焦点は住宅取得に軽減税率が適用されるのか
焦点となるのは軽減税率が導入されるのか、そして何が対象になるかです。現状では外食以外の食品や新聞などが8%に据え置かれることに大筋で決まっているようですが、住宅についてはどのような判断が下させるのか、方向性が打ち出されていません。住宅の場合は金額が大きいのが一般的ですから、その分消費税は高額になります。ですから、特に若い世帯にとっては負担が非常に大きくなります。消費税率のアップでさらに「マイホームの夢」が一般消費者から遠のくことになりかねません。
また、一般的な商品とは異なり、非常に長く使われるもので、新築したりリフォームすることは社会インフラの質の向上にもつながります。個人の持ち物であることは否定できませんが、要するに社会の財産でもあるのです。こうしたことから、欧米先進国では住宅には、程度の差はありますが消費税が軽減される制度が用意されています。
ですので、私は住宅に軽減税率が適用されることは大きな意義があると考えています。皆さんの住宅取得に大きな影響を与えることですから、増税にあたっての支援策拡充も含めて、議論や決定のあり方を注視していただきたいと考えます。
さて、2015年の年末にパリで「気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」が開催されました。世界196カ国の国・地域がすべて温室効果ガス削減を約束するパリ協定が採択されたわけですが、その中で我が国も「2030年度に2013年比で温室効果ガスを26%削減する」ことを打ち出しました。
このことは、今後の住まいづくりにも大きな影響を与えます。具体的にはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が進むはずです。我が国ではZEHを2020年に新築住宅で標準とするとされ、一部で先行的に取り組まれています。
しかし、2016年はそれが本格化する1年となるはずです。つまりZEH仕様が当たり前になるわけで、逆にいえばこのZEH仕様を取り入れていない新築住宅は時代遅れとみなされるようになります。リフォームによる中古住宅のZEH化も含めて、その取り組みは今後、住宅事業者を見極める有力なポイントになるでしょう。
震災から5年に 安全・安心な住まいづくりを考えよう
ところで、2016年は未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から丸5年、そして国による集中復興期間が終了する節目の1年です。ですので、災害に強い住まいづくりについて改めて考える契機としていただきたいと私は思います。災害公営住宅など、被災された方々の受け皿となる住宅やインフラ整備などがずいぶん進みましたが、完全な復興には至らず、多くの方々が厳しい生活を余儀なくされ、丸5年の節目を超えても続く見通しです。
復興庁のホームページによると、2015年10月末時点での災害公営住宅の供給の進捗率は、岩手県と宮城県でまだ5割に達しておらず、福島県では津波・地震で避難者向けで74%程度、原発避難者向けでは約17%にとどまっています。まだ半数近くの方々が応急仮設住宅などでの避難生活をされているのです。
私は何度か仮設住宅の中を見せていただきましたが、決して良好な住環境であるとはいえません。そんな環境で5年もの年月を過ごすことはあってはならないことだと私は考えています。2016年は、そうしたことが改めてクローズアップされると考えられます。
2015年も栃木県や茨城県などで集中豪雨による大きな被害が発生しましたし、このことから大災害の危険性は私たちの身の回りに潜んでいることを表しています。消費増税がZEHの普及や災害に強い住宅の取得を阻害しないよう願いたいものです。
最後になりましたが、皆さんが良い年末年始を過ごされることをお祈りしております。