男の子育て/イクメン・父親の育児

育休議員辞職をめぐっての関係者コメントに違和感

育休宣言をしていた宮崎謙介議員がこともあろうに、妻の出産入院中に、女性タレントを自宅に招き入れ一夜を過ごしたことがバレ、辞職した件。「イクメン団体関係者(なんじゃそりゃ?)」の中の意見にも「思慮を欠いた」と言わざるを得ない軽率なものが目立つのが気になった。

執筆者:おおた としまさ

宮崎元議員はそもそも「父親」になれるのか?

育休不倫議員の辞任は、これからの育休世論にどう影響するのか?

育休不倫議員の辞任は、これからの育休世論にどう影響するのか?

育休宣言をしていた宮崎謙介議員がこともあろうに、妻の出産入院中に、女性タレントを自宅に招き入れ一夜を過ごしたことがバレ、辞職した件。あんまりにも情けない事件でどこからツッコんでいいのかわからないというのが大方の人の感想だとは思うが、「イクメン団体関係者(なんじゃそりゃ?)」の中の意見にも「思慮を欠いた」と言わざるを得ない軽率なものが目立つのが気になった。

「これでどっぷり育児ができるのでは」というコメントがあった。皮肉をこめたのであろうが、妻である金子議員の気持ちを考えてみてほしい。自分を、そして生まれてきたばかりの子どもを裏切った男に、育児に関わってほしいと思うだろうか。子どもに指一本触れてほしくないと感じていてもおかしくない。それなのに、「議員としての職を失った=どっぷり育児ができる」とするのは、金子議員に対してのデリカシーに欠ける。

宮崎元議員は今、父親としてのスタートラインの遙か遠くにいる。浮気がばれ、仕事まで失って帰ってきたら、普通なら即離婚だろう。「どっぷり育児をがんばって育児がどれだけ大変かを経験すればいい」というようなコメントは、金子議員が「もう一度夫婦をやり直し、家庭を築き上げていきたい」と言ってくれてから初めて成り立つものであるはずだ。時期尚早である。

タイミングを間違えてこのようなコメントが広がれば、世間一般の無意識の中に「出産入院中の浮気がばれても妻から許してもらえて、父親としても認めてもらえるものなんだ」という甘い考えをすり込みかねない。もっと厳しい言い方をすれば、姦通に関して女性に厳しく男性に甘い文化を強化しかねない。「夫婦の信頼と協力に基づく育児」という観点からは向かい風以外の何物でもない。

さらに、「仕事がなくなったからこれで本当に専業主夫になれる」というようなニュアンスのコメントも散見され、世の専業主夫を馬鹿にしているように私には感じられた。専業主夫の多くは、情けない不祥事を起こして仕事を失ったから専業主夫になったのではない。家族のことを考え、その選択が最善だと考えたから、覚悟を決めて専業主夫になったのだ。その意味では専業主婦だって同じだ。それと宮崎元議員の件を一緒にされたら迷惑だろう。「男性の育休」に対するイメージダウンだけでなく、「専業主夫・専業主婦」に対するイメージダウンにもつながりかねない。

男性の育児促進を「ことば遊び」で終わらせてはいけない

「宮崎議員は嫌いになっても、男性育休は嫌いにならないでください」に至っては、もちろん主旨はわかるし、それを否定するつもりはないが、インパクト狙いのことば遊びの趣が強すぎて、うさんくささのほうが印象に残ってしまうように私には感じられる。

「男性の育児」に関しては、「イクメン」を始め、数々の造語が生み出された。ムーブメントを作る手段としてキャッチーなワードが有効であることは理解できる。しかし近頃、言葉が軽くなりすぎていないか。キャッチーなワードを連呼するだけの「お祭り」になり下がってはいないか。だからとっさのときに、つい思慮に欠ける言葉が発せられてしまうのではないか。

宮崎元議員の騒動は、思いがけずそんな状況を浮き彫りにしてしまったような気がする。

男性の育児が大きな注目を浴びるようになってもうだいぶ経つ。しかし男性の育休取得率や育児時間などの指標についてはさほど変化がない。男性の育児に関するメッセージの発し方を今一度精査した方がいいのではないだろうか。

さて、この件に関する現時点でのおおたの意見は下記の通り。

「宮崎議員は自業自得。ただの不倫であれば議員辞職にまでは至らなかったであろう。イクメンのイメージを自己中心的に利用しようとしたことのしっぺ返しを受けたと言える。世の中に対し、そして妻に対し、信頼回復のために何ができるのかを考えてほしい。一方で、心配なのは金子議員。産後は身体的につらいだけでなく、心理的にも不安定になりがち。そんなときに夫が浮気をしていたことを知るだけで計り知れないショックを受けるはずなのに、それが国民的な大騒ぎにまで発展してしまっているのだからなおさら心配。国中の注目が集まる中で、無職の愚かな夫を養う妻としてのロールモデルになるか、国の第一線で働くシングルマザーとしてのロールモデルになるか、どちらかを選ばなければいけない。どちらを選んでも茨の道。ただ、今は、母子が少しでも落ち着きを取り戻せるように、メディアのみなさんは金子議員のことをそっと見守ってあげてください」
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