二人世帯以上は平均1078万円、単身世帯は平均822万円
毎年6月から7月にかけて行われる「家計の金融行動に関する世論調査」の結果が先ごろ発表されました。気になる平均貯蓄額は、二人以上世帯は1078万円と前年の1209万円から大幅に減少となりました。金額の少ない順に並べたときの真ん中に位置する世帯の貯蓄額=中央値は400万円で、これは前年から変化はありませんでした。一方、単身世帯の平均貯蓄額は822万円と前年の733万円から約90万円の増加となりました。しかし中央値でみると、20万円とかなり少なく、これは貯蓄ゼロ世帯が多いことの裏返しでもあります(貯蓄ゼロ世帯については、後述します)。
以上の数字は、それぞれの調査対象全体の結果のため、貯蓄ゼロの世帯も含まれています。
金融資産を保有している世帯のみの結果では、また様相が変わってきます。
金融資産保有世帯で、二人以上世帯の平均値は1615万円。前年の1819万円から約200万円の減少で、中央値でも950万円で前年から50万円減少しています。一方、単身世帯は、平均値で1590万円と、やはり前年1486万円から100万円近く増えています。中央値でも前年から20万円アップの600万円と増額という結果です。
二人世帯では、この1年、貯蓄を減らし、単身世帯では増えたという対極的な状況となりました。
二人世帯の貯蓄ゼロは、年収が高くても増えている
こうした調査データを見るとき、いつも問題になるのは、平均貯蓄額が世間の感覚とずれている、ということだけではありません。問題の本質は「貯蓄ゼロ」の世帯割合です。今回の調査で、二人以上世帯の貯蓄ゼロは30.9%で前年と同じですが、30%もの世帯が貯蓄ゼロというのは、将来の年金不安どころが、日々の生活もかなり厳しいはずです。
単身者世帯では、さらに貯蓄ゼロが多く、48.1%(前年47.6%)と半数に迫るほどです。2014年までは30%台であったのが、昨年2015年に急激に貯蓄ゼロ世帯が増加しました。ただ、単身世帯の場合、若年層で年収も多くなく、貯蓄がうまくできない、という事情もあるでしょう。年収が500万円以上の階層では、貯蓄ゼロの割合が20%台以下となっています。
しかし、問題は、二人以上世帯です。確かに年収が300万円未満では40.5%、年収500万円未満で29.8%と高いのですが、前年からの変化がほとんどありません。しかし、年収750万円以上の世帯で23.7%、年収750万円以上で20.3%、年収1000万円以上で15.7%と数値自体は少ないように思えますが、前年から急激に増えているのが、こうした年収が高い世帯なのです。
子どもの教育費や住宅ローンなど、大きな出費が続いた可能性もあります。しかしそうであっても、収入から確実に貯蓄に回すなど、事前の準備が欠かせないはず。さらに、共働きで家計的に余裕があると、収入から大きな出費をまかなえてしまいます。今は、それでもなんとかやっていけるかもしれませんが、どちらかの収入が減ったり、なくなった場合、とたんに家計破たんへと転落してしまうリスクを抱えているのです。
平均貯蓄額などは、自分には関係ない、ではなく、こうしたデータから、我が家の家計や貯蓄はどうなのかを見直すきっかけにしてほしいと思います。
<参考>
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2016年)
https://www.shiruporuto.jp/