子供の折れない心を育む「自分への思いやり」
自分に対し「思いやり」を向けることが「困難を跳ね返す力」を高めます。
「自分を思いやる」ことが「ネガティブな感情」を和らげる
デューク大学教授マーク・ラーリー氏率いる研究では、被験者に、以下のような「難しい状況」を体験してもらいます。・ネガティブな体験を思い出す
・ネガティブなシナリオを想像する
・他者から辛らつなフィードバックを受け取る
・自身のタスクへの評価と同じタスクに取り組む他者の評価を比較する
すると、「自分を思いやる」気持ちをより持っていた人の方が、記憶、想像、現実面すべてにおいて、ネガティブな感情を持つことが少なく、「困難を跳ね返す」ことができたといいます。しかも、ネガティブな出来事での自らの責任を、より受け入れる姿勢が見られたと報告されています。また、これまで、「困難を跳ね返す力」の源とされてきた「自己肯定感」が、たとえ低い人であっても、「自分を思いやる」気持ちを持つことで、「自己肯定感」が高い人と同じような対応ができたというのです。
「自己批判」VS「自分への思いやり」
失敗や間違いへの「批判」は、時に相手を改善へと奮い立たせます。ところが、思いやりのない過度の批判は、長い目で見るならば、逆効果であると分かっています。例えば、ピアノの発表会で、子供が大きなミスをしたとします。発表会が終わり、しょんぼりした様子のその子に対し、「思いやりのない厳しい批判」と「思いやりをこめた対応」といった異なる態度で、向き合ってみると想像してください。思いやりのない厳しい批判:
睨み付け、こう言い放ちます。「何してるの! あれだけ練習したのにこんな間違え方するなんて、あなたってどうしようもないわね。先が思いやられるわ!」
その子はどう感じるでしょうか? 一時、「頑張らなくては」と思うかもしれません。それでも長い目で見るならば、やる気も萎え、自信を失い、しだいにピアノが嫌いになっていくのではないでしょうか。
思いやりをこめた対応:
まずは、「残念だったね」といいながら、抱きしめてやります。そして、「これまで練習頑張ったきたの、本当に偉かったね。誰でも、たくさん練習したって、間違えることはある。ぞして失敗のたびに、少しずつ上手になっていくのよ。今度頑張ろうね」と声をかけてやります。
その子は、しばらく落ち込んだとしても、次第に「また頑張ってみようかな」という気持ちを湧き上がらせ、ピアノに取り組み続けていくとは思いませんか。
「自分を思いやる」メソッドでは、こうした態度の違いとは、自分が自分に対して向き合う際も、同じような結果を生み出すと考えます。難しい状況に出合った時、自分に対し、「何やってんだ! お前はどうしようもないよね。こんなんじゃ何やってもだめだよ」と言い放つか。それとも、「ああ、痛い失敗だったね。でも、誰だって失敗はするもの。大丈夫。失敗から学んで、今度頑張ろう」と言葉をかけるか。自分自身への「思いやりのない厳しい批判」は、立ち上がる気持ちを萎えさせ、進み続けることを妨げてしまいます。
>>>次のページでは、「自分への思いやり」を構成する「3つの要素」と、それらの要素をどう培っていくことができるかをみていきましょう。