建物外観。吉野杉がふんだんに使われています。

建物外観。吉野杉がふんだんに使われています。

 
白金台の駅から徒歩2、3分。プラチナ通りと呼ばれる大通りから、ちょっと外れた静かな脇道に、光と木の温もりが感じられる印象的な建物が建っていました。この空間は建築家の西森陸雄氏が総合プロデュース。吉野杉を外装にもふんだんに使っており、自然の中に溶け込むような、穏やかで優しい印象があります。2階建ての2階部分はフランス料理をベースにし、奈良の魅力的な「大和野菜」を使ったレストラン「CIEL ET SOL(シエル エ ソル)」。宇都宮の「オトワレストラン」の音羽和紀氏がプロデュースを務めています。こちらも大変気になりますが、今回ご紹介するのは1階部分です。

酒蔵??入り口には杉玉が下がっています。

あれれ?酒蔵?!入り口には杉玉が下がっています。


入り口には杉玉が!よく酒蔵にかかっているアレです。新しい杉玉がかかると、新酒ができたしるしとも言われます。店では地酒も販売していますが、奈良県とこの杉玉には深い関係があります。奈良にある日本最古の神社、大神神社のご神体は、神社の後ろにそびえる三輪山そのもの。そこにはたくさんの杉が生えており、万葉の昔より御神木とされていました。大神神社では、毎年秋になるとこの御神木で杉玉を作り、全国の酒蔵にここから杉玉が授けられるのです。杉は香りが良く、殺菌効果もあるので、古来から大切にされていたようです。

ナチュラルな雰囲気の店内。

癒される、ナチュラルな雰囲気の店内。


店内にも杉がふんだんに使われています。こちらは吉野杉。吉野杉のすごいところは、年輪が細かく緻密で、均一なところ。天然林ではなく人が手をかけて育てている杉林で、枝打ちをしっかりしているため、節も少ない。見ていて清々しくなるような気持いい杉なのです。店のカウンターや椅子などは吉野杉で作られているので、ぜひその木目の美しさをじっくり見てみて下さい。

花瓶を置いたハイスツールも吉野杉で作られています。

花瓶を置いたハイスツールも吉野杉で作られています。


1階のカフェ&ショップ「LIVRER(リヴレ)」は、奈良の人気ショップ「くるみの木」のオーナー、石村由起子さんが手掛けています。店名のリヴレとはフランス語で「つなぐ」「配る」などの意味。かつてシルクロードを渡り、西から東へ宝物が届けられたように、奈良の上質な「たからもの」を届け、お客様につなぐ場所でありたい、という想いが込められているそうです。

カフェにディスプレイされた果実酒。

カフェにディスプレイされた果実酒。


そして石村さんのセレクトした商品はやはり魅力的。奈良ならではの工芸品や奈良在住の個人作家の作品、くるみの木のオリジナル商品もあります。気になったものをいくつかご紹介したいと思います。

奈良の工芸品や暮らしの道具


手触りの良い、白雪ふきん。

手触りの良い、白雪ふきん。


【白雪ふきん】
奈良特産の蚊帳生地でふきんを制作している垣谷繊維の白雪ふきん。暮らしの道具にこだわりのある方ならもうご存知かもしれません。吸水性に優れ、使い込むほどに柔らかくなり、丈夫で長持ちすることも特徴の一つ。こちらはくるみの木のオリジナルで、鹿の絵が刺繍されています。ちなみに隣にちらりと見えるのは吉野本葛。黒川本家は昔ながらの手作業で葛を作っている希少な製造者です。

奈良で昔から作られている扇子。

奈良で昔から作られている扇子。


【池田含香堂の奈良絵扇子】
創業150年の扇子専門店の扇子。昔ながらの手法で扇子を作り続けています。奈良絵とは、奈良時代の絵巻にある絵図を原画として創作したもので、扇の表面に描かれています。そして裏面には竹、梅、鶴、亀の縁起物が描かれています。飾っておいても可愛らしい扇子です。

