シンプルでやさしい味わいの「パティスリー アンフィーユ2016」の菓子
前のページでは、「ホテル西洋銀座」に源流を持つ「パティスリー アンフィーユ2016」の代表作と言うべき品を紹介しましたが、生菓子は約25種類ほど並ぶそうで、季節限定品なども含め、他にもお勧めしたい品が揃います。さらに、個性が感じられる焼き菓子にも注目です。
外せない定番のケーキの一つ「ショートケーキ」は通年で販売。一方、苺を使ったフランス菓子として知られる「フレジェ」は、苺をたっぷりゴロゴロと使うため、苺の美味しい季節限定にしたいそうで、3月末頃までの販売を予定しているそうです。
「ショートケーキ」は、「ホテル西洋銀座」の作り方を継承していますが、使用する生クリームなどは、より食べやすく軽やかな味や食感を追求して選んでいます。最近は、お子様を意識してお菓子にお酒を使わないというお店もありますが、浦野シェフのお菓子は、必要最小限のお酒を使うことで、素材の持ち味をよりしっかりと引き出す、クラシックなフランス菓子の魅力を反映しています。ショートケーキにも、ごくほんのりと、お酒とは感じられない程度にキルシュを加えたシロップを生地に打っているそう。今後、地元の苺農家さんと契約して、“地産地消”で、より新鮮な苺を使えるようにもしていきたいといったことも考えていらっしゃるそうです。
一方、「フレジェ」は、実にコクがあり濃厚!多くの場合、フレジェのクリームには、ムースリーヌと呼ばれる、カスタードクリームとバタークリームなどを合わせて軽くしたものを使うことが多いのですが、実は「ホテル西洋銀座」のフレジェは、100%バタークリームというレシピが伝統的なスタイル。浦野シェフもこれを踏襲して、バニラが香る濃厚なバタークリームのみを使用。キルシュを加えて、甘さの中にキレのよさを出し、ゴロゴロと丸ごと苺を贅沢に並べて、甘さと酸味とのメリハリある対比が楽しめるように仕上げています。それぞれ個性ある苺のケーキなので、冬から春にかけて2種類とも揃う時期には、両方を食べ比べてみるのも楽しいですね。
チョコレート系が好きな方にお勧めしたいのは「キャラメルショコラ」。パートシュクレ土台の中に、薄くチョコレートを塗り、チョコレートスポンジを敷いた上に、サクサクしたフィヤンティーヌと、アーモンドプラリネ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオなどのナッツ類を刻んで合わせたものを挟み、塩キャラメル味のムース、チョコレートムースを重ねています。チョコレートには、「ホテル西洋銀座」の頃から気に入って使っていた、エクアドル産のオーガニックカカオ使用の70%カカオ分チョコレートを使用。上にのせた飾りはキャラメリゼしたアーモンドとキャラメル味の生クリーム。周囲にまとわせた細かいクランブル生地には、ほのかにシナモンの香りが効いています。キャラメルとショコラとナッツ、シナモンという相性のいい王道の組み合わせです。
この他、クラシックな定番のチョコレートケーキ「オペラ」(税別400円)もあり、こちらは、敢えてお酒を使わず、豆から淹れたコーヒーをシロップに使い、すっきりと香り高く仕立てています。
黄色が目を引く「エキゾチック」は、チョコレート入りでしっとり焼き上げたビスキュイにバナナピューレを打ってしみ込ませ、上に、マンゴー果肉入りのエキゾチックフルーツのムースと、ホワイトチョコレートとマスカルポーネの真っ白なムース、仕上げにマンゴー味のグラッサージュがけのケーキです。
他にも、季節限定で、「3月の桃の節句に合わせて出したかった」という「ペッシュヴィーニュ」(税別420円)は、まさに桃の花のような鮮やかなピンク色が印象的なケーキ。ココアスポンジの上に、フロマージュブランのムース、刻んだ黄桃の果実入りのジュレのような桃のクーリーを重ね、一番上がフランスではおなじみの赤桃のピューレを使ってシブースト仕立てにしたふわふわ食感の層です。
もちろん、定番中の定番である「シュー・ア・ラ・クレーム」(税別250円)や「エクレア」(税別280円)、「なめらかプリン」(税別300円)といったお菓子も手頃な価格で登場するので、差し入れや日々のおやつとして喜ばれそうです。
焼き菓子も、定番のフィナンシェやマドレーヌ、筒型容器に入ったクッキー類など、色々と揃います。フルーツケーキなどのパウンドケーキ類には、「ホテル西洋銀座」でも定番人気品だったパティスリーらしい配合の「カステラ」(1カット税別200円、ホール1本税別1,000円)や、抹茶のグリーンの生地にセミドライ杏を刻み入れた色鮮やかな一品「抹茶杏パウンド」(1カット税別210円、ホール1本税別1,100円)も。
実は「よもぎ」は、「西洋銀座」時代から、ロングセラー人気品の「銀座マカロン」に季節限定で使っていらした素材。ホテル伝統の味に、桜や和栗、ショコラなど、季節ごとの素材を採り入れてアレンジしていらしたのは浦野シェフのアイディアでした。
そんな自由な発想を持つ浦野シェフの焼き菓子の中でも、特に面白いのは、黒胡麻とアーモンドスライスとライスパフを押し固めたような「バトン・リ」(税別400円)で、まるで「おこし」を思わせる一品。クッキー類にも、周囲に白胡麻をまぶした「よもぎクッキー」(税別400円)があって、注目です。
淡いアイスカラーのグリーンがアクセントの美しい箱入りギフトの中に詰め合わせたら、目を引きそうですね。私は、これも又「西洋銀座」から継承された味である、「ジンジャー」の自家製コンフィを混ぜ込んだクッキーもお気に入りです。
実は、お店の2階にはカウンター式のキッチンが併設された広いスペースがあります。将来的には、そこを利用してお菓子教室などもやっていけたら……、と浦野シェフ。新たにチャレンジしたいことが、まだまだ沢山おありのようです。「パティスリー アンフィーユ2016」の、今後の展開が楽しみですね。
<ショップデータ>
「パティスリー アンフィーユ2016」
埼玉県さいたま市見沼区御蔵1472-7
電話 048-796-5123
営業時間 10:00-20:00
定休日 火曜(祝祭日の場合変更あり)