年を重ねると臓器としてのペニスが衰えるばかりでなく、ホルモン分泌の環境が変わったり、さまざまな危険因子が増えたりすることが悪さをすると考えられているからです。
加齢がEDを招くなら、加齢に対抗(=アンチエイジング)するように心がければEDを遠ざけることができるという理屈が成り立ちます。そのためにはどんなことに気をつければよいのでしょうか。
今回は、アンチエイジングの中でも、EDに深く関わる血管機能という視点から、心身共にいつまでも若々しく過ごすための方法を考えてみたいと思います。
加齢に伴って上昇するEDの有病率
また、わが国の企業従事者とその家族に対する調査でも加齢によるEDの有病率の上昇が見られました。さらに、慢性疾患で通院中の患者4609人と2084人の人間ドックのデータを解析した調べでも同様の結果でした。
やや専門的になりますが、加齢に伴う動脈硬化で流入動脈血流量が低下したり、陰茎海綿体白膜の弾性線維が減少したりする組織学的変化がEDを招く原因の一つと考えられています。その結果起きる静脈流出系の閉鎖機能の低下や血清男性ホルモン濃度の低下なども引き金になるとされています。
勃起のメカニズムに不可欠なNOの存在
では、EDを遠ざけるためのアンチエイジングにはどのような方法があるのでしょうか。結論を先に言えば、NO(一酸化窒素)の分泌を増やすのが得策です。男性であれば誰でも実体験として分かるように、勃起は大量の血液がペニスに流れ込み、海綿体が充血することによって起こります。しかし、ふだんはペニスの筋肉が緊張しているので血液が海綿体に流入しにくくなっています。
ところが、なんらかの原因で性的な刺激が加わると神経からNOが分泌されます。NOにはペニスの海綿体の筋肉を短時間で緩める作用があります。筋肉の緊張が解けると血管も緩むので一気に血液が流れ込みます。
同時に血管の内側を裏打ちする内皮細胞からも大量のNOが出て勃起を後押しします。逆に、NOが足りないと筋肉も血管も十分に緩められないので勃起しにくくなるのです。
ほとんどの生活習慣病に関わるNO不足
NOの低下や不足が招く障害は勃起だけではありません。生活習慣病のほとんどや高血圧、うつ病、頻尿、不眠、記憶力の低下などにもNOが関わっています。これらの病気や症状は血管の老化で起こります。例えば、脳卒中や心筋梗塞を招く動脈硬化は血管内皮から分泌されるNOの量が減ることで起こります。その影響が最も細いペニスの血管に表れるのがEDです。EDは最初に気づける動脈硬化ですから「脳卒中や心筋梗塞の水先案内人」とも呼ばれます。
高血圧は緩みにくくなった血管に血液を送るために心臓からの圧力が高まることで起こります。うつ病は脳神経の連携がうまくいかなくなることで起こりやすくなります。どちらにもNO不足が影を落としています。
このように、NOが勃起にとって重要な役割を果たしている物質であることはお分かりいただけたと思います。その最も大切なはたらきは「血管を広げること」です。
男のアンチエイジングはNOを増やすこと
NOを増やす=血管を健康に保つためには特別な手立てを講ずる必要はありません。禁煙を含む規則正しい生活を心がけ、偏りのない食生活と適度な運動を続けていれば、道は自ずと開けてくるはずです。
実際、ED治療薬はいずれも、NOが体内でよりはたらきやすくなるようにして結果的に勃起を助ける役割を担っています。これらの薬が『ガイドライン』でED治療の第一選択とされているのは手軽で安全に利用でき、高い割合で効果が認められている点にあります。
近年は単なるED治療というより、治療によってもたらされる生活の質の向上に対する効果も認められています。気になることがあれば、主治医や専門のクリニック、病院などに相談することをお勧めします。
>>女性が望む「よりよい性生活」とは