「あなたのためを思って」=「自分が気に入らない」?
自分はこう思う。だから、こうしてほしい。子どもが聞きたいのは、親の率直な気持ちなのかもしれません。
この言葉を使いたくなったときは、少し立ち止まって「自分の気持ち」と向き合ってみましょう。実は「お行儀よくしてくれないと、親である私が恥ずかしい」だったりするかもしれませんし、「子どもの躾ができていないと、自分が責められるのがこわい」かもしれません。
それならば、「あなたのためを思って」と恩着せがましく言うよりも、「ママのために、この場ではお行儀よくして」と言う方が、フェアではないでしょうか。
「あなたのためを思って」と言いたくなった時
「あなたのためを思って」と言われた側は「とりあえず、従っておいたほうがいいんだろうな」と思うものです。つまり、この言葉には、少なからず「強制力」があると思われます。つまり、相手との間になんらかの力関係が働いている可能性がありますから、まずは自分が持つ「力」に自覚的になった方が良いかもしれません。そして「これを言いたくなった私は何かが嫌なのかもしれない。それは何だろう?」と具体的に考えてみてはどうでしょう。
たとえば、「勉強しなさい。あなたのためを思って言っているのよ」と言いたくなった理由が「子どもが優秀だと、親として鼻が高いから」であれば、「あなたのためを思って」という言葉は、嘘になります。しかし、「子どもの将来が心配」という気持ちも同時にあるでしょうし、「後になって子どもが苦労する姿を見るのが嫌」だったりするかもしれません。
ならば、それを「私」を主語にした「アイ(I)メッセージ」で伝えてみましょう。
「分数の勉強はまじめにした方がいいと思うよ」「どうして?」「パパは小学生の頃、全然勉強しなくて後で苦労したからね」「どんなふうに苦労したの?」「授業の内容がわからなくて、中学に入ってから小学校の教科書からやり直したら、小学校3年生の分数が全然理解できてなかったんだよ。情けなくて悔しかったよ。だから同じ思いをしてほしくないんだ」……とか。
心から相手のことを心配している人は、「あなたのためを思って」などと、わざわざ言わないものです。また、助言を実行するかどうかを「選ぶ自由」も尊重したいものですね。助言に従わない時に「罪悪感」を持たせないというのも、大切なことではないでしょうか。
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