星野リゾートが手がける「塔の日本旅館」
今年東京にオープンの施設の中でもひときわ注目を集めてきた大手町のラグジュアリー旅館『星のや東京』。夏、ついに開業しましたが、1室宿泊のみの料金が1泊72000円~と高額なため口コミも少なく、まだまだ謎のベールに包まれています。日本中に個性的な宿をオープンさせ、海外へも進出している星野リゾートが、首都・東京で運営する初の宿泊施設。ビジネス街・大手町に出現した17階建ての「塔の日本旅館」とはいったいどんなところなのか。そしてコストパフォーマンスは……? 東京のラグジュアリーホテルを取材し続けているガイドがおもわず唸った、星のや東京の魅力を3点ご紹介しましょう。
ここまでしてくれるの?!
充実のくつろぎスペース『お茶の間ラウンジ』
星のや東京のコンセプトは「塔の日本旅館」。地下2階、地上17階のビルがまるごとラグジュアリーな旅館に作り上げられています。1階の玄関で靴を脱ぎ畳に上がると、そこから先はほぼ全館畳敷き。(なんとエレベーターの中まで!)まず足元からくつろぎが始まります。客室の延長とも言える『お茶の間ラウンジ』
さらに夕食前後には日本酒や焼酎、ワインに蔵元などプロが選んだおつまみ。翌朝はオーダーが入ってから準備するというパリパリの海苔が美味しいおむすびと味噌汁。そして出かける前には淹れたてのコーヒー……これらが全て無料でいただけるのです。自分の部屋の延長としてくつろぐもよし、仕事をするもよし、あるいは同じフロアに泊まった者同士一期一会を楽しむもよし。なんとも星のやらしい、ホスピタリティに溢れた特別な空間となっています。
旅館の隅々にまで宿る、星のやの“気遣い”
客室は、定員2名・約50平方メートルの部屋が2種類と、定員3名・約80平方メートルの部屋が1種類の合計3タイプ。もちろん畳敷きで竹素材のインテリアや障子、そしてビルの外壁の麻の葉模様が部屋の中に美しい陰影を作るなど、上質な和の美を味わえます。部屋の中は“日本らしい気遣い”がいっぱい。例えば寝具やソファは低く作ることで正座に近い目線となり、より和室の美しさを満喫できるよう配慮。またお茶の間ラウンジへ気軽に出入りしやすいよう、ワンタッチで客室のオートロックを外せるシステムなど、細かい気配りが様々導入されています。
感心したのは滞在着です。大手町のビジネス街もそのままお散歩できてしまう程オシャレなジャージ素材のキモノは、帯なども実に簡単に締められるのに、不思議なほどスタイリッシュにキマる優れもの。実際このキモノで外出中、観光客にカメラを向けられた人もいるそうです。これだけ心地よくカッコいいものなら、旅館初体験の外国人でも着物に良いイメージを持ってくれることでしょう。
また日本全国の星野リゾートから精鋭を集めたというスタッフのみなさんは日本語がとても美しく、小津安二郎の映画を観ているかのような清潔感が会話から伝わってきて実に気持ちがいいのです。こういった日本らしい気遣い。上質の旅館だからこそ味わえる“もてなし”ではないでしょうか。
睡眠前のストレッチ、雅楽の演奏、香道なども体験!
星のや東京には、地下1500メートルから湧き出た大手町温泉を引いた露天風呂と内湯が最上階・17階にあります。この温泉と、温泉で体を温めてから施術を受けるSPAは宿泊者だけが利用できるので、これも星のや東京に泊まりたい大きな魅力になることでしょう。ところで温泉のすぐ隣にあるスペース『SPAラウンジ』では就寝前の時間帯に、お香の香りに包まれて深い呼吸をし、心地よい眠りに誘うストレッチプログラムが毎晩無料で行われます。(10月24日開始予定)
またフロントのフロアでは、雅楽の演奏や、香道入門ともいえる“香りの聞き遊び”体験など、日本の伝統文化を気軽に楽しめるイベントが開催されこちらも無料。私が訪れた時は香道が行われていましたが、お香は京都の一流香木店から取り寄せた伽羅、沈香、白檀などが使われ、入門編とはいえ本格的なものでした。
以上、「星のや東京に来ているのだから」というゲストの気分に寄り添ったさりげない仕掛けがそこここに用意されていて、同じ料金を払っても他のホテルでは味わえない“プライスレスなもてなし”が隅々にまで行き渡っていると感じました。
「日本旅館を宿泊施設のひとつのカテゴリーとして世界に進出させ、海外でも『快適でサービスが素晴らしいから、今回はビジネスホテルじゃなく日本旅館に泊まる』と言われる市場を創造していきたい」と語る星野リゾート・星野佳路代表の大志も味わえる星のや東京。1泊72000円~はズバリ「納得の価格」と思います。
<DATA>
星のや東京
住所:東京都千代田区大手町1-9-1
アクセス:東京メトロ大手町駅A1、C1地上出口より徒歩2分