人間関係

義両親と上手くいかないと悩んでいるママへの処方箋

嫁と姑の感情のもつれは、時に「戦争」という言葉で表現されるほど、こじれてしまうことがあります。縁あって家族になった相手ですから、できればうまくやっていきたい。そう思っても溝がなかなか埋まらない時は、どうすればよいのでしょうか。

福田 由紀子

執筆者:福田 由紀子

臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド

子どもが生まれると、義両親との関係が変わり始める

義父母

「素敵なご両親ね」と言われる義父母だからこそ、不満を持つことに罪悪感を覚えてしまったりするのです

子どもが生まれると、それなりにお互い気を遣い合っていた義両親との関係が、大きく変わり始めます。子育て中は、夫と自分の「育てられ方の違い」がよく見える時期。また、自分たちの子育てに対する義両親の態度(金・手・口を出す度合い)により、不満を溜め込むママも多いようです。

嫁と姑の感情のもつれは、時に「戦争」という言葉で表現されるほど、こじれてしまうことがあります。いったんそうなってしまうと、なかなか修復は難しい。縁あって家族になった相手ですし、夫や子どもの手前、できればうまくやっていきたい。そう思ってもなかなか溝が埋まらない人は、次に挙げる2つの思いにとらわれている場合が多いようです。


1)気に入られたい

長くつきあっていかなければならない人たちですから、嫌われたくはありません。しかし、相手に気に入られようと、無理して「いい嫁」「できた嫁」を演じ過ぎる人がいます。いわば、ずっと背伸びしている状態。維持できるはずがありません。

盆暮れに顔を出すくらいなら、短期間なのでどうにかなるでしょう。しかし、比較的近くに住んでいる時、介護の問題に直面した時など、相手の期待に応えようと家族や自分の都合を後回しにしていると、だんだんストレスが溜まっていきます。

やっかいなのは、背伸びした状態を「普通」だと思われることかもしれません。パンパンに緊張して頑張っている状態が「デフォルト」。ふとした拍子に力をゆるめていると「サボっている」「態度が悪くなった」ように思われる……。

手を抜くと、気を抜くと、嫌われるんじゃないか。ダメな嫁、ダメな母だと思われるんじゃないか。そんな不安にとらわれ続けてヘトヘトになり、ある日いきなり爆発して絶縁、といったことも時折耳にします。

このように無理をしがちな人の中には、自分の親との関係が悪かったり、親を早くに亡くしていたりする人が少なくありません。「理想の親子」を夢見て頑張ってしまうようです。


2)好きにならなければ

大好きな夫の親なのだから、きっと好きになれるはず。いや、好きにならなければならない、と考えようとする人もいます。しかし、そう思えば思うほど、逆にいやな部分が目につくようになり、相手を受け入れられない自分を責める結果になったりします。

夫の何気ない仕草や言葉の使い方に、義両親の顔が浮かんでイライラしたりすることも少なくありません。一生懸命、子どもにマナーや生活習慣を教えている横で「いいじゃないか、うちではそんなことにこだわらなかったし」などと口を出されると「親の躾がなっていない」と義両親を責める気持ちにもなるでしょう。

相手の良いところを見ようとしているのだけど、どうにも気に障る。生理的に受け付けない。でも、夫にとっては大事な親なので、友だちに愚痴るようには不満を吐き出せない。嫌いだなんて口が裂けても言えない。そういう葛藤を知ってか知らずか「オレの親なんだから、うまくやれるはずだよね♪」という態度。脳天気さにムカつきつつ「いいご両親よね」なんて、心にもないことを言ってしまう。

これでは気持ちが病んでしまいます。



処方箋その1)夫と義両親は別物だと考えよ

家族

「親しき仲にも礼儀あり」をお互いに意識することが、家族関係をうまくいかせるコツです

当たり前の話ですが、夫と義両親は別人です。親子とはいえ、育ってきた環境も時代も違う。同じ親に育てられたきょうだいでも個性が全く違っていたり、仲が悪かったりすることは珍しくありません。

確かに夫が義両親から受け継いだ価値観もあるでしょう。しかし、親に言われた通りに育つ人など、ごく一部。ほとんどの人は両親への反抗を経て、親の良い部分と悪い部分を冷静に見ることができるようになります。

なので、義両親と似ている夫にイラッとするなら、それは「義両親の価値観を受け継ぐ選択をした夫」に不満を持っているのです。家族のルールや子育ての方針は、夫婦で話し合い、すり合わせをしながら決めていきましょう。


処方箋その2)幻想から自由になるべし

「家族はこうあらねば」「家族とはこういうもの」というのは幻想です。また「大好きな夫の親だから、うまくやれるはず」にも、全く根拠はありません。あなたの親友の友だちと、あなたが仲良くなれるかというと、そうとは限りませんよね。「家族」は、それぞれに違った性格を持つ「ユニット」であり、「ユニット」同士の相性も当然あります。ひとくくりに見るのはやめましょう。

夫は自分が選んだけれど、義両親は「ついでに」ついてきたもの。うまくいかなくて当たり前。アタリが出ればラッキー、くらいに考えていれば、気持ちが楽になります

しかし、中には「夫を産み育ててくれた人たちだから、感謝しなければ」などと思い、自分を追い込んでしまう人もいます。しかし、義両親はあなたのために夫を生み育てたのではありません。ですから、それに感謝する必要はありません。

今、親として夫にしてくれていること、自分たち夫婦にしてくれていること、子どもたちにしてくれていること、この三つに素直に感謝できれば十分です。


処方箋その3)変化の時には、波風は立つものと心得よ

義両親との関係に息切れしてしまったママは、「距離」と「時間」を味方につけましょう。
関係が煮詰まるときには、多くの場合、距離が近すぎるか、顔を合わせている時間が長すぎます。

夫の実家から少し遠いところへ引っ越したり、子どもの成長を理由に顔を合わせる時間を減らせば、ほどよい関係に落ち着くことがあります。

義両親に無理して合わせてきたママの場合、相手はあなたとの関係が良好だと思い込んでいます。そういう相手から距離を取るのは「NO」を突きつけるようで腰が引けるかもしれません。

しかし、子どもの成長に最も大切なのは、親の気持ちの安定です。あなたがベストな状態で子育てをしていくのに必要だと思うなら、変化を起こしましょう。

その場合、態度でほのめかすよりも「家族で過ごす時間を増やしたいので、ここへ来る回数を減らしてほしい」とか「私たちなりに子育てを頑張っているので、しばらく見守ってほしい」など、相手の気持ちを思いやりつつ、はっきりと伝えた方が、後々禍根を残さずに済むようです。

物事が変化する時には、波風は立つものです。ある意味、子育ては波風の連続。恐るるに足りず。

健闘を祈ります。

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