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エンジン選びから“歓び”が始まるジャガーFペース

高級ブランドが“背の高いスポーツカー”SUVを続々とデビューさせる中、スポーツカーの草分けというべきブリティッシュブランドが満を持してリリースしたのがFペース。良質な走りの資質、クーペライクなモダンジャガーテイストが魅力です。選択が悩ましいディーゼルとガソリンの特徴や、オススメの装備などを解説します。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

“背の高いスポーツカー”はクーペライクなモダンジャガー

ジャガーFペース

ジャガー初のSUVモデル、車体構造はXEやXFと共通のものをベースとする。ディーゼルに20dピュア(639万円)とレザーシートなどを備える20dプレステージ(663万円)を、ガソリンにスポーティな35tRスポーツ(849万円)とハイパフォーマンスなS(981万円)をラインナップ


コンパクトSUVが世界的にブームとなるなか、スポーティイメージの強い高級ラグジュアリーカーセグメントにも“異変”が興りつつある。発祥の地を市場にもつアメリカンブランドや、SUVの走りを変えてきたドイツ御三家は言うに及ばず、イギリスやイタリアの高級ブランドが軒並み、“背の高いスポーツカー”、つまりは以前の中&大型クーペの代わりとなるSUVを続々、デビューさせ、いずれも高い評価を得ているのだ。

しかも、SUV偏重の傾向はエスカレートする一方。ジャガーやマセラティ、ベントレーは既に市場へ投入済みで、今後は、アルファロメオから、ランボルギーニ、アストンマーティン、ロールス・ロイスまで、名だたるスポーツカーブランド、高級車ブランドがSUVをデビューさせる、というから楽しみである。

SUV人気の理由は、性能やデザインの観点からみて、従来のセダンとクーペの美点を掛け合わせたような存在だから、だ。つまり、実用性の高さと、スペシャルなスタイリング、である。

とはいえ、ここまでSUVがもてはやされる原因となったのは、もちろんアメリカや中国といった大マーケットでの人気がイチバンの要因ではあるけれど、それ以前、90年代の終わりに、ドイツのブランドが背の高いSUVに乗用車並みのドライバビリティを与えたことが遠因となっている、と思われる。

M・ベンツがEクラスのように、BMWが5シリーズのように、それぞれ“走ってくるSUV”を世に送り出し、さらには世界随一のスポーツカーブランド、ポルシェが、カイエンというスポーツカーのような乗り味のSUVをヒットさせた結果、今日の高級SUVムーブメントを生み出した。

ジャガーFペース

ボディサイズは全長4740mm×全幅1935mm×全高1665mm、ホイールベース2875mmとなる


ジャガーFペースは、スポーツカーの草分けというべきブリティッシュブランドが満を持してリリースした、ミッドサイズのSUVだ。Fという名でも分かる通り、ベースはジャガーのスポーツカー、Fタイプであり、セダンのXFであろう。もうこの時点で、良質な走りの資質は確保されていたと言っていい。

ジャガーFペース

ボディの80%にアルミを用いた軽量モノコック車体構造を採用。自動緊急ブレーキ(オートノマスエマージェンシーブレーキ)やパークアシストなどのアシスト機能も備わる


ルックスは、クーペライクなモダンジャガーテイスト。最近のジャガーデザインをよく知る人にとっては、馴染みのスタイルだろう。そういう意味では、どこからどうみても、背が高いだけのジャガー。街中でも、ちょっと奇異な目で見られる。つまり、目立つ。これもまた、クーペの代わりとして立派にその役割を果たしている証拠だ。

実際、街の中で目立つためには、低いスポーツカーでは“モノ足りない”。今の時代の人気者は、ミニバンに代表される背の高いクルマだから、同じく背の高い、そしてスタイリッシュなモデルでなければ、注目を浴びることができない、のかもしれない。

ジャガーFペース

サルーンとイメージを同じくするスポーティなインテリア。ウォータープルーフ仕様のリストバンド型アクティビティキーもオプションで用意される

ジャガーFペース

シートやインテリアの素材、ステッチなどに豊富な選択肢を用意、好みのスタイルに仕立てることができる


ちなみに、他のジャガーモデルと同様、ボディの8割はアルミニウム製である。


アダプティブダイナミクスはマストな装備

ジャガーFペース

シャシーとサスペンションはFタイプのシステムをベースに、SUVの特性に合わせて最適化。コーナーでのコントロール性を高めるトルクベクタリング・バイ・ブレーキングも装備した


日本仕様のFペースには、2種類のエンジン&3つのスペックがラインナップされている。2L直4ディーゼルターボとスペック違いの3L V6ガソリンスーパーチャージャーだ。いずれも、8ATとAWDシステムを組み合わせている。

ジャガーFペース

2Lディーゼルターボは最高出力180ps/最大トルク430Nmを発生。ガソリンの3LスーパーチャージャーはRスポーツに340ps/450Nm、Sに380ps/450Nmと2タイプを用意


なかでもディーゼルモデルは、幅広い層にオススメできる。分厚いトルクが巨体をモノともせずに動かし、低回転でひたむきに走る高速クルージングも快適のひと言。もちろん、高速燃費は16km/l以上(経験値)と、素晴らしい。高級SUVとして、性能的にはディーゼルで申し分ない。

ただ、エンジンフィールにジャガーらしさがあるか、と問われれば、ない。そもそもディーゼルは低回転域でしっかりとトルクを出すエンジンであり、それゆえ、ブランドのキャラクターを演出しづらい。世界中、どのディーゼルエンジンも似通ったもの、なのだ。それよりも、よどみなく高回転域までまわり、クーペ顔負けのエグゾーストノートを奏でるガソリンV6の方が、踏む歓びと音の楽しみがあって、いかにも現代のジャガーらしい。

ジャガーFペース

アダプティブダイナミクスは走行中にホイールポジションや車体の動きをモニターし、最適なダンパー調整を行ってくれる電子制御ダンピングシステム。ダンパーがサスペンションを最適化、ボディを平行に保ち操縦性と乗り心地を向上させる


ディーゼル、ガソリン、いずれを選ぶにしても、絶対に外せないオプションがひとつある。それは、電子制御ダンピングシステムの“アダプティブダイナミクス”だ。これを付けると付けないとでは、ふだんの乗り味に雲泥の差が出てしまう。ナシだと、街中でのゴツゴツ感が増す。速度を上げれば気にならないものの、ふだん乗りでゴツゴツは嫌だろう。それを解消するのが、アダプティブダイナミクスだ。極太大径タイヤを履くRスポーツはもちろん、その他のタイヤ仕様でも、選ぶことをオススメする。

それ以外、さまざまなオプションの組み合わせもさることながら、どのエンジンを選ぶかで、最初から悩ましい。Fペースには、約束された“買ってからの歓び”に加えて、大いに悩める“買う前の歓び”もあるのだった。

ジャガーFペース

路面状況によりトラクションを制御する4WDを全グレードに装着。アダプティブダイナミクス装着車には、車両と路面状況によりエンジンとブレーキ設定を調整してくれるASRが用意される

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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