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なんと9階建ても! ハウスメーカーの対応力が拡大中

最近、中高層住宅(9階建てくらいまで)と呼ばれる分野でハウスメーカーの存在感を増しています。そこでこの記事では、従来の中高層住宅の担い手であるゼネコンの建物との違いを中心に、その魅力に迫ります。3階建てなど都市部の住宅を検討している方にも、是非呼んでいただきたい内容です。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

皆さんはハウスメーカーの住宅にどんなイメージをお持ちでしょうか。郊外の比較的広い敷地に建つ住宅を思い浮かべることが多いのではないでしょうか。しかし今、ハウスメーカーが特に力を入れている分野の一つは3階建て以上の都市型住宅。最近は7階建て8階建てにも対応し、間もなく9階建てにも対応を始めるなどというハウスメーカーもあります。そこで、この記事では3階建て以上の「中高層住宅」について、ハウスメーカーの取り組みの現状を紹介します。

街中の敷地を有効活用する中高層住宅

街中の敷地は駅から近いとか、大きな通りに面しているとかで大変利便性が高く、当然ながら資産価値が高いのが一般的です。もし、住宅を持っていて建て替えようとするなら、できるだけその土地を有効利用できるようにと考えるものです。

渋谷展示場

4階建てや5階建てのモデルハウスが並ぶ住宅展示場も増えてきた(写真は東京都渋谷区にある「TBSハウジング渋谷」の様子。クリックすると拡大します)

ただ、限られた敷地面積ですから、当然ながら上方向に伸ばす、つまりできるだけ階数がある建物を建てる必要性に迫られます。さらに1階に店舗や事務所、2階以上に賃貸住宅、最上階に自宅部分を設けると、家賃が入ってくるため、経済的にも有利になります。

今回の記事は、このようなケースにおいてハウスメーカーで建てるという選択が有力なものになりつつあるということをお知らせするものです。というのも、今回のようなエリアでの建物建設は、以前にはハウスメーカーの対応力では難しかったからです。

その担い手の多くは地域のゼネコンといわれる人たちでした。仮にハウスメーカーが建てるとしても、建設の手法はゼネコンと同じ、彼らとの差別化をしにくかったという理由もあります。しかし近年、少しずつ事情が変化してきました。

ハウスメーカーが中高層住宅に力を入れる背景とは

事情の変化には大きく二つの理由があります。一つは住宅を含む建設業界の環境の変化です。東日本大震災が発生した2011年以降、東北の復興に向けた建設ラッシュで大工さんや職人さんの需要が増え、結果的に人件費が高くなり、資材費も高止まりしている状況。このためハウスメーカーとゼネコンの建設費が逆転するという状況を迎えています。

ハウスメーカー、特に大手の場合は住宅を建てるための人員を予め確保しているため、人件費の上昇の影響を比較的受けにくい事業構造になっています。これは資材についても同様です。一方、ゼネコンの場合は、建物1棟、あるいは一つの案件ごとに人員や資材を集めることから、それぞれのコストが高くなる傾向にあるのです。

重量鉄骨

重量鉄骨の柱の模型(パナホーム)。階を重ねるごとに太さが増しているのが分かる(クリックすると拡大します)

もう一つの理由は、ハウスメーカーの技術的な対応力が高まったことです。ハウスメーカー、特にプレハブ系ではこれまで3階建て住宅を数多く建ててきました。軽量鉄骨で建てるケースもありますが、最近では重量鉄骨で建てるケースが大変増えています。

この重量鉄骨による構造技術を強化することで、3階建て以上の中層住宅分野に続々と参入してきているわけです。また、木造のハウスメーカーの中にも新たな技術を採用することで5階建て程度なら木造で中高層住宅を建てられるようになってきました。

また、前述したように住宅を建てる大工さんや職人さんによって建てられる、つまり通常と同じような施工をしますから、施工品質が安定しやすく、工期も比較的短期間になりやすくなっています。このあたりが、状況の大きな変化の内容です。

店舗・事務所・賃貸など多様なニーズに対応

神戸

パナホームが神戸市内三ノ宮で建設した全戸賃貸住宅で構成された7階建て(パナホーム提供、クリックすると拡大します)

では、ここからは早くから取り組みを始めているパナホームの事例を中心に、ハウスメーカーの中高層住宅の事例をご紹介します。パナホームは2011年発売の「ビューノ」シリーズで中高層住宅分野に取り組んでいます。

住宅だけでなく店舗と事務所だけからなる建物も手掛けているほか、来年1月からはハウスメーカーの中では最も高層となる9階建ての建物にまで対応することを発表しています。で、以下で中高層住宅の内容を写真を交えながらご紹介します。

