歯・口の病気

長引く鼻水が耳鼻科ではなく歯科で治るケースとは

「風邪をひくと歯が痛くなる」…その原因は、歯と鼻の位置関係にあります。耳鼻科と歯科のどちらを受診すべきか迷う人もいるようですが、耳鼻科で歯科を紹介されたり、歯科で耳鼻科を紹介されたりすることもあるでしょう。長引く鼻水や鼻詰まりの原因が歯だったり、歯が痛いと思っていたら鼻に原因があったり…。よくあるケースと、受診前の注意点などを解説します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

耳鼻科と歯科との境界は骨の壁1枚!?

歯と鼻腔の位置的関係

上の奥歯が副鼻腔に露出しているとトラブルが連鎖しやすい

口と鼻はつながっています。ではどこでつながっているか、皆さんはわかりますか? 鼻で呼吸した空気を口から吐き出すこともできるし、口で吸い込んだ空気を鼻から吐き出すことができるので、何となく口の奥の方でつながっているイメージを持たれているかもしれません。さらに「歯が原因で鼻水が出る」と聞くと、歯が原因で一度喉の奥まで行った何かが鼻に影響するのかな?と思うかもしれません。

確かに空気の通り道は奥でつながっていますが、歯と口の関係で重要なのは「歯と鼻の位置関係」です。実は歯と鼻は、上アゴの骨を隔てて、上下的に隣り合って存在しています。上アゴの骨のすぐ上には上顎洞と呼ばれる副鼻腔の空間がありこれが鼻腔にもつながっています。この境目となる骨の壁に歯が刺さっている感じになっているのです。

たとえばこの壁の厚さがが5ミリしかない場合、歯の根の長さは10ミリ~20ミ程度あるため、歯の根の先端が上顎洞に突き出していることになります。すると風邪などで上顎洞に炎症が起こると、根の先の神経の出入り口が影響を受けて、虫歯がないのに歯が痛くなるようになったり、逆に歯の神経まで虫歯が侵入して炎症を起こすと根の先から細菌が飛び出して上顎洞にまで感染が起こったりすることもあります。

人によっては、上の奥歯を抜歯すると、副鼻腔と口腔内が一時的につながってしまうこともありますが、その後に自然に閉鎖することが多いので心配ありません。でも多くの人は骨の壁が厚く、歯の根の先端が上顎洞に露出しないため、歯と副鼻腔はそれほど影響を与えずにどちらか一方に症状が出ることが多いようです。

歯が原因で副鼻腔(上顎洞)に症状が出やすい病気

■上顎洞蓄膿症
風邪や腫瘍、虫歯、歯周病、などが原因で起こることがあります。上顎洞に膿汁が溜まった状態にるために、鼻水や鼻づまりが起こりやすくなります。さらに目の下から頬にかけての部分が腫れたり、奥歯の上の歯ぐき押すと痛みが出ることもあります。

■副鼻腔炎
風邪や歯、鼻腔からの炎症が原因で、上顎洞にも起こる炎症です。鼻水や鼻づまり、目の下から頬にかけての圧迫感や違和感が起こることもあります。歯ぐきの根元あたりが腫れてくるようであれば、歯に原因があることが多いようです。

耳鼻科と歯科にまたがるような違和感があり、どちらを受診すべきか迷うような場合、基本的には、どちらを受診しても問題ありません。治療の考え方としては、炎症の場所ではなく、炎症の根本原因がどこにあるかです。

歯に原因ある場合は、歯の内部の神経や空間が虫歯菌などによって感染を起こしているケースが多く、歯の神経を取る治療を行ったり、歯の内部の隙間に残っている感染物質を取り除く根の治療を行います。さらに症状が著しい場合には、歯の抜歯を行うことで感染原因を除去します。

風邪をひくと奥歯が痛い? 骨の壁が薄い人は注意が必要

上顎洞と口腔内を隔てる骨の壁の厚さが一番問題になるのは、上の歯の犬歯の後方の3~4本の歯です。壁の厚さは個人差が大きく、骨の厚みが厚い人がほとんどのため、ごく一部の壁の薄い人が歯と副鼻腔で互いに影響を与えやすい状態になります。

臨床的な経験では、9:1の割合で、問題ない人が多いようです。しかし実はこの骨の壁は、年齢とともに上顎洞が拡大してくるために、相対的に壁が薄くなっていく傾向があります。そのため中高年になってから、風邪をひくと奥歯が痛くなる人も出てきます。

若いうちから骨が薄い人や、すでに風邪をひいて歯が痛くなった経験がある人は、年齢とともにそれ以上に骨が薄くなることが多いため、特に奥歯の歯の神経を取る治療後に副鼻腔炎になるリスクが高まることがあります。そのためできるだけ歯の神経を取らなくて済む段階で、虫歯の治療が終わるように早めに治療することをオススメします。

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