楽天株価は携帯キャリア進出で大きく下落(東証1部<4755>)
楽天(東証1部<4755>)は国内最大のEC(電子商取引)モール「楽天市場」を運営する国内ECの主要プレイヤーです。国内ECではアマゾンとトップを走りますが、同社の場合、ネットショッピングモールだけでなく、証券や銀行、クレジットカードなどの金融事業、駐車場シェアリングや民泊、格安スマホなど事業が多岐に渡ります。幅広い分野でサービス展開し「楽天経済圏」を作り上げているので、ユーザーは一つのIDでライフシーンをカバーするように複数の複数のサービスを回遊的・継続的に利用することになります。さらにこれを促すのがクレジットカードとポイント制度で、楽天スーパーポイントの発行額は1兆円に、楽天カード決済比率は50%を超え、複数利用比率は6割を超えています。
楽天が携帯キャリア事業で成功するか否かは実に不透明
こうした楽天経済圏の構築をすすめることで成長を遂げてきた同社が挑んだ新たな分野が携帯キャリア事業です。ところが進出発表と同時に、事業の不透明感や財務悪化見込みなどを嫌気した売りが集まり、同社株は下落を続けています。というのも、携帯キャリア事業はMVNO(仮想移動体通信事業者) とは異なり、携帯電話基地局を全国に設置する必要があり、既存3社と同レベルで展開するための必要投資額が非常に大きいものだからです。しかも、後から新規参入して成功するには、ドコモ、ソフトバンク、auという既存3社を圧倒する必要があるのに、実際の実務面では他社の協力を前提としています。
楽天のネットワークが途切れる場所においては、NTTドコモによるローミングサポートを前提としているようですが、当然ドコモに義務はなく、交渉が必要となります。また、設備投資負担が大きい携帯電話基地局の設置においては、既存3社の基地局設備設置場所の共用を求める向きで、これも既存3社に鉄塔などの設備を開放する義務はないため交渉が必要となります。そのため、今すぐ同社が携帯キャリア事業で成功するか否かは不透明なのです。
さらに財務への懸念もあります。足元の業績は連結の効果や投資事業の好調によるところが大きく、本業は依然投資の時期にあると思います。伸びている金融事業もまだ投資時期であり、インターネットサービス事業も強化拡大のための投資が継続されています。それがさらに携帯キャリア事業への進出で、更なる借り入れが必要となるわけです。
同社は携帯電話基地局の設置工事など設備投資のため、資金調達を想定しており、その資金調達残高は2019年のサービス開始時で約2,000億円、2025年に最大6,000億円となると想定しています。全額を銀行借入等の有利子負債にて行う予定としていることから、財務の悪化を懸念する見方があるわけです。
楽天の株主優待の利回りは、株価が下落している分、向上している
ここで改めて同社のデータと株主優待についてみてみましょう。【銘柄データ】楽天(東証1部<4755>)
【株主優待+現金配当予想利回り】 4.5%
【2018年5月29日株価】 727.8円
【株主優待獲得最低投資額】 100株=7万2780円
【今期予想現金配当(1株あたり)】 4.5円
【株主優待権利確定月】 12月末
【株主優待の内容】
100株以上で下記の株主優待
1、楽天市場 200円クーポン4枚(総額800円相当)
2、楽天トラベル 国内宿泊クーポン(総額2,000円相当)
3、楽天Koboでの対象期間中の電子書籍購入に対し通常の3倍の楽天スーパーポイントを付与
4、抽選で株主様限定楽天イーグルスグッズをプレゼント
5、楽天イーグルス主催公式戦観戦チケットを優待価格でご提供
6、抽選で株主様限定ヴィッセル神戸グッズをプレゼント
7、ヴィッセル神戸主催公式戦観戦チケットを優待価格でご提供
8、 抽選で株主様限定FCバルセロナグッズをプレゼント
9、抽選で株主様限定ゴールデンステート・ウォリアーズグッズをプレゼント
10、楽天証券口座にて自社株式を保有している株主様限定
楽天証券口座での自社株式購入に係る手数料について30%ポイント還元及び、マーケットスピード利用料1年間無料
※今回は100株を購入したケースで上記の株主優待を獲得したケースを想定しています。株主優待は額面の確定している1と2の合計2800円を額面通りの2800円で評価し、利回り計算しています。もちろんその他の株主優待も有効活用できれば更に利回りは向上します。
ここまでに書いてきたように、携帯キャリア事業が不透明であるだけに株価は下落が続いていますが、それだけに現金配当+優待の利回りは上昇してきており、その利回りは実に4.5%に達しています。もちろん楽天のヘビーユーザーなら、さらに実質利回りは上昇します。株価は既に携帯キャリア事業の不透明さを、ある程度織り込んだ様子です。
買い物から旅行、結婚、金融までポイントを使いまわせる楽天経済圏を作り、楽天カードを介してのクロスユース率、つまり1人のユーザーが様々なサービスを使う割合は6割に及びます。ポイントを全てのサービスで使えることもクロスユース率を上げているようで、「楽天経済圏」は着実に拡大していると見られます。このような将来性のあるビジネスを展開していること、PERの面でも利回りの面からみても割安な点は評価できると思います。
ただ、ここまで書いてきたように、利益成長による株価上昇は、長い目で見る必要があるかもしれません。株価の上昇には、実際にサービスが開始されて実績を出すなどの材料が必要でしょう。楽天のサービスをよく利用する方であれば、株価が安くなったここで買い、長期で株主優待を楽しみながら株価上昇を待つという方法も取れると思います。あるいは携帯キャリア事業の不透明感が払しょくされて株価の反転を確認してから購入するという方法もありだと思います。
参考:日本株通信
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