下の写真は1階を店舗としたモデルハウスの事例で、カフェになっています。このような店舗の設計や装飾といった設えはハウスメーカー自身が行うこともありますし、専門の事業者に依頼することもできます。

このケースでは、自宅で商売を行うことが想定されているようですが、店舗や事務所として事業者に貸す場合もあります。そうした際には信用ある事業者を誘致、選別することが求められます。こうしたことは、素人では難しく、誘致がうまくいかなければ返済計画がうまくいかなくなります。

カフェ

埼玉県川口市にあるモデルハウス(以下3点は同じ)の様子。1階は店舗(カフェ)の設えになっている(クリックすると拡大します)


要するに立派な事業であり、長期的な事業性をもって計画する必要があるわけです。ハウスメーカーはそうした点で、様々な事業者とのネットワークを持っているケースが多く比較的安心感があると思われます。

中でも賃貸住宅は、立地などにより入居者の傾向が大きく変わりますし、それに応じた間取りや仕様も求められます。一昔前のような画一的なワンルームタイプでは、長期的、安定的な入居者確保は見込めません。

ハウスメーカーはこの点で賃貸住宅を事業として行っているケースが多く、賃貸経営を後押しするノウハウに優れているという側面があります。例えば、立地に応じた賃貸の仕様はもちろん、部屋を全て借り上げる制度(サブリース、一括借り上げ)や、家賃保証などの仕組みなどの提案がそれにあたります。

それらついては本題ではありませんので詳しくは説明しませんが、地域のゼネコンなどではこれを自らで行っていないケースもあり、サービス内容の質に問題がある場合もあるということです。賃貸経営をするのにはそれくらいの慎重さが求められる時代なのです。

居住部分にこそ発揮されるハウスメーカーの強み

そして、地域のゼネコンとの最も異なるのが、オーナーの居住部分の提案内容です。この部分は、住まいを長年供給し続けてきたハウスメーカーならでは。一方、地域のゼネコンは事務所ビルや賃貸住宅の提案力には一定レベルのものがありますが、いわゆる住宅としての提案には難があるのです。

LDK

3階にあるLDKの様子。手前のリビングは段差があり一段低くなっている。天井高がより高まり、開放感がある(クリックすると拡大します)


イメージとしては、ビルの一室を居住スペースにしたような感じです。それでは、快適さの部分で物足りなくなるはずです。具体的には下の写真を見てください。上の写真はパナホームのモデルハウスの事例ですが、建物の壁面をセットバックしています。

半屋外のような空間が設けられているのが分かると思いますが、こうすることで直射日光を遮ったり、周囲の建物からの視線からプライバシーを守ることもでき、何より外部とのつながりのある気持ちの良いLDK空間を実現できるわけです。

屋上

屋上の様子。テーブルとイスのほか、炊事ができるスペースも設けられている(クリックすると拡大します)

最上階も単なる屋上ではなく、右の写真のように実生活に密着した提案ができるのがハウスメーカーの中高層住宅の魅力です。例えば、このような設えなら、BBQなど家族が集うイベントも行えます。つまり、家族のコミュニケーションの促進というような、暮らしに直結する配慮を行えるわけです。

で、ここまで読んでいただいた方は、「こんなのモノがあれば誰でもできるんじゃない!?」と思われるかもしれません。しかし、そんなことはありません。モノを集めるにもしっかりとしたルートがないとだめですし、仮にモノがあったとしても使い勝手が良い設えにするにはしっかりとしたノウハウが必要になるからです。

例えば、街中には屋上を設置している建物(住宅を含む)がかなりの数みられますが、その中で活用されているものは意外に少ないのです。つまり、屋上利用をしようとしてお金をかけたわけですが、それがムダになっているケースも見られるというわけです。生活の実態を知るハウスメーカーであれば、そうなる心配は少なくなるはずです。

旭化成ホームズ

旭化成ホームズが11月から発売する「ヘーベルビルズシステム」の模型(クリックすると拡大します)

今回はパナホームの中高層住宅の事例をメインにまとめましたが、このほかにも近年取り組みを強めているハウスメーカーがあります。その一つが旭化成ホームズで、11月から8階建てまでに対応する商品「ヘーベルビルズシステム」を発売しています。

ところで、今回の記事は何も7階建てや8階建てといったビルのような建物を建てるよう、皆さんにお勧めするのが意図ではありません。そういった建物を建てられるハウスメーカーだからこそ、そしてその取り組み内容をご理解いただくことで、3階建てを中心とする都市部の住まいのヒントがきっと見つかるはず。

最近は、東京都内にでは4階建て、5階建てのモデルハウスが住宅展示場に建てられるケースが増えました。是非一度見学してみてはいかがでしょうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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