不倫の当たり年のダブル不倫ドラマ「不機嫌な果実」
「不機嫌な果実妻」は夫への不満が消えない・・・。
ダブル不倫といえば、今クールのドラマ『不機嫌な果実』はダブル不倫を含む様々な不倫が乱れ飛ぶドラマ。平均視聴率は7.7%ということで、大ヒットとはいきませんでしたが、栗山千明さんや稲垣吾郎さんをはじめとする美男美女キャストの「艶技」は話題になりました。
「こんな偶然なんてなかなかないよ。やっぱドラマだなあ」と上から目線で視聴する方も多かったと思いますが、なんのなんの「事実はドラマよりも奇なる」の男女間問題を星の数ほど聞いてきた私は「あるある」と納得しながら観ていました。美人妻が次から次へとイケメン男にモテてしまう、夫が強度のマザコンで妻を監視するなど、どこの地域にもある現象ですから。
30代以上の方は、この『不機嫌な果実』が以前にもドラマ化されていたのを覚えていらっしゃるかもしれません。1997年・秋クールに石田ゆり子さん主演で放送され、清純派の石田さんのイメージを覆す不倫モノということで、結構話題になりました。
ちなみに、1997年は渡辺淳一さんの『失楽園』がベストセラーになり、映画も大ヒットした年でもあります。「あのふたりって『失楽園』でしょ?」のように、『失楽園』が「不倫」を意味する単語として使われていたのがこのころでした。
ドラマ「不機嫌な果実」の原作と違うラストシーン
話をドラマ『不機嫌な果実』に戻すと、2016年のリメイク版では、ドラマのラストがどうなるかが、早くから話題になっていました。と言いますのも、原作本と1997年のドラマは、結末が少し異なっていたからです。原作では不倫を貫き、夫と離婚した主人公が、新しい夫との生活にも「やっぱり私って損ばかりしているんだわ」と不満を抱えます。その埋め合わせとして「子供を作ろう」と思いつき、「どうせ誰の子でも同じ」と、元カレとベッドイン……という、ある意味「懲りない主人公」の「過激な」ラストとなっていました。
石田ゆり子さんのドラマでは、再婚相手に満たされない思いを抱くところまでは一緒ですが、出会い系で不倫をしようとした主人公が、待ち合わせ場所に着いてわかったのは、約束した相手がなんと夫だったという事実。現実ならその場で修羅場を迎えそうな設定ですが、ドラマの中では二人は「やはりお互いを必要としていたんだ」と愛を確かめ合い、仲良く歩き出す。といった原作よりも「マイルド」なラストシーンになっていました。
「いろいろあったけど、やっぱり夫婦愛に目覚めた」みたいな円満なオチは、「不倫を肯定するのか」という世間の反発に配慮したのか、あるいは石田ゆり子さんの清純イメージ維持を目的としていたのか、定かではありません。
2016年版『不機嫌な果実』のラストシーンに見る製作者の意図
この流れを受け、原作発表から20年もたった今回は、果たしてどのような「オチ」になるのかが、大きな話題になっていたわけです。不倫を貫き、マザコン・セックスレスの夫と別れ、新しい夫を得たものの、その夫も実はマザコンで、結構嫉妬深く、大した稼ぎもないのに浪費癖があった……ということに気づいた主人公。「やっぱり私って損ばかりしているんだわ」というこの作品のキーフレーズはそのままですが、原作と比較すると、なんだかんだ言いながらも、どこかで現状に納得しているかのような描き方であると、私には感じられました。
また、今回は海外ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』ばりに、主人公を含む3人の女友達のそれぞれの結婚・不倫・恋愛が比較して描かれ、彼女たちの友情関係にもポイントが置かれていました。
注目のラストは、この3人が同窓会でそれぞれの今のパートナーとの関係について「それなりに落ち着く場所を見つけた」と、どちらかというと肯定的な評価を下し、「不倫は、もうこりごりだね」という結論に落ち着くというもの。
1997年版ドラマ同様、「不倫を賛美しない」という世論に配慮した演出をみせていました。ただ、最後の最後ですれ違うイケメンに思わず振り返る3人という、やや「苦笑」を誘う感じで「懲りない妻たち」という余韻を残したのが、原作への精一杯のエールだったのかもしれません。
次ページでは不機嫌な果実妻が生まれる背景にも関係する、女性の「夫選び」の基準を考えます。