人口は13年後の2030年には1億1600万人くらいまで減る
2017年の日本経済はどうなる?
――2016年は、前半にイギリスのEU離脱、後半にはアメリカでドナルド・トランプ次期大統領の誕生と、世界中で大きな変化が見られた年でした。来年以降、私たちを取り巻く経済環境はどうなっていくのでしょうか?
藤川太さん(以下、藤川さん) まず、国内事情に目を向けてみると、私たちを取り巻く大きな流れとして、人口の減少・高齢化の加速という問題があります。現在の人口は1億2700万人。しかし、わずか13年後の2030年には1億1600万人くらいまで減ると予測されているんですね。そうなると、当然不動産もだぶつき、空家だらけになっていくことが想像されます。さらに、高齢者はこの間700万人近く増えるわけです。社会保障をもらう人達はどんどん増えるけれど、払う人達が減っていくなか、この国の財政のバランスも大きく崩れていく。急激な変化の流れのなかにいることを、まずは認識しておくべきです。
――2017年はドイツやフランスなどヨーロッパで選挙が続き、EUがどうなっていくのかなど、まだまだ目が離せない状況です。
藤川さん 2017年は、ドイツとフランスが選挙を控えていますね。2016年はイギリスのEU離脱、ドナルド・トランプ次期大統領の誕生という大きな出来事がありましたが、世界中で「反グローバル化」へと流れが変わってきているのを感じます。ヨーロッパでは以前から移民が問題視されていましたが、それが表に噴出。インターネット上の声が選挙を左右するようになり、大手メディアの誘導が効かなくなっています。現在の状況からみても、反グローバル化の流れに拍車がかかってくるのではないでしょうか。
ただ、その中で日本がなぜかグローバル化の旗手になりつつあります。反グローバルの流れのなかで、日本だけが変わっていないんですね。すでに移民を受け入れてきた欧米が限界を超えて否定的な動きをみせているのとは逆に、日本はこれから受け入れを始めようとしています。1周遅れなわけですが、逆に言うと、それが日本の存在感を際立たせることに繋がり、安定感のある国として、世界から注目されることになるかもしれません。
経済クラッシュに気を付けながら資産形成を行う
――日本の株式相場の状況はどうなっていくでしょうか?藤川さん これまでアベノミクスで株価が急激に上昇した時というのは、日銀の黒田総裁が、デフレ脱却や景気刺激のために、金融緩和策を打ち出した時。いわゆる「黒田バズーカ」でした。しかし、そうした政策にもいよいよ限界が出てきて事実上の金融緩和の引き締めに転じ、出口戦略に入ってきています。どうやって着地させていくのかを今、探っている状態ですね。つまり、これまでのようにドーピングが出来なくなって、実質的な経済状況が問われるわけです。アメリカは実際に金融緩和で経済状況が良くなったわけですが、日本は上がっていません。
例えば、鉱工業生産指数をみても、ずっと横ばい状態が続いていますし、GDPだって伸びていない。これから実態が問われるという状況なのに、株価を引き上げる施策が打てなくなってきており、経済もそんなに状態が良くない。そんななかで、もし今何か大きな経済クラッシュが起こった時に、どうなってしまうか。それを注意しながら投資をやっていかねばいけません。
――というと、経済クラッシュが起こる兆候でもあるのでしょうか…。例えばどんなリスク要因が?
藤川さん 予想出来ないからクラッシュなんです。リスク要因を挙げるとしたら、中国の状況やヨーロッパの内政不安、ドイツ銀行の破たんなどが懸念されていますが、これまでの経験からすると、考えもしないところから飛んで来るパターンが多いんですね。そして、もし今、経済クラッシュが起きて株価が大きく下落しても、下支えできるような政策手段を出し切った状態だから、そのままガタガタといく可能性も高い。
日本はこれまで無理をして株価を上げ、ゴムの伸び切った状態がずっと続いているようなものです。ですから今、世界で何か不安定な出来事が起こると、経済危機が連鎖して起こる可能性も否めない。投資をするには注意をしなければいけない時期だということです。
教えてくれたのは…
藤川太さん
取材・文/西尾英子