熟成を重ねるビッグネイキッド カワサキZRX1200DAEG
ZRX1200DAEGは2009年2月1日にリリースされました。ジャパニーズスタンダードネイキッドとして開発されたZRX1200DAEGは伝統的な日本のネイキッドスタイルを採用し、日本人が日本の道を走るように設計されたモデルです。ところでDAEG(ダエグ)とはなんぞや?と思ったユーザーも多いはずです。なぜなら現在カワサキのZRX1200DAEGの紹介ページを見ても掲載されていないからです。
2009年当時のリリースによれば「ダエグ」とは北ヨーロッパの民族で使用されていたルーン文字の一つでラテンアルファベットのDに相当し、「日」「一日」を意味するDAYの語源になったともいわれています。
またルーン文字は近年では占術のツールや護符として採り上げられることも多く、ダエグは「着実な成長」「進捗」「区切り」「終わりと始まり」「打開」「新しい展開」などを意味しています。
ZRX1200DAEGは2009年にリリースされた新しいバイクですが、ZRXシリーズ自体は1990年代からリリースされ続け進化を続けてきたシリーズです。2016年現在では伝統的なネイキッドバイクスタイルよりもストリートファイター系と呼ばれるスタイルが流行している傾向があります。
しかしカワサキのZRX1200DAEGやヤマハXJR1300、ホンダCB1300SFなどビッグネイキッドはラインナップに残っており現在でも人気があるジャンルといえます。
とりわけカワサキZRX1200DAEGは同じ水冷4気筒エンジンを搭載するホンダCB1300SFに比べて車重が軽く、車格も一回り小さいことからスポーティーなライディングを楽しむユーザーも多く、山道などに行くと遭遇率の高いバイクの一台です。
ネイキッドバイクはどのようなシチュエーションであっても、そつなく走ることができる汎用性の高さが求められます。スポーツライディング時の楽しさは折り紙つきの同車ですが、街中の走行ではどうなのか?今回も一週間街中を試乗してインプレッションをお届けしたいと思います。
まずはZRX1200DAEGの装備をチェック
ZRX1200DAEGのアイデンティティといえばフロントヘッドライトにマウントされたビキニカウルです。
社外のビキニカウルと違い、インナーカウルも装着されていてメーターとカウルの間に隙間がありません。デザイン上のアクセントになっているビキニカウルですが高速走行時の風防効果も感じることができました。
ハンドルは最近のバイクにしては狭め。流行のストリートファイター系車両はハンドル幅が広めに設定されているのは、幅の広いハンドルの方が少ない力で操作できることなどからだと思われますが、ZRX1200DAEGはハンドル幅が狭くなっています。
ハンドル幅が狭い影響はほとんど感じられませんが、極低速でコーナーを曲がる際には普段よりも少しハンドルを押さえるのに力が入っている感覚がありました。しかし、見た目的にもハンドル幅が狭い事でシャープな印象になり操舵感とのバランスはとれています。
そしてZRX1200DAEGの装備で特筆すべきはフルアジャスタブルのサスペンションです。プリロード調整に加えて伸び側・縮み側両方の硬さの調整が可能。サスペンションセッティングというと難しい印象を受けるかもしれませんが、リアサスペンションはダイヤルを回すだけでセッティングを変えられますし、フロントサスペンションはマイナスドライバー一本で変更が可能ですのでチャレンジしてみてほしいところ。
サスペンションのセッティングには正解はありません。人によって理想的な乗り味は違うのでチャレンジしてみましょう。一番柔らかい状態と一番硬い上体を両方試してみると車体の動きの違いがわかるのでおすすめです。
ZRX1200DAEGの街中での燃費は実測値で14.82km/Lでした。燃料タンク容量が18Lですので街中でも満タンにすれば計算上266kmはしれることになります。
それではZRX1200DAEGで通勤して街中での試乗インプレッションをお届けします。
ZRX1200DAEGはビッグネイキッドの中ではスポーティーな印象
フルアジャスタブルのサスペンションを備えセッティングを自由に変更できる点もそうですが、アクセルのレスポンスも他のビッグネイキッドと比べるとシャープな印象を受けました。
アクセルの回し始めは非常にシャープですが加速し始めた後はエンジンの回転がゆっくりとあがっていきます。低中速から高速にかけて全域でフラットなパワー特性ですが、ちょっと多めにアクセルを開けると鋭い加速を体感することができます。
