常に時代にあった”イタリアン”を表現する田窪シェフ
「アーリア ディ タクボ」時代では、東京で出来ることの「リストランテ」の形を田窪シェフ流に表現し、直ぐに人気リストランテの仲間入りを果たしましたが、私もそのお料理に魅了された一人でした。ただ、ここ最近の流れで言えば、綺麗にまとまったリストランテのお料理は、どうしてもメインが弱い傾向があると個人的に感じていた東京のイタリアン。リストランテのお料理が洗練された方向に進化すればするほど、イタリアンとしての強みや個性が薄れていった様にも感じます。肉に力強い味わいと風味を与える薪焼き
そんなことを田窪シェフも同じく感じていたのかどうかは分かりませんが、新店「TACUBO」では、肉を焼く熱源として”薪焼き”を取り入れています。メインに薪焼きを取り入れている肉イタリアンとしての先駆けとしては、以前こちらのサイトでご紹介しました赤坂の「ヴァッカロッサ」がありますが、「TACUBO」ではより気軽に、身近に田窪さんの世界を感じることが出来る8名掛けのカウンター席をメインとした内装になっています(ほか個室が2室)。扱う肉は、牛肉のほか豚や羊と幅広い食材で提供しています。前回の訪問では仔羊とフランス・バザス牛のハラミをいただきましたが、今回は5歳のマトンをいただきました。5歳のマトンはお目にかかる機会は少ないと思いますが、こちらの生産者さんは、羊としての生涯をある程度全うさせてあげたいという志で肥育されているから5年と、食用の羊としては長い肥育期間のマトンを出荷されているのだそう。
この日のマトンは雌。そのためか、マトン特有の強いクセはあまりなく、やわらかい味わいのマトンで、尚且つ扱いが難しいといわれている薪ですが、田窪シェフの腕ですから、火入れもよく満足なものでした。
また、メイン以外のお料理ですが、田窪さんらしさは引き続き残っているものの、カウンタースタイルや薪焼きのメインが今の田窪さんにしっくりきているのでしょう、全体を通して以前よりもより深く印象に残るお料理へと力強さが増したように感じるものでした。まさにソフトとハードが一致し、充実されている印象です。
最後に、「TACUBO」は田窪さんの料理人としての集大成となるお店の形なんですか?と質問したところ、こんな答えが返ってきました。
「そのステージ、立場ではそれしか目に映らなくても、次のステージに上ると、また新たなものが見えてくるものだし、見えなきゃいけない」
田窪さんが私たちに魅せてくれるお料理の世界は、これからも変化し続けるようです。
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■TACUBO(タクボ)
・住所:東京都渋谷区恵比寿西2-13-16 ラングス代官山 1F
・TEL:03-6455-3822
・営業時間:
ランチ:水・土・祝
12:00~15:30(L.O.13:00)
ディナー:月~土
18:00~翌01:00(L.O.23:00)
・定休日:日曜日
・地図:Yahoo!地図情報