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「女人高野」室生寺で出会える、心洗われる雪の情景

奈良県北東部、三重県境に近い宇陀(うだ)市にある室生寺。「女人高野」の呼び名と、日本最小の五重塔で知られるお寺です。室生寺は春のシャクナゲや、秋の紅葉が有名ですが、旅行コラムニストが心奪われたのは雪化粧した室生寺。その心洗われる優美な情景と室生寺の魅力を、写真と共にお伝えしたいと思います。

森川 天喜

執筆者:森川 天喜

国内旅行ガイド

冬の室生寺へ

春の桜や、秋の紅葉シーズンに比べると、冬に旅行を楽しむ人は少ないですが、雪の季節に奈良や京都のお寺を訪ねてみるのもいいものです。

冬というのは、次の「生」の季節への序曲。新しいものを生み出すために、静かにじっーと準備する時期。この何もない「静」は「清」であり、事物が本来持つ美しさを際立たせてくれるような気がします。

今回訪れるのは、奈良県北東部、三重県境に近い宇陀(うだ)市にある室生寺。「女人高野(にょにんこうや)」の呼び名と、日本最小の五重塔で知られるお寺です。

雪の室生寺金堂(国宝)

雪の室生寺金堂(国宝)


私は、仕事柄、日本全国あちこちを歩きますが、雪に覆われた室生寺以上に優美な景色には、なかなか出会うことがありません。

昭和を代表する写真家・土門拳は、雪の室生寺をレンズにおさめたくて、数十年にわたり何度も室生寺に足を運んだという話がありますが、私ははじめて訪問した2008年冬に、雪化粧した室生寺を目にする幸運に恵まれました。

今回は、そのときの写真を中心に、冬の室生寺の魅力をお伝えしたいと思います。

近鉄の「室生口大野」駅からバスで

室生寺は、かなり辺鄙(へんぴ)な場所にあります。最寄りの近鉄大阪線の「室生口大野」駅からはおよそ6.5km、バスは1時間に1本のみ。

大野寺の「磨崖仏(石仏)」

大野寺の「磨崖仏(石仏)」


駅を出て、しだれ桜と「磨崖仏(石仏)」で有名な大野寺を過ぎ、室生ダムから流れ出る宇陀川の流れを過ぎると、室生寺門前の集落にたどり着くまで、ほとんど人家のない山道が続きます。

「室生」という地名は、神の坐(い)ます山を意味する「ムロ」「ミムロ」に由来するそうですが、人里離れた室生山一帯は、今なお神の宿る場所にふさわしい幽邃(ゆうすい)の地の雰囲気があります。

雪に覆われた室生寺参道と仁王門

雪に覆われた室生寺参道と仁王門


終点でバスを降り、朱塗りの太鼓橋を渡ると見えてくるのが仁王門。枯れ木に雪の華の咲いた参道の美しさは、何とも例えようがありません。

女人高野

ところで、室生寺には「女人高野」という呼び名がありますが、これはどういう意味なのでしょう?

「高野」というのは、弘法大師(空海)が創建した真言宗の大本山、高野山金剛峯寺のことです。高野山は、明治時代の中頃まで、長い間、女人禁制(女性が立ち入れないこと)でした。

一方、室生寺は、仏の力で女人も救う真言道場として、古くから女性の参詣も許してきたことから、「女人高野」として親しまれるようになったのだそうです。そのような歴史もあり、今でも女性の参詣客がとても多いお寺です。

さて、境内を歩いて行きましょう。奈良のお寺というと、東大寺や興福寺などの巨大寺院の大きな伽藍(がらん)が思い浮かびますが、室生寺は、鬱蒼(うっそう)とした山の中に、小ぶりな堂塔がいくつも建ち並んでいます。

鎧坂。奥の院までの室生寺全体の石段は、およそ700段という

鎧坂。奥の院までの室生寺全体の石段は、およそ700段という


仁王門をくぐり、「鎧坂(よろいざか)」と呼ばれる石段を登ると、まず正面に見えるのが金堂(国宝)。そして、左手には弥勒堂(重文)、奥には本堂(灌頂堂 国宝)が見えます。

室生寺の第一の魅力は、なんといっても、これらの諸堂で我々を出迎えてくれる美しい仏像たち。室生寺は大きな兵火にあわなかったこともあり、1000年の時を経た貴重な仏達が、とても良い状態で残されています。

とくに、数の多い金堂の諸仏は、普段はお堂の外からのお参りになりますが、春と秋の特別拝観期間中は、お堂の中に入って、近くからお参りすることができます。

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■室生寺の仏像
女人高野室生寺 仏像一覧

そして、室生寺といえば、あの美しい日本最小の五重塔ですね。次は五重塔を拝観します。
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