どんぐりのようなかわいらしい風貌の「ちゃんぶくろ」

どんぐりのようなかわいらしい風貌の「ちゃんぶくろ」


【山添村の茶袋(ちゃんぶくろ)】
奈良の人々に昔から親しまれてきた茶粥。奈良県山添村では、茶葉をこのような竹かごに入れて、お粥を炊いていたそうです。奈良の茶粥道具を作れる唯一の職人・浦嶋さんは、2014年に「森の名手・名人」に奈良県から唯一選ばれました。作り手はもうこの方一人しかいないそうです。茶袋は自分も初めて見た工芸品ですが、手のひらに乗る、ころんと丸いかたちが可愛いです。ポプリなどを入れて下げてもいいなと思いました。

つちや織物所のティッシュカバーとコースター。

つちや織物所のティッシュカバーとコースター。


【つちや織物所】
京都で織物の基礎を学び、以後独学で学んでいたという土屋美恵子さんの作品。2005年、つちや織物所として制作を始め、現在は奈良で制作。天然素材の糸を様々に組み合せて機を織り、現代の暮らしに生きる品々を提案しています。しっとりと柔らかな独特の手触りは、やはり手織りならではのものではと、実際の作品を見て実感しました。奇をてらわずシンプルな色使いで繊細な上品さがある。端正な織り目に惹かれます。

くるみの木オリジナル、貝ボタンと鹿ブローチ。

くるみの木オリジナル、貝ボタンと鹿ブローチ。


【貝ボタン、鹿ブローチ】
ドイツから神戸へと渡ってきたボタン技術は、明治38年頃奈良に伝わり、現在では日本一の生産地になっているそうです。こちらはくるみの木のオリジナル。昔ながらの方法で、自然の美しさが引き出される貝ボタンです。鹿ブローチは、奈良の自然の中を散歩している愛らしい鹿をモチーフにオリジナルで作ったものだそう。真鍮製で使い込むほどに味わいが増します。どちらもファッションのワンポイントになりそうですね。


奈良の食品も上質なものが揃う


天然醸造の醤油。

天然醸造の醤油。


【片上醤油】
昭和6年創業。奈良県御所市の静かな村で、奈良県産の大豆を使い、杉の木桶で自然のままに発酵した、天然醸造の醤油を作っています。無添加無調整の醤油です。今では天然醸造で醤油を作る蔵元はかなり少なく、手間暇をかけた稀少な醤油だと思います。

奈良と言えば、奈良漬け。

奈良と言えば、奈良漬け。


【奈良漬け】
奈良といえば、やはりなんといっても奈良漬けは外せないでしょう。左の2点は奈良公園の真ん前に店を構え、昔ながらの技法で奈良漬けを作る「森奈良漬」のもの。材料もシンプルで、野菜、塩、酒粕しか使っていない、無添加です。右はならまちにある酒蔵「春鹿」が作った燻製奈良漬け!!燻してから漬け込むという手をかけた逸品です。個人的にもこれは超おすすめ。


カフェスペースも気持良い空間


カフェの様子。こちらも椅子は吉野杉。

カフェの様子。こちらも椅子は吉野杉。


カフェはゆっくりと始動中で、取材時はまだ多くのメニューはなかったのですが、奈良で生産される大和茶やレモングラスティー、そしてくるみの木オリジナルのブレンドコーヒーなどが味わえます。一緒に食べる奈良のお菓子もあります。今後はメニューの品数もじわじわと増えていくそう。


奈良の町並みは個人的にもとても好きで、京都に比べると地味に感じるかもしれませんが、古い町家を活かしたカフェがあるかと思えば、本当に普通に暮らしている古い民家が隣に並んでいたりして、悠久の時がずっと変わらず細く長く繋がっているような印象を受けます。観光地のようなギラギラした感じが少なく、静かにひっそりと、とても趣味のいい店がぽっと佇んでいたりして、小さなたからものを見つけたような気分になります。控えめでおしとやかで目立たず、でもあららとびっくりするような美人が潜んでいる、というようなところ、奈良。この店を訪ねることで、そんな奈良の雰囲気にぜひ触れてみて下さい。


ときのもり
東京都港区白金台5-17-10
「CIEL ET SOL」
03-6721-7110
「LIVRER」
03-6277-2606
http://www.tokinomori-nara.jp


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