国債・債券/個人向け社債の最新情報

個人向け社債、償還期限10年以上モノの注意点とは

好金利を提示する銀行等が減少気味であることから、少しでも高い金利を求めようとすれば、個人向け社債などの債券にも目を向ける必要があります。その個人向け社債ですが、今年度に入ってから償還期限が長めになる傾向があるようです。個人向け国債を含め、足元の債券の発行状況などを見て行くことにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

お金の悩みに答えるマネープランクリニックガイド

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個人向け国債はキャンペーンがある金融機関で

注目の個人向け社債

注目の個人向け社債

長期金利がマイナス圏で推移していることから、新窓販国債は半年近くも新規発行が行われておりません(10年物)。この先も長期金利はプラス圏に浮上して、ある程度の水準まで上昇することは当面考えられないため、新窓販国債の新規発行が再開される見込みも当面ないと思われます。

個人向け国債に関しては年利率0.05%の最低保証があることから、商品性が変更されない限りは3年物、5年物、10年物の全てが最低保証の年利率0.05%で発行が継続することでしょう。年利率0.05%で満足するのは難しいかもしれませんが、メガバンクなどの定期預金金利は全期間年利率0.01%。メガバンクよりは「マシ」と言えるでしょう。

個人向け国債は、全国どこの金融機関で購入してもその条件は同じ。一部の証券会社などでは、個人向け国債の現金プレゼントキャンペーンを行っています。たとえば、マネックス証券では、購入金額1万円から現金プレゼントがあります。購入金額500万円未満は合計購入額×0.20%、同500万円以上で合計購入額×0.30%、かつ上限金額は設けられていません。 通常、個人向け国債のキャンペーンは購入金額100万円以上が多いのですが、中には少額から対応している金融機関もあります。現金プレゼント分、実質利回りがアップするので、個人向け国債は是非、キャンペーン実施金融機関で購入しましょう。

個人向け社債にも償還期限が30年物が

超低金利は私たち資金運用を行う側にとっては向かい風ですが、資金を調達する側にとってはフォローの風です。フォローの風を受け、企業は償還期限の長い社債の発行を増やしているのです。大多数の社債は固定金利ですから、金利の低い時期に長期で資金調達をしておこうと考えるわけです。私たちが低金利局面で長期固定の住宅ローン金利を選ぶのと同じことです。

個人向け社債の償還期限は、今では長くて10年だったのですが、ついに償還期限が10年超のものが発行されるようになったのです。

損害保険ジャパン日本興亜株式会社、第1回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)がそれで、償還期限は最長30年となっています。

残念ながら募集期間は2016年8月5日までですが、今後も同様の個人向け社債が発行されことが考えられますのでご紹介しておきます。

最長30年物の社債の注意点とは

同個人向け社債、正式名称が非常に長い商品ですが、さまざまな特約などが付いているからです。気になる金利は、当初10年は年利率0.84%ですが、以降20年は6カ月ユーロ円ライボー+1.86%になっています。「ライボー」とは、ロンドン銀行間市場における金利レートを指しています。同個人向け社債の場合、各利息期間の開始直前の利息支払期日からロンドンにおける2銀行営業日遡った日のロンドン時間午前11時現在のレートとしてロイター画面「3750」に表示されるロンドン銀行間市場における円の6カ月預金のオファード・レートになります。

このレートに1.86%の金利が上乗せされることになりますが、金利は半年ごとに見直されることになります。つまり、当初10年間は0.84%の固定金利、10年超は前記で計算された金利が半年ごとに変わる変動金利になります。

長期金利(10年)はマイナス、超長期金利の20年は約0.26%、同30年は約0.35%ですから、金利水準はかなりの好金利と言えるでしょう。しかし、さまざまな特約が付いていることを忘れてはなりません。

「劣後特約」とは、清算手続きの開始、破産手続きの開始、会社更生手続きの開始、民事再生手続きの開始等の劣後事由が発生した時の弁済順位が一般の債務より低くなるという特約です。保険会社の劣後債の場合、その元利金の支払いは一般の債務の返済や保険金の支払いよりも後順位に置かれます。

利払繰延条項とは、発行者はその裁量ににより、本債券の利息の支払いの全部を繰り延べることができます。また、発行者または認可保険持株会社(発行者の親会社)のソルベンシー・マージン比率が200%を下回り、かつ継続している場合や、発行者または認可保険持株会社に対して金融庁による早期是正措置が発動されている場合等の一定の場合には、本債券の利息の支払いの全部を繰り延べなければならないのです。ちなみに、2016年3月期のソルベンシー・マージン比率は単体で729.3%、連結で750.2%となっています。

償還に際しては本債券が当該償還を行った後において、発行者および認可保険持株会社が十分なソルベンシー・マージン比率を維持することができるとい見込まれること、または当該償還額以上の額の資本金等の調達を行うことを条件とし、かつ金融庁の事前の承認の取得(承認が必要な場合)、その他その時点において適用のある規制上の要件を充足したうえで、2046年8月8日にその総額を未払残高の支払いとともに償還することになっています。

さらに、本債券は償還要件を充足したうえで、2026年8月8日以降に到来するいずれかの利息支払期日にその全部を期限前償還できるようになっています。言い換えれば、今回ご紹介する個人向け社債は、年利率0.84%、かつ最短では10年で償還される債券ということになります。

本当に年利率の妙味が出てくると考えられる11年目以降は確約できないということになるのです。もちろん、11年目以降の金利動向によっては年利率妙味が低くなっている可能性もあります。

見かけ上は利回りの妙味が大きいかもしれませんが、その旨味を味わうにはさまざまなハードルが課されているのです。今後も同様の個人向け社債が発行されたら、そのハードルの内容を吟味して購入の有無を考えましょう。決して年利率だけで判断しないことです。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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