局部切断に思うこと
妻の目前でズボンを脱がし、持参した園芸用バサミで局部を切り取ったという。
検察側の冒頭陳述によれば、20代の妻は昨年春から勤めた法律事務所の弁護士と、年末から親密な仲に。今年になってからますます懇ろ(ねんごろ)になったものの、7月ごろから仲は冷めていたようだ。そのことを、なぜか夫に「セクハラされた」と告げたという。夫に問い詰められたのかどうかは定かではない。夫が犯行に使用する枝きり鋏を買った際、妻にも見せていて、「殺さないよね?」と聞かれた夫は「お守り代わり」と語ったそうだ。
結果、殺しはしなかったが、夫は不倫相手の40代弁護士を殴り、相手がもうろうとしたところで局部を切り落とし、トイレに流した。妻はその一連のできごとを見ていた。
配偶者の浮気を知ったとき
昔から、女は夫の浮気を知ったとき相手の女を恨み、男は妻の浮気を知ったとき妻を恨むと言われてきた。どちらにせよ女が恨まれるのだ、と。だが、この一件では、男は妻ではなく、相手の夫を恨んでいる。どうやら最近は、配偶者が外で恋愛をしたとき、その相手に怒りをぶつけるのが、男女ともに主流になっているようだ。先の事件は、まだ公判中なので一般論として話したいのだが、人が配偶者の浮気相手に向かうとき、そこには自分の配偶者を信じたいと思う一方で、コンプレックスに近い何かが渦巻いているような気がしてならない。
ナオコさん(仮名=以下同・42歳)が、同い年の夫の浮気を知ったのは3年前。相手は近所に越してきた人妻だった。彼女はナオコさん夫婦より10歳年上。
「10歳年上の人に女として負けたと思うと、悔しくてたまらなかった。相手の家に乗り込みましたよ。彼女は香水の匂いをぷんぷんさせ、胸の開いたTシャツを着て出てきた。『私はそんなつもりなかったんだけど、お宅のご主人がしつこくてねえ』とニヤリ。こんな女の毒にやられたのかと思うと夫に対しても怒りは増したけど、それよりやはりその女が憎くてたまらなかった」
わかりやすい色気を振りまく中年女。ナオコさんはそう言ったが、確かにナオコさんとは正反対のタイプなのだろうと思わせるものがあった。
それなら年下ならいいのかというと、そんなことはない。夫の不倫相手が自分より若いと、多くの妻たちは激怒する。「あの女は、自分が若いことを武器に、うちの夫をたぶらかした」と思うものなのだ。女は、自分の年齢や容姿がコンプレックスになりやすい。
男が男に向かうとき
夫の怒りが、妻の不倫相手の男に向かうときはどんなケースか。
こんな例もある。30代後半のアキラさんは、同世代の妻が他の男性とつきあっていることを妻のスマホから知ってしまった。どうりで最近、セックスを拒むわけだと腹は立ったが、妻に直接、問いただすことができない。
「じゃあ、離婚しようと言われたらどうしたらいいか。かといって、知ってしまった以上、そのまま黙っていることもできない。結局、相手の男を特定して会いに行きました」
ただ、会ってみて、アキラさんは愕然とした。相手が、男の目から見ても「いい男」だったのだという。
「50代前半かな。中小企業のおっさんですよ、と自分では言うんだけど、どこからどう見てもやり手の感じ。しかも人間的に魅力があった。その男性が、『申し訳なかった』と土下座したんですよ。本当は、いつからつきあっているんだとか、人の妻を弄びやがってとか、相手を罵る言葉をたくさん用意していったんです。でも、実際には何も言えませんでした。男として負けたと思った。怒りもわかず、萎えた感覚だけがありました」
その後、アキラさんは、妻が彼と別れたかどうか確認していない。妻の態度は以前と変わらない。ただ、アキラさんとのセックスは今も拒んだままだ。男はコンプレックスを感じると、開き直って怒ったり脅したりするか、あるいは萎えるかのどちらかなのかもしれない。そのあたりは腕力があるかどうかも関わってくる可能性もあるのだろう。
不倫発覚……どうするのが正しいのか
怒りの理由は、愛情かプライドか、冷静に考えたい。
夫婦関係を修復できた人たちの多くが、
「相手に不倫をされたとき、自分がいかに相手をまだ好きなのかがわかった」
という名言を残している。
離婚するのも、やり直すのも選択肢のひとつ。長い人生、他の異性に目が向くことも、お互いに可能性としてはあり得る。それでも、自分の心の奥に、相手への恋愛感情が残っていれば、時間はかかっても、やり直すことはできるのかもしれない。