球団の高卒ルーキーでは初の開幕戦出場、そして……
プロ野球は3月25日、セ、パ両リーグで開幕したが、その中でとくに注目を集めたのが、楽天のオコエだった。12球団の高卒新人で唯一の開幕一軍。もちろん、球団としても史上初だ。しかも、梨田監督は「せっかくだから、本拠地デビューをさせてあげたい。東北のファンにお披露目できれば」と明言。スタメンではないものの、代走や守備固めでのデビューが濃厚となっていた。
その指揮官の“公約”通り、25日のソフトバンクとの開幕戦、七回に代走でプロデビュー。球団の高卒ルーキーでは初の開幕戦出場。「緊張はしなかった。オープン戦から変わらない緊張感でやっているので」と言ったオコエだが、26日の第2戦では、地元コボスタ宮城を埋めたファンのボルテージの高さに、そうも言っていられなくなる。
その第2戦は2点ビハインドの八回、代打で四球を選んだ枡田に代わって登場したオコエ。続く岡島の遊ゴロで二塁封殺となったが、九回からプロ初のセンターの守備に就き、2度の守備機会を無難にさばいて大きな拍手を受けた。
大観衆を興奮させたメモリアルな初盗塁
しかし、2万5102人の観衆を最も興奮させたのは、延長十回だった。一死後のプロ初打席はバリオスから四球を選び出塁。そして、5度の牽制球の末、4球目にプロ初盗塁を決めたのだ。この盗塁がただものではなかった。「今までのままならアウトだったと思います」と本人が言う通り、高校時代とは違い、曲線を描いていた走路を一直線にし、しかも、ベースの近くで突き刺すような走塁だ。これこそ50メートル5秒9の俊足をさらに活かすプロ仕様の走りだった。キャンプ中、米村外野守備走塁コーチと取り組んだ技術の結晶でもあった。この盗塁はまたメモリアルでもあった。高卒新人の盗塁は、昨年の浅間(日本ハム=4盗塁)と岡本(巨人=2盗塁)以来だが、初盗塁は浅間が5月5日、岡本は9月19日。開幕カードで盗塁を決めた高卒新人は、1952年の中西(西鉄)が開幕2試合目の3月23日近鉄戦で記録して以来、64年ぶり。ドラフト制後(1966年以降)では、オコエが初めての快挙となる。
27日の第3戦も延長十回に初めて代打で出場し、プロ初三振(空振り)を喫したオコエ。いずれにしても、初の一軍シーズンで開幕3連戦の全てに途中出場を果たした。しかも、地元コボスタ宮城のファンを最も沸かしたことは確か。「一軍で学べることは多い。少しでも長くいて、勉強したい」と燃えるスター候補生は、プロの第一歩を力強く踏み出した。