「泣くツボ」と「笑うツボ」、どっちが一致すればいい?
一緒に泣けて、一緒に笑える。どちらが重要なのか?
恋人と価値観が一緒のほうがうまくいくと世間では言われているが、「価値観」というあやふやなものの基準をどう見極めればいいのかはわかりづらいもの。子どもや年寄りに優しくできるか、世間一般の道徳観を持っているか……そんなことはクリアしていても、気が合うとは限らない。
そこでひとつの判断基準となるのが、「泣くツボ」と「笑うツボ」だ。いったい、どちらが一致しているほうがうまくいくのだろう。
「泣くツボ」が一致したと思ったけれど……
価値観の見極めに、感情のツボを重視する人は多いが、彼の「泣くツボ」で別のことに気がついてしまうケースも。
「学生時代、バイト先で正社員の人に告白されて、つきあうようになったんです。彼と映画を観に行ったとき、私がうるうる来たところで彼も鼻をすすってた。単純に同情を引くようなシーンではあったんだけど、そこで素直に泣いちゃう彼って、きっといい人なんだろうなと思ったんです」
ナツコさん(32歳)はかつての彼を、そう顧みた。6歳年上の彼とは、その後、1年ほどつきあったのだが、結局、うまくいかずに別れた。
「泣くツボは一緒だったんだけど、喜ぶツボ、つまり笑うところが一緒じゃなかったんですよね。それがきつかった。たとえば彼の仲良しの同期が出世したとき、彼は目に涙をためてものすごく悔しがってた。この人、どうして人のために喜んであげられないんだろうって思って。私が就職活動を始めたときも、自分が勤めている会社より小さいところを勧めたりするんですよ。器の小さいヤツだなと思ってしまい、就活を理由に別れました」
友だちのために喜べず、悔し涙を浮かべた彼の気持ちもわからなくはない。だがそこに、女性は「器の小ささ」を見てしまう。
そもそも、かつて「男たるものは泣いてはいけない」と思われていた。スポーツ選手だって、今ほど泣いたりしなかった。時代が変わった今、もちろん、男が泣いてはいけないとは思わない。男性たちにとっては、我慢しなくてよくなったのはいいことかもしれない。
「つきあっているとき、彼の涙は何度か見ましたが、だんだん、『こういうことで泣いているオレっていいやつだろ』って訴えかけているみたいに見えてきて……。もちろん、それだけが原因じゃないし、ストレートに心打たれて泣くタイプの人みんながあざとい人間ってわけじゃないとは思います。たぶん、彼のことがだんだん信頼できなくなって、好きではなくなっていく経過の中で、彼の『いい人に思われたい』気持ちが見えてきて、ますます嫌になっていったんでしょうね」
ナツコさんはそう言う。と同時に、泣くツボが一緒だったからいい人に違いない、合うはずだと思い込んだ自分にも腹が立ったそうだ。
一般的に言って、女は共感や同情で泣き、男は感動で泣きがちではある。男のほうが客観的にものを見るクセがついているからだろうか。だからこそ、女性は涙しやすく、男性は泣くことが少ないのかもしれない。だが、逆に男があまりにありふれたことで泣くのを見ると、女としては「そんなことで?」と共感しづらくなってしまうのかもしれない。
一緒に笑って暮らしたいから、笑うツボが一緒のほうがいい
同じものが好き、同じことで笑えるということは、一緒に人生を楽しめるということかもしれない。
「子どもの頃から、母親に『笑うツボが一緒の人と結婚したほうが楽しいよ』と言われていたので、恋人を選ぶときもそうしてきました。それに泣くツボって、個人の苦労とかトラウマとかが関係してくるような気がして、共有が難しいと思う」
イズミさん(34歳)は、現在、一緒に住んでいる同い年の彼とも、笑うツボが一緒だという。
「私は少しブラックなものが好き。お笑いも、今どきのものより昭和の漫才ブームのほうがおもしろいと思うし、ダジャレも好き。彼もそうなんですよね。お互いに落語も好きで、よく一緒に観にいきます。笑うところが同じだと、ああ、この人と感性が似てるんだってうれしくなる。そもそも笑いのツボが違う彼だったら、一緒に落語なんて行けないですけど(笑)」
一方で、泣くツボはまったく違うらしい。
「彼は自分がサッカーをやっていたせいもあって、スポーツを観て泣きますね。気持ちはわかるけど、私は泣けない。動物もので泣くのは私。彼は泣かないけど、やはり気持ちはわかるって言ってる。だから、どこで泣くかは一致しなくてもそれほど気にならないですね。どこで笑うかのほうがやはり重要だと思う。なぜなら、彼と一緒に笑って生きていきたいから」
イズミさんの最後の言葉こそが、重要なのかもしれない。一緒に泣きながら生きていきたいわけではない。一緒に笑いながら生きていきたい。だからこそ、笑うツボのほうが大事なのだろう。
また、もしかしたら泣くツボより笑うツボのほうが、幅が広いのかもしれない。だからこそ楽しさを共有しやすく、さらにその中で細かいポイントが合うと、より感性が近いと感じられるのではないだろうか。
一概には言えないことばかりではあるが、「泣くツボ」と「笑うツボ」、彼と自分はどちらがより合っているのか、合わないとしても許容できる範囲なのか、一度考えてみてもいいのかもしれない。