あるリノベーションマンションで残念だったこと
まず、建設・不動産業界の住まいに関するモノの見方が表れていると思われる事例を紹介します。先日、私はあるリノベーションマンションの販売現場を見学する機会がありました。結論を先にいうと、大変残念な気持ちになりました。そのリノベーションマンションは千葉県某市にあります。コンクリート造3階建て、以前はある企業の家族寮だった建物で、築年数は30年足らず。それぞれの住戸が広く、1棟まるごと今の暮らしに合わせてリノベーションをした(する)のが特徴です。
リノベーションというのはこのように建物や部屋をまるごと改修することをいうときに一般的に使われます。この建物では設備や内装を全て取り払いスケルトン状態にして、最新の間取りや設備、内装材を導入するということをしています。
内装のテイストが異なる6つのモデルルームを用意して、お客さんの好みに合わせて工事を行うという手の込みよう。販売会社の方は「新しいマンションとして販売する」と話していました。
確かに、間取りや内装そのものは一定以上のレベルにあると感心したのですが、「大変残念」と思ったのが、開口部の断熱性の強化が行われていなかったことでした。つまり、窓が建設当時そのままだったのです。
「それくらいいいじゃない。しょせん中古マンションなんだから」と思われるかもしれません。でも考えてもみてください。いくらリノベーションマンション、中古マンションといっても、それを購入したお客さんは、その後20年~30年住み続けるわけです。
窓の断熱性強化がリノベーションになぜ必要なのか
だったらリノベーションをするタイミングで、開口部の断熱性強化をするおくべきでだと思いました。開口部の断熱性を高める工事は主に単板ガラスのサッシを、断熱性の高い複層ガラスサッシに替えたり二重サッシにすることが挙げられますが、購入後だと高額な工事費用がかかるのが通常です。千葉県内にあるリノベーションマンションの内部。内装や設備が取り払われたスケルトン状態にされ、ここから間取りの変更や内装。設備の刷新が行われる。しかし、窓については建設当時のままにするという(クリックすると拡大します)
この事業者は戸建て住宅も販売しており、住宅の省エネ性を向上させることに熱心に取り組んでいますし、リフォームもやっていて開口部の断熱強化もメニューにあります。ですので、住宅の省エネ性や断熱性を高める必要は認識しているわけです。
なのにこのリノベーションマンションでは、その配慮が行われていなかったのです。おそらくそうすると販売価格に上乗せするしかなかったからでしょう。ですが、私にとってはお客さんに対して不親切だと思われ、さらに販売する事業者のお客さんに対する思いやりの足りなさを感じたのです。
ただ、この事業者の名誉のため申し上げておきますがでは建物について、コンクリートの強度を確認するため非破壊検査を実施しているとのこと。要するに耐震性については十分なレベルにあるとのことです。
こうしたことを確認しているというのは、他のリノベーション事業者には少ない誠実さといえるのではないでしょうか。ただ、この事業者に対して、私は非常に期待している部分があったので、残念に感じられたのです。
さて、ここまで読んで「この話と傾斜マンション問題に関連性があるのか」と思われるかもしれません。しかし、私は大いにあると思っています。それについて次のページで書いていきます。