4気筒エンジンらしい高回転が売りのエンジンというよりは常用域でのスロットルレスポンスを重視した低中速重視のセッティングエンジンなので街中でも非常に扱いやすく感じました。レッドゾーンは9500rpmですのでこのクラスの4気筒エンジン搭載車両としては低い回転数なのですが、サーキットを走ることを別にすればこれ以上の高回転の伸びを期待する必要もないでしょう。
ハンドリングは素直ながらスーパースポーツやストリートファイター系の「バイクが勝手に曲がっていく感覚」はなく、しっかりと自分で曲げていく。という印象の強いバイクです。こう書くと手ごわいハンドリング属性なのかな?と思われてしまうかもしれませんが、そうではありません。乗り手の入力に対してしっかりと答えてくれるといえるでしょう。
ZRX1200DAEGのレバーは調整可能
クラッチには油圧クラッチを採用していますが、なかなか重い感触です。特に走り始めはレバーの位置を調整しておらず、私の小さい手だとクラッチがつながるタイミングが遠すぎて重さが助長されていましたが、レバー位置の調整をすることでかなり改善されました。1が最も遠い位置ですので、手が小さい方は3か4に調整することをおすすめします。調整は奥側にレバーを押しながらダイヤルを回すだけです。
ZRX1200DAEGのサスペンションは前述したようにフルアジャスタブルタイプですが、カワサキのフルアジャスタブルサスペンション搭載車両は基本的に町乗りには若干固いセッティングになっている印象があります。私のように町乗りで多用する乗り方をする場合は思い切って一番柔らかいセッティングに変更してもいいかもしれません。
リアサスペンションはサスペンション上側についているダイヤルを回すことでサスペンションの柔らかさのセッティングをすることができます。1が最も柔らかく4が最も硬いセッティングです。フロントサスペンションは下側の付け根にマイナスドライバーで回せば調整できるダイヤルがあります。まわすと「カチッカチッ」と段階を踏んで調整が出来ます。右に回すと柔らかくなり、左に回すと硬くなります。
私は前後とも一番柔らかいセッティングにしましたが乗車時の車高が若干下がり足つき性が改善されるとともに、街中の細かいギャップの振動をあまり拾わなくなり快適性が増しました。他にも伸び側のダンパー調整やプリロードの調整が出来ますが、全部ためすとセッティングにはまってしまうため、まずは前述したサスペンションが縮むときの硬さ調整を試してみると良いでしょう。
ブレーキは4ポッドキャリパーを採用していますが、実は先代モデルは6ポッドキャリパー。残念ながら先代モデルの試乗経験がないので、比べることはできないのですがZRX1200DAEGに搭載されている4ポッドキャリパーのブレーキはタッチが非常によく過不足は感じませんでした。
6ポッドキャリパーから4ポッドキャリパーに変更されたことによるネガティブな要素はないように感じます。
万能ネイキッドながらスポーティーな要素が強い一台
ネイキッドバイクはまずは万能性が求められます。通勤や通学にも使えることはもちろん、ロングツーリングやスポーツ走行もこなせなければなりません。
ZRX1200DAEGは一週間街中での走行で使用しましたが始めのうちは若干アクセルレスポンスが良いように感じたものの二、三日通勤で使っているうちに慣れていき特に違和感を感じなくなりましたし、ストレスを感じることはあまり無かったように思います。
特にレバーのセッティングやサスペンションのセッティングを変更してからは快適そのもの。セッティングの幅を持たせてくれていることで誰が乗っても快適に走ることが出来るようになっているといえます。
ユーザーが自分好みにセッティング出来る幅があることがどんなユーザーが乗っても乗りやすいビッグネイキッドバイクたるゆえんであるといえます。
ZRX1200DAEG関連リンク
ZRX1200DAEG動画ページZRX1200DAEGのエンジン音やマフラー音を確認出切るようにyoutubeにアップしました。エンジン音やマフラー音が気になる方は上記ページでご確認下さい。
CB1300SBの試乗インプレッション記事
国産1000ccオーバー4気筒ネイキッドのライバルといえば、ホンダCB1300SFです。上記ページではCB1300SFにハーフカウルを纏わせたCB1300SBの試乗インプレッションをお届けしています。
XJR1300の試乗インプレッション記事
空冷と水冷の違いはあれどこちらも1000ccオーバーの4気筒ネイキッドスポーツバイク、ヤマハ・XJR1300です。