ベルルスコーニ氏が大動脈弁閉鎖不全症のために心臓手術
元イタリア首相で、サッカーのACミランを育てた元会長でもあるベルルスコーニ氏が、大動脈弁閉鎖不全症で危険な状態だと報じられたイタリア。6月14日に無事に手術が終わられたそうです
以下は毎日新聞電子版からの引用です。
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*****************************ベルルスコーニ氏が心臓手術…政局流動化の兆し
毎日新聞2016年6月14日 20時36分(最終更新 6月14日 21時40分)
【ローマ福島良典】イタリアのベルルスコーニ元首相(79)が14日、北部ミラノの病院で心臓手術を受けた。20年以上、イタリア政治をけん引してきたカリスマの入院・手術で、同国政局は流動化の兆しを見せ始めている。後継指導者の名前も取りざたされ、「ベルルスコーニ後の時代の幕開け」(イタリア紙スタンパ)との見方も浮上している。
心臓外科の名医とされるオッタビオ・アルフィエリ医師が執刀。約4時間の手術で、機能不全になっている大動脈弁を切除し、ブタの弁から作られた人工弁に置き換えた。手術後、約1カ月間のリハビリ期間が必要。(後略)
当初は大動脈弁の重度の機能不全と報じられていましたが、その後、大動脈弁閉鎖不全症と判明しました。
大動脈弁閉鎖不全症とは
赤い矢印が大動脈弁閉鎖不全症のときの血液の逆流を示します
そうした悪い状態が続いたり、逆流量がとくに多いなどの悪条件が重なり重症になると、その負担が過大になります。心臓が大きくなり、「心筋」という心臓の筋肉(クルマでいえばエンジンに相当する部分)が伸びきって変性して衰弱してしまうことがあります。
命にかかわる危険な状態だったと報じられたのはなぜか
大動脈弁閉鎖不全症は強い心不全を起こすことがあります
あるいは心臓とくに左心室が伸び切って丸くなり、形がくずれて左心室の入り口にある僧帽弁まで逆流する機能性僧帽弁閉鎖不全症が合併した可能性もあります。
こうなると心不全が加速し危険な状態になります。幸い病院での治療が功を奏し、その危険な状態は脱したようですが。
大動脈弁閉鎖不全症の原因・なぜ起こるのか
いくつかの可能性があり同じ大動脈弁でも三尖と二尖では性質も病気の起こり方も異なります
弁尖が2枚の二尖弁の場合は弁尖が年齢とともに壊れて逆流したり、大動脈の付け根が広がって弁尖が不足することで逆流になることもあります。
大動脈弁閉鎖不全症の治療法
生体弁のいろいろです
機械弁の場合はワーファリンという血栓予防のお薬を一生飲み続ける必要があり、そのために原則毎月血液検査を受けて薬の量を調節しなければならないため、機械弁を避けて生体弁を希望する患者さんが増えました。
TAVIに使う折りたたみ生体弁の一例です
上記の二尖弁での大動脈弁閉鎖不全症では10代~30代などの若い患者さんが手術を受けられることもあります。その場合は生体弁では人生に何度も再手術またはTAVIを受ける必要があり、危険性が増える恐れがあるため、弁形成術で対処する専門施設が増えつつあります。大動脈弁形成術は高度な技術と豊かな経験が必要なためまだ一般的ではありません。
手術後はもとの生活に戻れるのか
元気な生活に戻ることが手術の目標です。重症患者さんではそのために工夫が必要なことも多々あります。
手術したアルフィエリ先生は腕利きの素晴らしい方で、著者も昔から交流があり、心機能を考えた手術をされたのではないかと期待しています。私たちの経験でも心機能が普通の半分以下に低下した患者さんでも手術の工夫によって正常レベルまで回復することが多いため、あながち希望がないわけではないと著者個人は思っています。
大動脈弁閉鎖不全症では病気がゆっくりと進行する場合などに、意外に症状がはっきりしない場合があります。少なくともじっとしていれば苦しくないという程度のことはよくあります。そしてじっとしていても苦しいというレベルに達したとき、心臓の筋肉はすでにもとに戻れないほど壊れていることがあるのです。これがこの病気の怖いところです。
心臓手術のタイミングは? 治療のガイドライン
こうした手遅れや、逆に早すぎる、つまり無駄のある手術を避けるために、学会がガイドラインを造っています。これを参照すれば多くの場合、適切なタイミングで患者さんにもっとも益する手術が可能となります。いつのまにか心臓の筋肉が壊れてだめになってしまったという場合も専門医と相談したり、セカンドオピニオンをもらったりすると可能性が広がることがあります。
ベルルスコーニさんが早く回復し元気に仕事やサッカーなどの支援活動を回復されることを祈ります。
参考サイト: 心臓外科手術情報WEBの弁膜症のページ