個人向け社債の発行は再び増加
高金利の社債をチェック
ANAホールディングスは利率0.258%、償還期限4年、発行額200億円、三井住友フィナンシャルグループは利率0.545%、償還期限10年、発行額410億円と、当初5年の利率0.32%、以降5年は5年物円スワップのミッド・レート+0.36%、償還期限約10年(発行後5年後に繰上償還の可能性あり)、発行額510億円、以上は9月9日まで募集予定。あかつき本社、利率1.0%、償還期限1年、発行額10億円、募集は9月14日~9月29日となっています。
7月の日本銀行の金融政策決定会合で、9月の会合でこれまでの政策の総括を行うと黒田総裁が明言してから、長期金利が急騰。金利が上昇しないうちに資金手当てをしていこうと機関投資家向けを含め社債の発行そのものが増えているようです。
ソフトバンクグループの当初5年の利率は3.0%前後
ソフトバンクグループの個人向け社債は最終的な発行条件は9月9日に決まり予定のため、現在は仮条件が告知されています。償還期限が最長25年。最長としたのは、発行後5年(2021年9月30日)経過した場合、毎年の利払い日に期限前繰上償還が出来るからです。つまり償還期限は最短で5年、最長で25年ということになります。利率は当初5年は2.90%~3.10%(仮条件)、2021年9月30日(5年経過後)の翌日から15年間は「6ヶ月ユーロ円ライボー+円の5年スワップ・ミッド・レートへの上乗せ幅+0.10%(仮条件)」、2036年9月30日(20年経過後)の翌日から5年間は「6ヶ月ユーロ円ライボー+5年スワップ・ミッド・レ―トへの上乗せ幅+0.3%(仮条件)」となっています。
ユーロ円ライボーとは、利率基準日(各利息計算期間日の開始直前の利払日のロンドンにおける2銀行営業日前)のロンドン時間午前11時現在のロイター画面(3750)に表示されるロンドン銀行間市場における円の6ヶ月預金のオファード・レート。
円の5年スワップ・ミッド・レートへの上乗せ幅は9月9日の発行条件決定時の東短ICAP株式会社が提示する円の5年スワップ・ミッド・レート(小数点第3位以下を切り上げる)で、上乗せ幅も9月9日に決定されます。
さまざまな特約等が付加されているため利率も難解
利率の決めかたは近年発行の個人向け社債と比較すると難解なのは、今回発行される債券は期限前償還条項、利払繰延条項が付き、また劣後特約まで付加されているからです。利払繰延条項とは、発行者はその裁量により、本債券の利息の支払いの全部または一部を繰り延べることができます。
期限前償還条項は、発行者の選択による期限前償還、税制事由による期限前償還、資本性変更事由による期限前償還を行うことができます。
劣後特約とは、一定の劣後事由が発生した場合に、その元利金の支払いを、上位債務よりも後順位におく旨の特約になります。ちなみに劣後事由とは、清算手続きの開始、破産手続きの開始、会社更生手続きの開始、民事再生手続きの開始などをあげることができます。
繰上償還条項を除けば、発行元の信用力が問われることになります。今回発行される個人向け国債、JCRの格付けはトリプルB(BBB)の予定。発行体の格付けはJCRはシングルAマイナス(-A)、S&PはダブルBプラス(BB+)。長期コーポレート・ファミリー・レーティングはMoodysがBa1としています。
お世辞にも格付け(信用力)は高いとは言えませんが、ソフトバンクグループの保有する資産、業績等を俯瞰すれば過度に心配する必要はない気がします。2016年は後4カ月程ありますが、最も好条件の個人向け社債と考えられます。長期に寝かせておける資金があれば、購入を検討したいところです。募集は9月12日~9月29日まで。数千億円規模の発行なので慌てなくて大丈夫だと思います。