新型アウディA4の登場で出揃ったDセグメント
8年ぶりにフルモデルチェンジを受けて新型に移行した新型アウディA4。ライバルはメルセデス・ベンツCクラス、BMW3シリーズの2台が筆頭で、ドイツのプレミアム御三家とも言われているこの3台が好敵手として語られることが多い。
ほかにも、ジャガーXEやレクサスIS、日産スカイライン(インフィニティ)といったモデルも含めて比較検討することが多いかもしれない。ここでは、新型アウディA4を中心に、ドイツ3台のプレミアムDセグメントの最新事情も含めてご紹介したい。
アウディA4は、エンジン縦置きのFF(フロントエンジン、フロントドライブ)と4WDのクワトロを設定しているが、エンジンを縦置きしてその後にトランスミッション、デフを配置すると、どうしてもフロントのオーバーハングが長くなってしまう。
当然ながら全長に占めるフロントオーバーハングの割合が長くなり、さらにライバルと遜色のない、あるいは上回る室内空間とトランク容量も確保するとなると、全長も長くならざるを得ない。ドイツ本国ではボディサイズの拡大に寛容なのか、あるいは小さなセダンはA3セダンがあるからなのか、新型A4の見た目はでかい(長い)! というのが正直なところ。
新型A4はライバルよりかなり大きめ
全長4735×全幅1840×全高1430mmというA4セダンのボディサイズは、Cクラスセダンの全長4690×全幅1810×全高1435mmと比べると、45mm長く、30mmワイド。
3台の中で最もコンパクトな3シリーズセダンの全長4540×全幅1800×全高1425mmと比べると、A4は195mmも長く、全幅も40mmワイドになっている。A4はライバルよりも大きめのボディサイズが特徴でもあったが、新型でもその流れは変わらない。
こうなると、居住性や積載性だけでなく、駐車や取り回しのしやすさ、走りにも大きな差が出てくるのは当然で、新型A4は、1800mm幅制限はもちろん、1850mm幅制限のある駐車場などへの入庫も要確認だろう。こうした幅に制約のある駐車場の場合、3シリーズ、Cクラスは現実的だが、新型A4は日本では駐車場によっては制約が結構出てきそう。
さて、新型A4のパワートレーンは、FFも4WDも2.0Lの直列4気筒DOHCターボ。今回新たにFFにも7速Sトロニックにも用意され、全車にDCT(デュアルクラッチトランスミッション)の7速Sトロニックが組み合わされている。
FF向けは「ミラーサイクル」と呼ばれる燃焼方式に加えて、高い圧縮比、デュアルインジェクション、バルブリフトの組み合わせなどにより190ps/320Nmというスペックでありながら18.4km/LというJC08モード燃費を実現しているのが自慢。さらに、Cd値0.23という空力性能の高さによりDセグメントのガソリンエンジン車としては高い燃費を実現している。
190psのFF仕様でもパワー不足は感じさせない
190ps/320NmのFF仕様は、省燃費系エンジンを搭載していることもありパワー的にはどうかな? という心配もあったが、ほとんど杞憂といえるものだった。7速Sトロニックのスムーズかつダイレクトなシフトフィールに助けられていることもあるし、シャーシを含めてアルミを使っているほか、ホットスタンプといわれる熱間成型鋼鈑パーツによる軽量ハイブリッドボディの効果もあるのだろう。A4単体で乗っている分には、ボディサイズの大きさや重さ(FFは1540kg)は感じさせなかった。
アウディ自慢のフルタイム4WDのクワトロは、252ps/370Nmというスペックで、数値以上の加速感や高速域のパンチ力は、高速道路などで顕著に感じられる。逆に市街地を流れに乗って走る分には、「FFモデルで十分だな」というのが正直なところ。
クワトロの利点は、雪道や林道などだけではなく、雨の高速道路などでも安定感の高さを抱かせるが、普通に走る分には新型A4は燃費も良いFF(クワトロとの差はカタログ燃費で約3km/L)も検討したいところだ。
A4で少し気になったのは、FFもクワトロも乗り心地にやや硬さが感じられる点で、A4試乗と同時期にCクラス(PHV)やBMW3シリーズ(ガソリン)に乗っていたが、ライバルと比べても運転席に伝わる振動は大きめだった。
A4の美点と課題とは?
逆に朗報は、運転席の左足付近の圧迫感がほぼ解消されたのと、先代A4の妙に軽い感触のパワステから一転してしっかりとした手応えになった点だろう。さらに、室内も広くなり、前席の頭上空間、後席の足元ともにライバル、とくに後席の足元空間はBMW3シリーズよりも余裕がある。身長180cmの人が4人座っても窮屈感のないのがA4の美点と言えそうだ。
トランク容量はA4が480L、Cクラスが445L、3シリーズが480Lで、とくにコンパクトなCクラスが健闘している。A4はスクエアで荷物も積載しやすそうだ。後席は「4:2:4」の分割可倒式で、ニーズに応じてアレンジできる。
また、A4には最後発モデルらしく最新のドライバーインターフェイスとしてアウディTTに続いて「アウディバーチャルコクピット」が設定されている。メーターにナビ画面を表示させれば中央のモニターを確認する必要はほとんど感じさせず、MMIと呼ばれる操作系も新しくなり、使いたい機能はほとんど浅い階層から呼び出せるので、ライバルと比べても操作感は上々だ。
Cクラス、3シリーズの魅力とは?
写真はPHVのC 350 e。やや重さを感じさせるが、Cクラスらしい乗り心地とハンドリングのバランスの良さが光る。EVモードの走行に加えて、ハイブリッド走行時にはパワフルな加速が味わえる。707万円という価格をどう見るかだろうが、完成度は高い
さて、ライバルの魅力も紹介すると、Cクラスは乗り心地と操縦安定性のバランスに秀でていて、3シリーズとは感触は違うが想像するよりもスポーティな走りを披露してくれる。メルセデス・ベンツが使う「アジリティ(俊敏性)」というキーワードに偽りはない。
ただし、PHVモデルのC350eはバッテリーなど重量物の追加で、とくにガソリン仕様で顕著に感じられる軽快感は薄らいでいる。それでもこうした電動化(PHV)モデルの割にはフットワークも良く、乗り心地への影響も抑制されている印象だ。ほかにも精度の高いACC(アダプティブクルーズコントロール)やレーンキープなどの先進安全装備の仕上がりの高さも印象的だ。
BMW3シリーズは、このクラスではフットワークの良さで抜きんでている。低速域でもそれこそ交差点ひとつ曲がるだけで、ドライバーとの一体感を抱かせるし、曲がりくねった高速道路や山岳路を走らせるのもワクワク感じさせる。
2015年9月にマイナーチェンジを受けたBMW3シリーズ。新開発の直列6気筒モデルの設定やエンジンの改良などにより、エンジンのパワー感、ハンドリングともにDセグメントの中でもステアリングを握る楽しさは頭一つ抜け出ている
一方で、その味付けは人によってはやや人工的なものに思えるだろうし、つまり好みになってしまうが、実際のボディサイズの小ささも相まって、このクラスにスポーティなハンドリングを求めるなら選択肢の筆頭に挙げたい。
ドイツプレミアム御三家は、以前から三者三様の魅力があるのは周知の事実だろう。そこにジャガーXEやレクサスISなどの違う選択肢も加わっているほか、PHVやディーゼルなど多彩なパワートレーンの選択肢まで揃いつつある。同じモデルでも仕上がりの味わいは思いのほか異なるだけに、どういったニーズがあるのかを自分でしっかり把握しておくことがさらに大切になってきているようだ。