クーペのGTBを国内で。驚くべき絶対性能
帰国後すぐに、登場順序は逆になるけれども、GTBを試すことができた。その異次元の加速フィールは、まだ身体が覚えている。イタリアの見知らぬ道では、その加速性能に圧倒されっぱなしで、488というクルマそのものを落ち着いて味わうことができなかった。その点、日本なら、いつもの道でじっくり試すことができるというものだ。
クーペもやはり、乗り心地がよかった。スパイダーよりも、多少フラットかつハードなライドフィールだけれども、458との差はスパイダーより歴然としている。なにしろ、前アシから過剰なニンブルさが失せ、随分と扱いやすくなったから、なおさらだ。もちろん、扱いやすくなったとはいえ、ダルな印象などは皆無。相変わらず、動きそのものはシャープな部類で、ドライバーの感覚に忠実な動きになったと言った方がいい。
高速走行も、素晴らしい。488シリーズの進化ポイントにひとつ、エアロダイナミクス性能が向上したおかげで、安定感がハンパない。もっとも、スリルに欠けるのも事実だ。速度感に乏しい。それゆえ、知らぬ間にどんどん速度が上がってしまう。もっとも、これを面白みに欠ける、という人は、おそらく、NAフェラーリに乗り継いできた人だけだろう。
シフトアップはもちろんのこと、シフトダウンの変速スピードも速くなった。ターボによる分厚いトルクを絶対に途切れさせない。それゆえ、いつでもどのギアからでも、自在に力を引き出せる。
高速道路を降りて、ワインディングロードへ向かう。イタリアの国際試乗会では、“本当にこんなところでフェラーリを試すの? フィアット500Xの間違いでは?”と思ったほど、タイトで劣悪な路面環境のなかでスパイダーを試したが、どうして、悪環境にもめげず素晴らしい走りをみせてくれた。当然、ベルリネッタにも、いっそう期待して走り出す。
街中で、その自然に感心したステアリングフィールは、峠道でも威力を発揮した。フロントアクスルの動きと乗り手の両腕がリニアにリンクしており、ステアリングホイールの切り始めから旋回中、コーナーの脱出にむけて戻しはじめるまで、手応えよく、しかも常に安心感があった。コーナリング中に何が起こっても対処できるという“妙な自信”をもって、旋回できる。
ドライバーの意思に驚くほど正確に車体が反応して曲がってくれる。車体は常に新しい制御システム、SSC—2コンセプトによってコントロールされており、その制御にドライバーは何ら違和感を感じない。人と制御との一体感こそが、現代のハイパフォーマンス・スーパーカーにおける、新たな「人馬一体理論」、というものだろう。
もはや自然吸気の跳ね馬には、あらゆる意味で戻れない。NA独特のサウンドやフィールといった、分かりやすい“魅力”とトレードオフして余ある、驚くべき絶対性能を手に入れた。それが、488シリーズという“ターボ・フェラーリ”である。
488の究極仕様、“個人的には488GTOと呼んで欲しいが”、への期待が、これでいっそう高まった。
Photo(488スパイダー)/フェラーリ