風営法とは何か?

風営法の改正によって、日本のナイトライフはどう変わるのかを解説する。

風営法の改正によって、日本のナイトシーンはどう変わるのかを解説する。

風営法と聞くと、何やらいかがわしいものを規制する法律というイメージを持たれるかもしれない。様々な遊びが存在する社会では、たしかにいかがわしいものがあるもの事実。

しかしこの法律の考え方は、無闇やたらに人間の嗜好や楽しみを禁止するのではなく、一定の基準を設けてその範囲内で許可し、生活の潤滑油としてもらおうというものである。

しかしいつの時代も行きすぎは起きる。その結果、法律も厳しくならざるを得なくなる。風営法はまさにそんな歴史をもつ法律の一つだ。

今回は2016年6月23日から始まる風営法の一部改正について解説をするが、法律の話は厳格にすればするほど難解になり、何のことを言っているのかわからなくなる。よって細かい法律論はこの際いっさいやめることとし、私たち一般人に関係する点に絞って何がどう変わるのかをお話ししたい。

今回の風営法改正で大きく変わるのが主に2点。

1つは客にダンスをさせる営業についての規制の変更。もう1つが16歳以下の少年に対するゲームセンターへの立ち入りに関する緩和である。


そもそも、なぜダンスが規制の対象だったのか?

ダンスと聞いて、20~30代の人は現在あるクラブを想像するかもしれないし、あるいは駅前の広場で若者が練習しているようなダンスを思い浮かべるかもしれない。40歳以降の人はバブル時代に流行したディスコを思い浮かべるかもしれないし、なかには社交ダンスを行うダンスホールを思い浮かべるかもしれない。

このようにダンスといっても世代や人によって概念はまちまちで、日本の法律にも何を指してダンスというかというきちんとした定義がない

そんなダンスは、改正される前の風営法(旧風営法)で「客にダンスをさせる営業」として規制の対象になっていた。

ダンスをさせる営業を種別で見ると、「ダンス・飲食・接待」がセットの1号(キャバレー、キャバクラなど)、「ダンス・飲食」を提供する2号(クラブ/ディスコはこれにあたる)、「ダンス」のみを行う3号(ダンスホール)に分けられていた。

このうち、3号のダンスホールで行われるダンスとは主に競技としての社交ダンスであり風俗営業とはかけ離れている。それにも関わらず風営法の規制対象になっていた背景には一つの事情があった。


戦後に売春の温床となった名残り

敗戦後の日本では、東京を中心にいわゆるナイトクラブが多数生まれた。そこでは接客を伴う飲食に加えダンスが行われるのが通例だったが、それは単にダンスを楽しむのではなく、ダンスという名目で互いの相性を確認し、売春の交渉をする場でもあった。古い映画にもそうしたシーンが登場するので、見たことがある人もいるだろう。

こうしてダンスは売春の温床となっていったのだが、時は戦後の混乱期である。売春をきっかけにどんな犯罪に発展するかもわからない。そこで時の政府によりダンスは規制の対象とされることとなった。昭和23年、風営法の制定である。それが60年以上たった今まで続いていたというわけだ。

これを行政の怠慢と一口に言うのは簡単だが、今まで改正が行われなかったことは、それだけ当時は売春の温床として深刻だったことを意味している。


ダンスに関わる営業の今後

改正風営法が施行され、ダンスに関わる営業は下記のように分けられる。

1)ダンスホールは風営法の規制対象から除外。これまでの規制から完全に自由になる。
2)キャバレーやキャバクラは従来通り「風俗営業」。
3)照明が暗い(10ルクス以下)のクラブも「風俗営業」。
4)照明が明るい店はアルコールの提供と深夜営業(午前0時~午前6時)の有無で2つに分類される。

深夜営業かつアルコールを出す場合は「特定遊興飲食店営業」、どちらかを満たさないものは「飲食店営業」として、別の法律の管理下に入る。


保護者同伴なら16歳以下もゲームセンター立ち入り可能に

今回の改正のもう一つのポイントが、保護者同伴という条件付きながら16歳以下の少年がゲームセンターへ立ち入り可能になることだ。

風営法は元々青少年の健全な育成のためという目的も持っているため年少者の遊技施設への立ち入りについては厳しい態度を取ってきた。その考え方は改正後も変わりはないが、今回は条件が緩和された。


遊技産業の停滞との関係

理由の一つがゲーム産業をとりまくビジネス環境の悪化だ。少子化の影響もあり、ゲーム産業は近年期厳しいビジネスを強いられているところにデフレが加わり、子どもの小遣いも減っている。

青少年を守るという原則は維持しつつも、そうしたビジネスの状況を踏まえ、保護者同伴であれば許可する方向に舵を切った。わかりやすく言えば“大人の事情”(=業界を助けるため)とも言えるだろう。


立地場所の変化

もう一つの理由もある。ゲーセンの立地環境の変化だ。ゲーセンというと、歌舞伎町や渋谷など、歓楽街にあるものを思い浮かべそうだが、とくに地方都市では大型ショッピングモールなどのテナントとして営業するケースがある。

そうした場所には保護者と一緒に買い物に行く場合が多く、繁華街のゲーセンとは異なり危険や誘惑が少ないため、青少年への悪影響もわずかと考えられるからだ(なお、規制緩和後の詳しい入店許可時間等については都道府県毎の条例によって定められているので、利用者は確認が必要)。


実はカジノ(IR)合法化計画と無関係ではない

ところで、こうした風営法改正の裏にはあまり詳しく報じられない一つの流れがある。それは日本政府がカジノの合法化に向けて社会環境を整備しようとしていることだ。

バドミントンのトップ選手が違法カジノに出入りしていたことで五輪への出場権を剥奪されるなどカジノのイメージはすっかり悪くなっているが、カジノは世界約140ヵ国で合法化されているゲーム。いまだに非合法とされているのは日本を含め、ほんの数えるくらいしかない。

バドミントンの選手が行ったような非合法カジノが存在するのも、合法カジノがないことが理由で、そうした状況を抜本的に改善するためIR型と呼ばれるカジノの導入を日本政府は目指している。

IRとは、カジノゲームにバーやレストラン、ショーなどが複合的に構成された商業リゾートで、Integrated Resortの略称だ。アメリカ合衆国やアジアのIR(カジノ)は365日24時間、年中無休でゲームや飲食が提供されるのは当たり前。カジノフロアでは生バンドの演奏が行われたり、まさにそれに合わせてダンスをする客もいる。
写真はMGMグランドラスベガスのカジノにあるディスコ(クラブ)※松井がカジノの許可を得た上で撮影

写真はMGMグランドラスベガスのカジノにあるディスコ(クラブ)※松井がカジノの許可を得た上で撮影


日本政府がアメリカ型IR(カジノ)の導入を想定する以上、他国で当たり前のように行われている営業方法を可能にするための地ならしを前もってしておくことが必要だ。

とりわけIRは他国との客の奪い合いになるため、より一層自由度の高い運用が求められる。IRは24時間営業が当たり前なのだから、法律が深夜営業を禁止するなどもってのほか。

今後起きる法改正などは、それを踏まえた環境整備の一貫であることは頭の片隅に入れておきたい。

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