ほどよいサイズでナカミも見た目も本格派「ディスカバリー・スポーツ」
“ランドローバー”という大家族のなかには、今、三つの個性的なファミリーが存在する。ひとつが洗練されたラグジュアリーを体現する“レンジローバー”一家。もうひとつがしばらく日本市場への導入がないが根強い人気を誇る“ディフェンダー”一家。そして、ランドローバーの類稀な性能をより多くの人に提供する“ディスカバリー”一家だ。
このうち、ディフェンダーは現行モデルの生産を2015年いっぱいで終えることになっている。ランドローバーの歴史に直結した無骨でワイルドなモデルがいなくなってしまうのは寂しいかぎりだけれども、それも時代の流れというものだろう(ファイナルモデルは大人気を博している)。次の展開に期待したいところ。
レンジローバーの人気は言うまでもない。イヴォーグからレンジローバースポーツ、そしてレンジローバーとラインアップも盤石。いずれも甲乙付け難い魅力の持ち主。ラグジュアリーSUVのトップブランドとしての地位は、ライバルがいかに増えようとも、しばらく揺らぎそうにない。
というわけなので、ランドローバー・グループが今、最も力を入れたいのがディスカバリーというわけだ。最新モデルのディスカバリー(愛称ディスコ)・スポーツは、その成功の鍵を握るモデルになると思われる。日本仕様はトリムレベル違いで3グレードが用意され、いずれも2L直噴ターボ+9ATを積んだ。
5+2=7人乗りのディスコ・スポーツには、ディスカバリーブランドのエントリーモデルという他に、これまでランドローバーブランドへのとば口だったコンパクトSUV“フリーランダー2”の後継モデルという役割もある。それゆえ、ほどよいサイズでナカミも見た目も本格派という、新たなモデルレンジを開拓するに至った。サイズ的には、フリーランダー2よりも全長とホイールベースが若干伸びた程度だ。
もっとも、価格帯はレンジローバー・イヴォークとほぼ同じ。フリーランダー2(3.2)の後継としてはやや高いような気もするが、これはナカミをイヴォークと共有しているからだろう。それに、実物を見てもらえればよく分かるのだが、フリーランダーとは比べ物にならないほど見映えが上質になっている。
普段乗りに最適な“優しい”乗り味
実際に乗ってみれば、これまでのフリーランダーやディスカバリーにはなかった魅力を発見する。それは、極めて乗用車的なライドフィールである。やや硬めでスポーティさを強調する姉妹モデルのイヴォークよりも、“優しい”乗り味で、普段使いに気持ちがいいのはダンゼンにディスコ・スポーツのほうだ。
動力性能的に過不足はない。限られたパワーを9段オートマチックが丁寧に拾い上げ、十二分な加速へと導く。いざというときの加速でも、ストレスはない。
オフロードを試していないので何とも言えないけれども、超のつく本格派ではないにせよ、“ランドローバー”ファミリーとして最低限の仕事はこなしてくれることだろう。それよりも、オンロードの動きに好感をもった。
とにかく、アシがいい。イヴォークと本当に同じか?と思ったほど。上屋を軽く仕上げたことも有効だったのだろう。昔ながらのディスコにありがちな、コーナリング最中の倒れ込むような横揺れなど全くなく、ただアシがきれいに沈み込むという適切なロール感で気持ちよくコーナーもクリアする。特に、リアアシの粘りがよかった。
頑張り過ぎていない、というか、肩の力が抜けている、というか、とにかく、イヴォークのように走りの輪郭がはっきりしていないところが、逆にいい。モダンではないけれども、落ち着いてドライブできる。少々、野暮ったいくらいがディスコにはお似合いだろう。インプレッシブな瞬間はほとんどなかったけれど、長い付き合いができるだろう。
サイズといい、性能といい、そして見映え質感といい、普段乗りに最適なSUVの一台であることは間違いなさそうだ。