傾向や動きの変化などがわかるようになる」という、シンプルかつ簡単な方法なら試してみる価値はありそうだ。
成功の秘訣は、ポジションを持ってから自分がどう動くか
さて、M氏が為替予約取引とは別に、FX取引を始めたのは半年ほど前のことだ。2016年6月にドル円が125円の高値をつけた時、「ドルが崩れる可能性を感じて、これは真剣にやらないと思った」ことに加え、「株取引をしていたが、情報に差があり、不公平だと思った。投資した企業が倒産して、紙切れになったこともあった。でも、為替市場はマーケットも大きく、プロや個人トレーダー関係なく、取引するものみんながほぼ同じ条件で取引する。とても公平」だと感じていたことが、FXを選んだ理由だという。
驚くべきは、FXを本格的に始めてからの半年を月単位でみると、全ての月をプラスで取引を終えていることだ。この半年で稼ぎ出した利益は、5000万円ほどだという。
中長期の相場を分析できるようになれば、M氏のように勝ち続けることができるのだろうか?
M氏は、「長いトレンドに逆らわなければ、レートは戻ってきてくれる。ただし、長期の分析の根底が覆ったときは、自分の分析に固執せず、機敏に動くことも必要だ。大事なのは、ポジションを持ってからどう行動するかだ」と話す。
また、「相場は、動きが似ていたとしても、同じ相場は二度とない。だからこそ、過去にとらわれず、利益がでていたら早めに確定して欲張らないことが大事。もし、利益額が大台に乗ったとしたら、これは神様が『もうこれくらいにしておきなさい』と言っているのだと思って決済することにしている。欲張りすぎると負けてしまうことが多い」そうだ。
そんなM氏でも、もちろん失敗トレードもするが、「負けが続いた時は、少しでも利益が出たら利確して、勝ちトレードを重ねる。無理やりにでも『勝ちぐせ』をつけるようにしている。負け始めると、とことん負けてしまうから」と話す。失敗を成功に切り替える方法を身につけておくことも大切なようだ。