第2の野球人生の「パイオニア」に
今季限りで現役を引退した楽天の斎藤隆投手(45)が、インターンシップ(就業体験)で米大リーグ、パドレスのフロントに入ることになった。「サンディエゴ・パドレスの方でコーチとしてではなく、フロントオフィス、球団の中で勉強させていただきます。(将来的には)日本の球界でというのは大前提ですが、時代にどういう変化が起きても必要とされる人間になるため、このタイミングしかないと思いました」
吉本興業の契約社員として、1年間の留学。野球人として見識を広げるため、前例のない形で第2の野球人生を踏み出す。ある意味「パイオニア」と言えるだろう。
斎藤は2006年に渡米し、ドジャース、レッドソックス、ブレーブス、ブルワーズ、ダイヤモンドバックスの5球団でプレー。7年間で338試合に登板、通算21勝15敗、40ホールド、84セーブ、防御率2.34をマークした。
その2006年のドジャース入りを後押しし、現在はパドレスのGМ付シニアアドバイザーを務めるローガン・ホワイト氏らとの縁で今回の“留学”が実現した。「彼から“将来的に日本の球団幹部になりたい。勉強して持ち帰りたい”と話を聞いた。我々にも彼にも素晴らしい試みだと思う」とホワイト氏は全面的な協力を約束した。
初仕事は球団史上初となる日本でのトライアウト
肩書はフロントのインターンだが、こなさなければならない“仕事”は多岐に渡る。ジョシュ・ステインGМ補佐は、「ドラフト、統計学、育成、トレード、スカウティング、MLB独自のルールや代理人との折衝など、いろいろな面でフロントの仕事を見せることができると思う。それを勉強させるつもりです」と説明する。斎藤の挑戦は称賛に値する。元選手が米大リーグに現場でのコーチ留学するのは何人かいたが、フロントで勉強するというのは初めてだ。もちろん、斎藤が現場での監督やコーチという指導者の道をあきらめたわけではないだろう。それも踏まえ、GМ的な知識があった方が、より広い視野で野球をとらえることができ、最良の指導者になることは間違いない。この決断は今後、同じような考えを持っている選手たちには朗報となるだろう。
初仕事は早くも訪れた。パドレスは11月22日に高知市内で球団史上初となる日本国内でのトライアウトを開催し、今季、日本プロ野球を戦力外となった5選手を含む合計12選手のテストを行った。彼らのパフォーマンスを見て、採点に加わったのが斎藤の初仕事。今後は野球人として成長するだけでなく、日米の懸け橋としても大きな役割を果たしそうだ。